「警察でSAKA丸出し!」の巻
不肖・TT早川のブログに○○玉を縮み上がらせたSAKAは、思い余って警察に駆け込んだ。手には早川ブログの「アウトプット印刷」(注1)が、束になって握られていた。
(注1)「アウトプット印刷」…SAKA使用のプリンターでのみ行なえる特殊印刷方式らしい。詳細は不明。
「あ、あのう、すんません、きょきょ脅迫を受けました…」
インターネット上でみせる弾けんばかりのキャラとは大違い。気弱そうで小汚い50男が、受付の婦警の前に立っていた。
「ああ、ハローワークは向かいのビルです。間違いやすいんですよねえ」
いかにも「派遣切りにあいました」という風体が、手に握られた「アウトプット印刷」を履歴書と勘違いさせたのか、受付婦警は冷たくそう告げると事務に戻った。
「違うんだよ! 脅迫されたんだ!」
いきなりブチキレるSAKA。そう、彼は切れやすいのである。周りの状況など考えなく、すぐキレる。衆人環視のインターネット上で所属教団のイメージダウンとなるにもかかわらず人をののしる行為は、キレやすい彼の体質を如実に示している。警察でキレちゃうのも、そういう彼の体質ゆえであった。
「どうしたぁっ!」
騒ぎを聞きつけ、こわ面の刑事が飛んできた。
「なっじゃ、われ?」
長年暴力団対策に携わってきたこの刑事は、ものすごい形相でSAKAの目を凝視した。SAKAは塩をかけられたナメクジのように、プシューっと音を立てて萎んでしまった。
「きょきょきょ、きょうぁくをうけまひた…」
「聞こえねえーよ、はっきり言え」
「きょ、脅迫を受けたんです」
「脅迫を受けた? どこで?」
「あ、え、うー、インターネットで…」
「そうか、ネットでね。じゃ、こっちへ来て」
部屋の隅の受付スペースに通された。そこにはインターネットでつながれたパソコンが設置されていた。
「ええと、じゃあ、どこのサイトで脅迫されたんだ? URLを言って」
「こ、ここですぅ!」
SAKAは手垢と汗にまみれて臭くなった「アウトプット印刷」を刑事に差し出した。その汚さ臭さに辟易し、露骨に嫌な顔をした刑事は、紙に触れる面積を最小限にしようと、ページの隅を指でつまみながら読み進んだ。はじめは面倒くさそうに読んでいた刑事であったが、次第に目つきが真剣になってきた。その様子をみたSAKAは、「これで早川を起訴できる」と期待に胸を膨らませた。
最後のページになるころには、真剣な目つきに加えて刑事の顔が赤く変色してきた。よく見ると、体も小刻みに震えている。ページをめくる方ではない左手は、拳が握られていた。
SAKAは心の中で、こう叫んだ。
「そうだ。最後のページは娘に対する脅迫の部分だ。この刑事さんにもきっと娘さんがいるのだ。だから、この刑事さんもほんとうに憤ってくれたんだ。起訴間違いなしだ!」
読み終えた刑事は、左手で口をおさえ、目にうっすらと涙を浮かべながら言った。
「ちょっとごめん、トイレへ行ってくる…」
「ああ、あまりにもボクが気の毒で、泣き出したくなったんだ。そうだよ、娘を持つ親としたら、当然の反応だ。早川は起訴間違いなし!」
SAKAの期待は最高潮に達した。この期待を確信に変えるために、刑事が大泣きする声をどうしても聞きたくなった。そこで、そっと後に続いてトイレに入った。
個室から声が聞こえる。泣き声か? いや、何か違う。個室の前まで近づいた。
「くっ、くっ、くっ……。くふぁぁ~、どひゃひゃひゃひゃぁ~。なんだよあれ、マジでまじーよ。がははくぷっ…、笑えるぅぅぅ~っ」
なんと、泣いているのではなく笑っていたのだ。SAKAは呆然としてトイレを後にした。ふらふらと歩きながら警察署を出ようとしたときに、後ろから肩をつかまれた。先ほどの刑事である。
「おい、どこへ行く…くぷぅ。まだ調査が終わってないだろう…くぷっ」
必死に笑いをこらえるも、目がどうしても垂れ下がってしまう刑事。
「もういいんです…」と力なく答えるSAKA。その返事を聞いた刑事が怒った。
「なんだと貴様! 府民の税金で動いているこの警察官を『脅迫を受けた』と言って拘束したのだぞ! 最後まできっちりオトシマエをつけなきゃ、府民に申しわけないのだ! おまえだけの警察ではないのだ! 警察をなめるなよ!」
「はははい…、すんまそ」
