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Twelve Liberty

ブログへようこそ。大切な連絡、日常、愚痴、観劇感想等混在してます。

オリジナルBL小説 『波の音』 プロローグ

2005-11-11 11:04:25 | novel(BL)
 波の音

 芦ヶ原 翔(あしがはら しょう)
 若林 哲郎(わかばやし てつろう)
    桜子(さくらこ・哲郎の姉)
 各務 勇雄(いさお・桜子の婚約者)

 事の発端は、哲郎の姉(桜子)だった。
「哲郎と二人で、別荘にですか?」
 高校最後の夏休み、俺『芦ヶ原 翔』は幼なじみで優等生の『若林 哲郎』の家に宿題を片付ける為に来ていた。
 いい加減、宿題をこなすだけの毎日に飽きていたのだが…。
「…いきなりですね」
 二週間後に式を挙げる前に、身内で集まりパーティをするので来て欲しいという誘いだった。
「来てくれるわよね?」
 彼女はお嬢様っぷりを思う存分発揮した。

 八月×日 某所 
 半ば強引ともいえる桜子の誘いに乗り、四時間かけてようやく目的地である別荘に着いた。
「(相変わらず、無駄にでかいよなぁ…)」
 桜子とその婚約者の為に建てられたそれは、他より遥かにでかかった。一般的な家庭で育った翔にとって、若林家だけでもかなりの大きさだというのに、それと変わらぬ大きさの別荘。自分の家の何倍の大きさなのだろうか。
そして、その別荘には当然のように使用人まで無駄にいた。
「好きなお部屋を、お使いください」

「落ち着かない」
 別荘に来て、一日目。今日は身の回りの荷物の整理だけをすることにした。若林家の使用人がしてくれると言ったのだが、無論断った。自分でするものだと思うし…。
 二人っきりと、勘違いなりに期待していただけに、使用人がいる現状にうんざりした。
 哲郎は一時間ほど前に執事に呼ばれ、ここにはいない。
「宿題でもやっちまうか」
 不謹慎ながら、そこら辺はしっかりやるタイプの翔だった。夕食まで少し時間がある…

「…芦ヶ原」
 ノックの音で目を覚ました。宿題の途中で眠ってしまったらしい。
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オリジナルBL小説 『紅の月』 プロローグ

2005-11-11 10:52:33 | novel(BL)
 趣のある、しかし何処か濃い色を持った館。
今年で創業九十年の老舗旅館『雅』は、表向きはただの旅館なのだが、裏では女たちを売り物にしている『陰楼』という名の女郎屋(遊女屋)であった。

「唯、これ椿の間に持っていってくれ」
「はい、わかりました」
 『唯』こと沢木唯は、六年前に父を交通事故で亡くし、母は事故のショックから記憶障害になり、それ以来祖母の家に預けられることになった。
名家の生まれの母は家出同然で父と駆け落ちをし、勘当されていた為、祖母とは祖父の葬式のとき初めて会った。過去の出来事に関係なく、祖母は育ち盛りの双子と生まれて間もない赤ん坊の面倒をよくみた。その祖母も重い病に倒れ、今後いろいろと金が掛かるからと、元々唯達の存在をよく思っていなかった伯母によって家から追い出された。その為、十三歳も年の離れた弟を養っていかなくてはいけなくなり、双子の兄颯と一緒に『雅』で働くことになった。
 颯は昔から料理人になる事を夢見て、念願叶った
今、見習いとして調理場にいる。
 唯は高校卒業後、就職するつもりでいたのだが、
特別特待生として認められ、大学に通うことになり、
学業と配膳の仕事との両立をすることになった。
…そんなある日のことだった。
「唯ちゃん、ちょっといいかしら…」
 配膳の仕事を終わらせてきたばかりの唯に、実年齢よりも若い美貌を持ち合わせた八代目女将『紅香』が声を掛ける。紅香は、『雅』創業以来過去最年少の十六歳で女将になっただけあり、身のこなしの一つ一つから接待その他含め、新人の目から見ても完璧だった。そんな彼女に声をかけられるときは、決まって…
「はい、何でしょうか、女将」
「実は頼みたいことがあるんだけど…」
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とうとう・・・載っけちゃいました!!

