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沖縄方言における「ゐ」「ゑ」の使い方

今日9月18日は「しまくとぅばの日」ということで、しまくとぅば(沖縄方言、うちなーぐち)にまつわる気になる話題を紹介します。

日本語の標準語において歴史的仮名遣いで「ゐ」、「ゑ」が使われていた。「ゐ」、「ゑ」はそれぞれわ行のい段とえ段で、大昔は「ゐ」は[wi]、「ゑ」は[we]と発音されていた(それぞれ現代日本語の外来語における「ウィ」、「ウェ」と同じ発音)。しかし、平安時代からあ行の「い」、「え」と同じように発音するようになり、現代仮名遣いでは「い」、「え」と書かれるようになった。「ゐ」、「ゑ」がわ行ではなくや行のい段、え段に来るものだと思ったり、や行の半母音の[j]が先頭に来た[ji]、[je]と発音するものだと誤解されることもあり、特に「ゑ」に関してはヱビスビールのアルファベット表記が「YEBISU」であったり、通貨の円(歴史的仮名遣いでは「ゑん」)の英語表記が「yen」ということもあって[je]という音を表すものだと思われがち。

沖縄方言でも「ゐ」や「ゑ」が使われることがあるが、どの音に対して「ゐ」、「ゑ」が使われるかは、人によってまちまちである。


1.グロッタル(先頭に声門破裂音[ʔ]が来る)の「い」[ʔi]に対して、グロッタルでない(声門破裂音を伴わない)ほうの[i]~[ji]を表す。グロッタルでないほうの[i]はしばしば先頭に半母音の[j]が立つ。
例:ゐだ「枝」
※他に「ゆぃ」、「い」に濁点を付ける、という表記もある。グロッタルの「い」と区別せず「い」と書かれることもある。
2.[wi](わ行のい段)を表す。
例:ゐきが「男」 ゐなぐ「女」
※さらにグロッタルの[ʔwi]もあり、これを「うぃ」と表記することが多い。他に「うゐ」、「ぅゐ」という表記もある。グロッタルでないのと区別せず「ゐ」と書かれることもある。
例:うぃーりきさん[ʔwi:ɾikisaN]「おもしろい」

1.の使い方は便宜上行われているが抵抗がある。「枝」は歴史的仮名遣いでも「えだ」であって「ゑだ」ではないから。2.の使い方が適切だと思う。

グロッタルとグロッタルでない音に関して言えば、沖縄方言は語頭の母音(一部)と半母音においてグロッタルと非グロッタルの音を区別し、意味を弁別する。日本語の標準語では語頭の母音はおおむねグロッタルで発音する。
沖縄方言ではグロッタルでない音とグロッタルの音とを区別する。下記は沖縄方言における半母音のグロッタルでないのとグロッタルの対立の例で、標準語で半母音(や行とわ行)は常にグロッタルでない音で発音するため、グロッタルでないほうは自然に感じる音で、グロッタルの半母音は違和感を感じる音である。
例:やー[ja:]「家」 いゃー(「ぃやー」「っやー」と書くこともある)[ʔja:]「おまえ」 わー[wa:]「私」 うゎー(「ぅわー」「っわー」「うぁー」と書くこともある)[ʔwa:]「豚」
地域によっては区別せず、また若者が使うウチナーヤマトグチでは両方とも常にグロッタルでないほうで発音する傾向が強い。


1.あ行の「え」([e]または[ʔe])に対して[je]を表す。地域にもよるが、沖縄方言では「え」は[je]で発音することが多い(年配の方は標準語の「え」も[je]で発音することがよくある)。
例:ゑーま「八重山」 ゑーじ「八重瀬」
※グロッタルと非グロッタルの対立があり、半母音を含むモーラはグロッタルは1文字、グロッタルでないほうを2文字が好まれ、グロッタルでない[je]を「ゑ」、グロッタルの[ʔje]を「いぇ」とすることも多い。
2.[we](わ行のえ段)を表す。
語頭の例:うぇーきんちゅ/ゑーきんちゅ「大金持ち、長者」 うぇんちゅ/ゑんちゅ「鼠」 うぇーかた/ゑーかた「親方」
※これもグロッタルと非グロッタルの対立があるとされ、区別するならグロッタルの[ʔwe]を2文字で「うぇ」、グロッタルでないほう[we]を1文字で「ゑ」で表記することもあるが、これに関しては語頭ではグロッタルの[ʔwe]で発音される単語がほとんどで、グロッタルでない[we]が語頭に来る単語は少ない。上記の例は全てグロッタルで発音するもので(しかし、グロッタル音を持たない地域ではグロッタルでない[we]で発音するだろう)、「うぇ」で表記することが多い(一応「ゑ」で表記されることもあるので、併記した)。
語頭以外の例:しぇーゑー「幸い」
※語頭以外では常にグロッタルでないほうで発音される。

「ゑ」に関しては1.の使い方でも「ゐ」ほどは違和感を感じないが、一応「いぇーま」、「いぇーじ」と「いぇ」で書いたほうがしっくりくる。

琉球大学で考案された表記では、グロッタルでない「い」([i]~[ji])を「ゐ」とし、[wi](グロッタルでない)は「ゑぃ」と表記する。しかし、[ʔwi](グロッタル)を「うゐ」、[kwi]を「くゐ」、[gwi]を「ぐゐ」と表記するとしており、(一番目に述べた「ゐ」が[(j)i]の音を表しているのに対し、後の3者は[wi]系の音に「ゐ」を当てているため)一貫していない。

「ゐ」、「ゑ」は現代人にとってなじみが薄いので、例えばグロッタルでないほうの[wi]も「うぃ」で書くこともある(「うぃなぐ」、「うぃきが」)。また、半母音の[w]や[j]を落として「いきが」、「いなぐ」、「いーりきさん」、「えーきんちゅ」、「えんちゅ」、「えーま」、「えーじ」と表記、発音されることも少なくない。特に、「男、女」は(ラジオで)「いきが」「いなぐ」と言っていることが多いので、地域によっては昔からそれが普通だったかもしれない。

参考サイト:ウィキペディア『沖縄方言の表記体系』

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