塩をかけられたナメクジのように、プシューっと音を立てて萎んでしまったSAKAは、再び受付スペースに連れて行かれた。
「さてと、早川ブログは読んだから、今度はキミのブログの番だ。URLを言って」
「えっ! ボクののブログも読むのですか?」
「『の』が1個多いぞ。誤植に気をつけろ…くぷっ。当たり前だろう、脅迫されたと言う側が提示した証拠だけを調べたって意味がない。この早川ブログが、これだけ楽しく…お失礼…これだけ感情移入してキミを糾弾しているには、それ相応の理由があるだろう。それを調べてみなければなるまい、くぷぅ」
後ろめたさがあるSAKAは、二の句がつげなくなった。
「どうした? URLは?」と刑事。
SAKAは驚くべき言葉を口にした。
「黙秘します」
呆れ顔で刑事が説教する。
「キミねえ、なんで黙秘するわけ? そもそもキミが捜査を願い出てきたんだよ。黙秘する理由がないでしょ、ぐぷぅ…。まったく、生半可に法律を知ってる法律オタクは、TPOをわきまえない輩が多くて困るよ。まあいいよ、この早川ブログでリンクが貼られているから、そこから飛ぶよ」
刑事はそういうと、設置されたパソコンを器用に操作し、SAKAのブログを開いた。
「とーいつきょーかいをののしるひとたち。ボクはサカ、きょーかいインのミナさま、ごくろうさまです。ここはこじんのサイトでありますから、ないよーにかんしてサカにぜんせきにんがあります! …うーん、『内容に関しては』って、『は』を入れたほうがいいぞ」
刑事は声を張り上げてSAKAのブログを朗読しはじめた。「なになにぃ~」と、署内の刑事・婦警が集まってきた。
「販売会社と警察…。田中氏が警察の権力で威迫され、認めてしまったら、この日本が大変なことになります。警察の策略がおおっぴらにまかり通る世の中になります。いいがかりで教会が潰されるということです。今、教会員が立ち上がり、声を上げていくことが求められています」
「あらやだ、警察批判ブログやってるの、この人?」
若く美しい婦警たちに軽蔑の眼で見つめられ、塩をかけられたナメクジのようにプシューっと音を立てて萎んでしまったSAKAは、
「や、やめてください…」
と小声で抵抗した。
「なんでだよー? ブログってものは、全世界に公開されたものなんだぞ。読まれて恥ずかしかったら、文房具屋で日記帳を買ってきてこっそり書けばいい。全世界に公開されたものを、ここで大声で読んで何が悪い? そう考えれば 早川氏がキミのブログを全部印刷して娘さんに渡すと言っていることは、決して脅迫ではないと分かるだろう?…くくぷっ。娘さんにURLを教えてあげることと等しいのだからな…くくくぷうっ!」
この刑事が言うことは正しい。早く自分のブログを削除してしまおうとSAKAは思った。娘にだけは見られたくない。良いお父さんと慕っている娘が、自分の汚い言葉の数々を目の当たりにしたらどう思うだろう。
きっと「統一教会を信じていると、こんな人格になってしまう」と幻滅するだろう。きっと「統一教会の男性とは結婚しない」と思うだろう。統一教義では、信者の二世が教会の集団結婚に参加できなければ悪魔にも劣り、地獄に堕ちるとされる。それだけは避けたい。
「早川が娘にボクのブログを教えてしまう前に、ブログを削除しなれば!」
おしっこをちびりながら、SAKAは全速力で警察署を飛び出すのであった。
SAKAが出て行った後の警察署内には、SAKAのブログを囲んで笑いの花が咲いていた。
「こ、こいつさあ、ほんとに馬鹿丸出しだよな!」
「ちょっとぁ~、警部は古いなあ~、それを言うなら『SAKA丸出し』よ」
「わははぁ、SAKA丸出し!」
「SAKA丸出し!」
「SAKA丸出し! わははぁ」
そこへ、憮然とした表情の署長が入ってきた。
「なんだ、ずいぶんと賑やかじゃないか。ちゃんと公務をしないと左遷するぞ」
「あっ、署長! ご苦労さまです! 実はSAKA丸出し…じゃなかった、馬鹿丸出しの統一教会信者が来まして、脅迫されていると…」
署長の顔が、突然ほころんだ。
「おおっ! SAKA丸出しが来たのか? なんだよなんだよぉ~、わが署に来たのなら教えてくれよぉ~。一度リアルで見てみたかったなあ~、SAKA丸出し」
「署長はSAKA丸出しをご存じだったのですか?」