2005-11-07 16:54:49 | novel(BL)
『吸血鬼と姫』プロローグ。
最近よくどんなオリジナル小説を書いているのかと質問され、簡単にですが紹介しました。
ちなみに今回は『BL』苦手な方、一応15歳未満の方はご遠慮いただけるとありがたいです。今後の展開上などもなので。
それと、私自身が15歳未満の方に呼んでいただきたくない人なので、ご理解いただけると嬉しいです。
ご理解いただけない人はどうぞ、退出してください。

続きはサイト上orBookという形になるかと思います。皆さんの反応によりけり。
プロローグ段階ではあるのですが、感想など頂けると嬉しいです。
中傷などは嬉しくないのでご遠慮願います。
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オリジナルBL小説 『吸血鬼と姫』 プロローグ

2005-11-07 16:44:43 | novel(BL)
■オリジナルBL小説
※話の展開上BL、そういった要素が含まれますので、苦手な方、15歳未満の方は特にご注意ください。
■吸血鬼と姫 プロローグ■
 目を覚ましたとき、自分を無言で見下ろす、美しい少年と視線が合う。
 その少年は私に微笑みかけた。
「旦那様にお知らせしなくては!」
 たった今階段を下りてきたメイド服の少女がそう言い残し走り去っていく。
 突然の出来事のせいでか、めまいを覚えながらも起き上がる。
 しばらく額を押さえうつむいていたとき、ふと視界に自分の姿が映る。
 なぜか全裸だった。
 混乱がさらに深まる。
 薄暗く、やや埃っぽい室内。
 そして自分が横になっていたそこはベッドではなく・・・棺。
 なぜ自分はこんなところに横になっていたのか?
 隣にある大きな棺が動いた。
「・・・ついて来い」
 少年に手を引かれその場からまるで逃げ出すように走る。
 しかし、部屋を出る階段を上りきった所で自分の身体が鉛のように重くなっていく。
 これ以上は走れない。
 自分の足にすら力が入れられなくなり、その場に崩れる。
「・・・少し、早かったようだな」
 その言葉を聞き終わる前に意識を手放した。



 見慣れない天井。
 気だるさが残った身体をなんとか起こすことで、そこがどこかの部屋だと理解した。
 入り口のドアのところに先ほどの少年が腕を組みながら、こちらを見て立っている。
「・・・私が誰かわかるか?」
 突然向けられた質問を疑問に思いつつも、自分のなかで彼のことを思い出してみる。
 が、無駄な努力に終わる。
 少年は溜息をつく。
「・・・では、自分の名は?」
 しばらく考え、首を振り否と答える。
「お前の・・・名は、ローウェン・ランダート・・・」
 そう告げた彼の双眸に切なさの色が宿る。
「・・・ローウェン・ランダート・・・」
 その名に、覚えがなかった。
 何故か・・・思い起こすということも出来なかった。
 なぜか。




 本当に愛した相手だったからこそ不安というものがあった。
 私ともあろうものが、躊躇った。
 私と彼の生きる世界は違う。 
 彼が本当に苦しんで考え抜いて仲間に、同族に加わると決意してくれた。
 彼の決意で躊躇いはぬぐいきることが出来た。
 それなのに・・・

 あの人と、彼の母親と約束した。
『必ず彼を幸せにしてみせると』
 それなのに・・・

 すべての者に受け入れてもらえるなど甘い考えだった。
 儀式の途中で彼に毒を盛った者がいた。
 私の元婚約者だった女性だ。
 彼から呼吸も体温すら消えていった。
 絶望を味わうとはこういうことなのだと、
 そのとき強く思った。
 そして、己自身を恨んだ。
 守りきれなかったふがいない自分を。
 神というものがいるのならば、どうか私から彼を奪わないでくれと祈っただろう。
 神など信仰していない私でも。
 完全に消えてしまう命のともし火にかすかの希望という光が宿った。
 彼女が彼に服用した薬は私たちには効かない。
 私は残された唯一の手段だと思い、行われるはずだった儀式を続けた。
 そして彼が目覚めるときを待った。
 体温も呼吸も戻った。
 しかし、彼が目覚めることはなくそのまま十年という月日が経った。
 そして、一切の記憶を無くし人間として彼は覚醒し、今、目の前に居る。
 儀式は不完全に終わったのだ。

「エ・・・クス。エクス」
 私を呼んでいる彼の声が、遠くなっていく。
コメント (1)
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