いつか伝説に。

５１回目の有馬記念。
ディープは、やっぱりディープでした。
そして武豊は、やっぱり武豊でした。
逃げもまくりも関係ない。
そんなことを語ることなど意味も無い。
そこには、のちにどんな言葉において表現してみても言い表せないほどの強さの余韻だけが残りました。

疾走・・・・・。

まさにそれを体現したような馬。
いつも、彼はどの馬よりも一番私達から近い所を、強烈な末脚で駆け抜けて行く。
いつも、彼は視界にも届かない後方から、風のように馬群を抜き去ってゆく。
飛ぶように。とは誰の言葉か。
そこにいた人ならば、間違いなく誰もが感じるその強烈なイメージ。
ディープインパクト。
その名の通りに。

その瞬間の、頬なでる風も、湧き上がる歓声も、芝を叩く蹄の音も、隣の兄ちゃんのヤキソバの匂いも、それらすべてはその官能とともに、わたしたちの頭に刻み込まれていく。

彼の強さを、刹那の自分に投影させ共鳴する者。
彼の強さを、世知辛い世の中に投影させ焦燥を覚える者。
彼の強さに、ただただ感服し羨望の眼差しを送る者。

あなたはあなたの感じるままに・・・・・、
わたしはわたしのやり方通りに・・・・・。

それでもやがて日は落ち、彼のいた今日の世界も夕闇に消えて。
それが自然の理ならば。
私の馬券も風に舞う。
やがて人々の記憶からこの１頭の名馬の記憶が少しずつ薄れて、
語り継ぐ言葉とともに画像や映像だけがそこに残るとき・・・・・、
彼はいつか伝説となる。

２００６年１２月２４日、ラストラン有馬記念。
３馬身差圧勝。

通算成績１４戦１２勝。
ディープインパクト。
彼を忘れない。