「おお、もちろんだよ。国家公安委員会に何度もメールを送りつけてくるから、警察上層部では有名だよ……。で、どんな顔だった? どんな服装だった? きっと貧相でボロを着ていたんだろうなあ~。いいなあ、本官も見たかったなあ~。やい警部、写真一枚残していないなんて、おまえ左遷するぞ」
慌てふためく警部。そこへ受付婦警が助け船を出す。
「署長。わたし、こっそり携帯で写真撮りました」
「おお、大手柄だ! どれどれ……。く、くっぷ。ほんとにSAKA丸出しだあ! ああええと、この写真、写メで本官の携帯に送ってくれないかなあ。管理監に送ったら喜ぶぞお。本官も本庁に栄転間違いなしだ。キミも受付から好きなところに人事してやるぞ」
「ありがとうごいざいます!」
「すごいじゃん」と仲間の婦警から祝福される受付婦警。SAKAは完全なる悪人ではない。人を幸せにすることもあるのだ。
「しかしさあ…」と、SAKAに応対した刑事がつぶやいた。
「ネットでこれだけ信者がSAKA丸出ししているのに、統一教会は何やってるんだろうね。これじゃあ、入信した子供を心配する親が拉致監禁するのも仕方ないよな」
「これこれ、めったなことを言うでないぞ」と署長がたしなめる。
「あ、すみません。しかし、親は心配するでしょう。自分の子供がこんなにSAKA丸出しな信者がいる教会に入信していたら…。本官の子供だったら、やはり力づくでも脱会させますな、正直なところ」
「まあ、それが親心だ。だから、よほどの事件でない限り、統一信者の親子問題にはタッチしないのが上の方針さ。それよりも、統一教団がらみの悪徳商法をばんばん取り締まって、教団をなくしてしまったほうが、拉致監禁問題を解決するには近道だろう」
「そうですね。今後も統一教会信者の動向に注視し、不法行為を発見したら直ちに検挙しましょう!」
大阪の警察署は、統一教会と関連団体の監視に、一層の決意を固めた。もし今後、大阪で統一教会系の団体やその構成員が検挙されたら、それはきっとSAKAによって闘志を燃やされた大阪府警察官たちの活躍に違いない。警察官たちの熱い闘いは、まだまだ続く。
(つづく)
不肖・TT早川のブログに○○玉を縮み上がらせたSAKAは、思い余って警察に駆け込んだ。手には早川ブログの「アウトプット印刷」(注1)が、束になって握られていた。
(注1)「アウトプット印刷」…SAKA使用のプリンターでのみ行なえる特殊印刷方式らしい。詳細は不明。
「あ、あのう、すんません、きょきょ脅迫を受けました…」
インターネット上でみせる弾けんばかりのキャラとは大違い。気弱そうで小汚い50男が、受付の婦警の前に立っていた。
「ああ、ハローワークは向かいのビルです。間違いやすいんですよねえ」
いかにも「派遣切りにあいました」という風体が、手に握られた「アウトプット印刷」を履歴書と勘違いさせたのか、受付婦警は冷たくそう告げると事務に戻った。
「違うんだよ! 脅迫されたんだ!」
いきなりブチキレるSAKA。そう、彼は切れやすいのである。周りの状況など考えなく、すぐキレる。衆人環視のインターネット上で所属教団のイメージダウンとなるにもかかわらず人をののしる行為は、キレやすい彼の体質を如実に示している。警察でキレちゃうのも、そういう彼の体質ゆえであった。
「どうしたぁっ!」
騒ぎを聞きつけ、こわ面の刑事が飛んできた。
「なっじゃ、われ?」
長年暴力団対策に携わってきたこの刑事は、ものすごい形相でSAKAの目を凝視した。SAKAは塩をかけられたナメクジのように、プシューっと音を立てて萎んでしまった。
「きょきょきょ、きょうぁくをうけまひた…」
「聞こえねえーよ、はっきり言え」
「きょ、脅迫を受けたんです」
「脅迫を受けた? どこで?」
「あ、え、うー、インターネットで…」
「そうか、ネットでね。じゃ、こっちへ来て」
部屋の隅の受付スペースに通された。そこにはインターネットでつながれたパソコンが設置されていた。
「ええと、じゃあ、どこのサイトで脅迫されたんだ? URLを言って」
「こ、ここですぅ!」
