空も大地もうごめき、ウゴメク。

この世に生まれたからには、精一杯生きてみよう

振り返り2

2006年12月21日 | 少年野球
    彼は、入部当初、辛い練習が始まると野球を止めて泣きながら帰ることもあった。また、心配してきた母の車に後部座席に乗ったまま車から出ようとしないこともあった。試合では緩慢なプレーに厳しく注意を受け、対戦相手に失礼極まりないないが、大声で泣くこともあった。それもシーズン後半に入って。一口に甘えん坊に育った彼だった。甲高い女の子ような声を発するから、顔を見なければ女子が練習に加わっている錯覚さえ感じた。

  精神面の弱さは今の子どもには特に見受けられる。もともと進んで入部した訳ではないらしいが、野球は好きなようだ。中学に上がっても父が顧問をしているリトルに入ろうか迷っていたというから、まんざらでもなさそう。3つ下の弟が性格は兄とは正反対。Cチームで今頑張っている。背は3年生でも小さな方であるが、とにかく野球大好き人間だ。内に秘めた闘志が弟にある。その内面の気持ちを兄に譲ってあげたらと何度も思ったが、それでも練習中、試合中とお構いなく人前で涙を流してきた彼の性格は誰もが知ることで、だからといって彼を非難するものは誰一人としていなかった。いわばそれが彼の性分、よく言えば彼のキャラでもあったから。泣き始めると、またか、とチームメートもそう彼のことをとやかくは言わない。言い過ぎると彼も落ち込んでしまうから。うまくテンションを持ち上げてコントロールし、練習に復帰する環境を整えてやること。一時的な感情を抑えきれずに涙を流すという単純な行為でもあったから、その時間さえ通り越せば後はケロッとしているのが彼の明るい性格なのだ。

  身長はチームで3番目にでかくて、体重はおそらくチーム一かもしれない。ゲームが何より好きな彼は、とにかくよく食べる。趣味はゲームと食べることだろう。野球はその次の次くらいかな。
  
  守備では右翼を守り、背後の打球の感覚が分からず長打にしてしまうケースや前進し過ぎてワンバウンドで頭を越える拙守も何度もあった。練習のノックではその反復練習を彼に仕掛け、「もういっちょ」とノッカーの打球は彼の左側(右中間側)にゴロを打つ練習を繰り返すと、諦めて追わない。その緩慢な動きに監督から何度も厳しい指導を受けてきた。そうすると息が切れてヒイヒイいい始め、“自信喪失兼練習逃避”が始まっていた。入りたての頃の話である。しばらく見ないと思ったら終わりの方で少しだけ見られたものの、クラブに入って精神面を鍛え直され、強くなったんじゃないかな。野球を通じて一回りも二回りも成長したやに思う。

   一方、打撃面では非凡な才能が彼にあった。バットを水平に振るレベルスイングで、体重が後ろ(右足側)に残る癖は最後まで直らなかったものの、ミートがチーム一うまかった。だから、センター前や三遊間をライナーで抜くヒットも多く、長打につながるケースも。しかし、残念なことに足が遅かった。普通の選手であれば3塁打は確実といった素晴らしい当たりも、ようやく1塁キャンバスを回って「エッサコラサ」と前になかなか進まない。それでやっと2塁にたどり着ける走塁。「お前は足がおしぃ(遅い)なぁ」とベンチからも再三言われてきた彼だった。

   そのユニークなキャラが見られないとは寂しい限りだ。










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