
最終ホール。
約10メートルのバーディーパット。
それも下りのスライスライン。
あとになって冷静に考えれば、九分九厘入るはずのないパット。
けど、なぜか入るような気がしてた。
いや、入れることは可能だと思えていた。
予選通過あたり、粘りに粘ってハーフベストが懸かるほどの猛チャージ。
そんなパッティングから打ち出されたボールはゆっくりと進み、大きな弧を描きながら今にも止まりそうな勢いでトロトロとカップの方へ向かっていた。
「入るかも?」と誰かが言った。
いつ止まってもおかしくないようなスピードでボールは進む。
カップの縁で一瞬止まったかのように見えたが、最後のひと転がりでコロンと入った。
「バーディー!」と思わず叫んでしまった。
入るはずのないパットが入った。
ても入る気はしていた。
なぜだろうか。
それは18ホール終わるまで、諦めずにやってきたご褒美なのかも知れない。
何か感覚が研ぎ澄まされていた。
そういう時は入る。
ただ初めから諦め半分で面白おかしくやってきていたのなら、最後にあんな気持ちにはならなかっただろう。
たとえそれが到底無理な難題であったとしても。
どこかでまだ信じていた。
あのパットを打つところまでたどり着いたところで、それだけですでにあのパットは入る確率が格段に上がっていたように思う。
人はその日、18ホールの人生を生きる。
最終ホールの奇跡。
実生活もそうありたいものだ。