SAKAは手垢と汗にまみれて臭くなった「アウトプット印刷」を刑事に差し出した。その汚さ臭さに辟易し、露骨に嫌な顔をした刑事は、紙に触れる面積を最小限にしようと、ページの隅を指でつまみながら読み進んだ。はじめは面倒くさそうに読んでいた刑事であったが、次第に目つきが真剣になってきた。その様子をみたSAKAは、「これで早川を起訴できる」と期待に胸を膨らませた。
最後のページになるころには、真剣な目つきに加えて刑事の顔が赤く変色してきた。よく見ると、体も小刻みに震えている。ページをめくる方ではない左手は、拳が握られていた。
SAKAは心の中で、こう叫んだ。
「そうだ。最後のページは娘に対する脅迫の部分だ。この刑事さんにもきっと娘さんがいるのだ。だから、この刑事さんもほんとうに憤ってくれたんだ。起訴間違いなしだ!」
読み終えた刑事は、左手で口をおさえ、目にうっすらと涙を浮かべながら言った。
「ちょっとごめん、トイレへ行ってくる…」
「ああ、あまりにもボクが気の毒で、泣き出したくなったんだ。そうだよ、娘を持つ親としたら、当然の反応だ。早川は起訴間違いなし!」
SAKAの期待は最高潮に達した。この期待を確信に変えるために、刑事が大泣きする声をどうしても聞きたくなった。そこで、そっと後に続いてトイレに入った。
個室から声が聞こえる。泣き声か? いや、何か違う。個室の前まで近づいた。
「くっ、くっ、くっ……。くふぁぁ~、どひゃひゃひゃひゃぁ~。なんだよあれ、マジでまじーよ。がははくぷっ…、笑えるぅぅぅ~っ」
なんと、泣いているのではなく笑っていたのだ。SAKAは呆然としてトイレを後にした。ふらふらと歩きながら警察署を出ようとしたときに、後ろから肩をつかまれた。先ほどの刑事である。
「おい、どこへ行く…くぷぅ。まだ調査が終わってないだろう…くぷっ」
必死に笑いをこらえるも、目がどうしても垂れ下がってしまう刑事。
「もういいんです…」と力なく答えるSAKA。その返事を聞いた刑事が怒った。
「なんだと貴様! 府民の税金で動いているこの警察官を『脅迫を受けた』と言って拘束したのだぞ! 最後まできっちりオトシマエをつけなきゃ、府民に申しわけないのだ! おまえだけの警察ではないのだ! 警察をなめるなよ!」
「はははい…、すんまそ」
塩をかけられたナメクジのように、プシューっと音を立てて萎んでしまったSAKAは、再び受付スペースに連れて行かれた。
「さてと、早川ブログは読んだから、今度はキミのブログの番だ。URLを言って」
「えっ! ボクののブログも読むのですか?」
「『の』が1個多いぞ。誤植に気をつけろ…くぷっ。当たり前だろう、脅迫されたと言う側が提示した証拠だけを調べたって意味がない。この早川ブログが、これだけ楽しく…お失礼…これだけ感情移入してキミを糾弾しているには、それ相応の理由があるだろう。それを調べてみなければなるまい、くぷぅ」
後ろめたさがあるSAKAは、二の句がつげなくなった。
「どうした? URLは?」と刑事。
SAKAは驚くべき言葉を口にした。
「黙秘します」
呆れ顔で刑事が説教する。
「キミねえ、なんで黙秘するわけ? そもそもキミが捜査を願い出てきたんだよ。黙秘する理由がないでしょ、ぐぷぅ…。まったく、生半可に法律を知ってる法律オタクは、TPOをわきまえない輩が多くて困るよ。まあいいよ、この早川ブログでリンクが貼られているから、そこから飛ぶよ」
刑事はそういうと、設置されたパソコンを器用に操作し、SAKAのブログを開いた。
「とーいつきょーかいをののしるひとたち。ボクはサカ、きょーかいインのミナさま、ごくろうさまです。ここはこじんのサイトでありますから、ないよーにかんしてサカにぜんせきにんがあります! …うーん、『内容に関しては』って、『は』を入れたほうがいいぞ」
刑事は声を張り上げてSAKAのブログを朗読しはじめた。「なになにぃ~」と、署内の刑事・婦警が集まってきた。
「販売会社と警察…。田中氏が警察の権力で威迫され、認めてしまったら、この日本が大変なことになります。警察の策略がおおっぴらにまかり通る世の中になります。いいがかりで教会が潰されるということです。今、教会員が立ち上がり、声を上げていくことが求められています」
「あらやだ、警察批判ブログやってるの、この人?」
若く美しい婦警たちに軽蔑の眼で見つめられ、塩をかけられたナメクジのようにプシューっと音を立てて萎んでしまったSAKAは、
