ウクレレとSwing(スヰング)音盤

Ukulele Ike Happens Again (1968) / Cliff Edwards


このウクレレ・アイクことゴードン・エドワーズの1968年リリースのアナログ、実は1956年リリースの「Ukulele Ike Sings Again」のリイシュー盤である。オリジナル盤のタイトル/ジャケットでCD化されたこともあり、そちらのほうがお馴染みだろう。タイトルとジャケットが違うが内容はどちらも全く同じである。リリース元のBuena Vista Recordsはウォルト・ディズニー傘下のレコード会社で、56年のオリジナル盤はディズニーランドというレコードレーベルからのリリースだった。

ウクレレ・アイクは戦前のアメリカ芸能界で活躍したスターで、特に1920年頃はアメリカ本土で(ウクレレ・アイク氏も愛用していた)マーチン製のウクレレの生産量がギターを凌ぎピークだった時期でもあり、レコード吹込みやステージ活動に留まらず、映画界にも進出した。1952年公開のミュージカル映画で有名な「雨に唄えば」は、もともとウクレレ・アイクが1929年の映画「ハリウッド・レヴィユー」で披露したのがオリジナル。1940年のディズニー映画「ピノキオ」ではコオロギの"ジミニー・クリケット" として「星に願いを」を歌い、その年のアカデミー賞の歌曲賞を獲得した。同曲はいまなおディズニーを代表する名曲として知られている。本盤では「雨に唄えば」の再演が収録されている。

A1    Singin' In The Rain
A2  I'll See You In My Dreams
A3  I'm Sorry I Made You Cry
A4a  K-K-K-Katy
A4b  When You Wore A Tulip
A5a  Sleepy Time Gal
A5b  At Sundown
A5c  I Cried For You

B1  Ja Da
B2  June Night
B3  The Darktown Strutters' Ball
B4  Sunday
B5  Swingin' Down The Lane
B6a  Toot Toot Tootsie
B6b  No No Nora
B6c  Five Feet Two, Eyes Of Blue

伴奏 – The Wonderland Jazz Band
指揮 – George Bruns
Bass – Jess Bourgeois
Clarinet – George Probert
Drums – Nick Fatool
Piano – Marvin Ash
Trombone, Tuba – George Bruns
Trumpet – Don Kinch

ウクレレ演奏はストラミング(コード伴奏)中心だが非常に巧みで、弾き語りスタイルでジャズソングを唄う。興が乗ってくるとヴォーカルによる楽器によるジャズのアドリブ演奏を真似たスキャットが始まるのが定番だが、この分野でも先駆者とされている。しかし類まれな才能に恵まれながら芸術家にありがちな破滅的な生活スタイルを送り続けたため、晩年は身寄りのない老人として高齢者施設に収容され、1971年に亡くなった後でそのことを知ったディズニーが埋葬費を負担したという。

彼の遺した膨大な音源はどれも素晴らしく、様々な形でコンパイルされリリースされているが、本盤はディズニーのジャズバンドをバックに従えた戦後の録音による再演集のため、演奏も音質も良くて聞きやすく、最初の一枚にも最適である。尚、本作ではウクレレ・アイクはボーカル参加のみでウクレレは弾いていないものと思われがちだが、実は大きめの音量で注意深く聴くと所々でウクレレの音も聞き取ることができる。本来の巧みなウクレレ・ストラミングを堪能するには、戦前の古い音源に触れてみてほしい。



  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「US & Canada Ukulele」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事