「や、やめてください…」
と小声で抵抗した。
「なんでだよー? ブログってものは、全世界に公開されたものなんだぞ。読まれて恥ずかしかったら、文房具屋で日記帳を買ってきてこっそり書けばいい。全世界に公開されたものを、ここで大声で読んで何が悪い? そう考えれば 早川氏がキミのブログを全部印刷して娘さんに渡すと言っていることは、決して脅迫ではないと分かるだろう?…くくぷっ。娘さんにURLを教えてあげることと等しいのだからな…くくくぷうっ!」
この刑事が言うことは正しい。早く自分のブログを削除してしまおうとSAKAは思った。娘にだけは見られたくない。良いお父さんと慕っている娘が、自分の汚い言葉の数々を目の当たりにしたらどう思うだろう。
きっと「統一教会を信じていると、こんな人格になってしまう」と幻滅するだろう。きっと「統一教会の男性とは結婚しない」と思うだろう。統一教義では、信者の二世が教会の集団結婚に参加できなければ悪魔にも劣り、地獄に堕ちるとされる。それだけは避けたい。
「早川が娘にボクのブログを教えてしまう前に、ブログを削除しなれば!」
おしっこをちびりながら、SAKAは全速力で警察署を飛び出すのであった。
SAKAが出て行った後の警察署内には、SAKAのブログを囲んで笑いの花が咲いていた。
「こ、こいつさあ、ほんとに馬鹿丸出しだよな!」
「ちょっとぁ~、警部は古いなあ~、それを言うなら『SAKA丸出し』よ」
「わははぁ、SAKA丸出し!」
「SAKA丸出し!」
「SAKA丸出し! わははぁ」
そこへ、憮然とした表情の署長が入ってきた。
「なんだ、ずいぶんと賑やかじゃないか。ちゃんと公務をしないと左遷するぞ」
「あっ、署長! ご苦労さまです! 実はSAKA丸出し…じゃなかった、馬鹿丸出しの統一教会信者が来まして、脅迫されていると…」
署長の顔が、突然ほころんだ。
「おおっ! SAKA丸出しが来たのか? なんだよなんだよぉ~、わが署に来たのなら教えてくれよぉ~。一度リアルで見てみたかったなあ~、SAKA丸出し」
「署長はSAKA丸出しをご存じだったのですか?」
「おお、もちろんだよ。国家公安委員会に何度もメールを送りつけてくるから、警察上層部では有名だよ……。で、どんな顔だった? どんな服装だった? きっと貧相でボロを着ていたんだろうなあ~。いいなあ、本官も見たかったなあ~。やい警部、写真一枚残していないなんて、おまえ左遷するぞ」
慌てふためく警部。そこへ受付婦警が助け船を出す。
「署長。わたし、こっそり携帯で写真撮りました」
「おお、大手柄だ! どれどれ……。く、くっぷ。ほんとにSAKA丸出しだあ! ああええと、この写真、写メで本官の携帯に送ってくれないかなあ。管理監に送ったら喜ぶぞお。本官も本庁に栄転間違いなしだ。キミも受付から好きなところに人事してやるぞ」
「ありがとうごいざいます!」
「すごいじゃん」と仲間の婦警から祝福される受付婦警。SAKAは完全なる悪人ではない。人を幸せにすることもあるのだ。
「しかしさあ…」と、SAKAに応対した刑事がつぶやいた。
「ネットでこれだけ信者がSAKA丸出ししているのに、統一教会は何やってるんだろうね。これじゃあ、入信した子供を心配する親が拉致監禁するのも仕方ないよな」
「これこれ、めったなことを言うでないぞ」と署長がたしなめる。
「あ、すみません。しかし、親は心配するでしょう。自分の子供がこんなにSAKA丸出しな信者がいる教会に入信していたら…。本官の子供だったら、やはり力づくでも脱会させますな、正直なところ」
「まあ、それが親心だ。だから、よほどの事件でない限り、統一信者の親子問題にはタッチしないのが上の方針さ。それよりも、統一教団がらみの悪徳商法をばんばん取り締まって、教団をなくしてしまったほうが、拉致監禁問題を解決するには近道だろう」
「そうですね。今後も統一教会信者の動向に注視し、不法行為を発見したら直ちに検挙しましょう!」
大阪の警察署は、統一教会と関連団体の監視に、一層の決意を固めた。もし今後、大阪で統一教会系の団体やその構成員が検挙されたら、それはきっとSAKAによって闘志を燃やされた大阪府警察官たちの活躍に違いない。警察官たちの熱い闘いは、まだまだ続く。
(つづく)