公認会計士論文式試験を受験した同志の皆さん、試験結果はいかがだったでしょうか?
昨日、論文式試験の発表がありました。
新型コロナウイルス流行の影響で、本当に大変な試験でしたね。
さて私の試験結果ですが、無事合格することができました。
発表前の数日はなかなか眠れなかったり、逆に早く目覚めてしまったりと精神的に不安定にもなりましたが。。。ようやく一安心です。官報に自分の名前が掲載されているのを見たときは、さすがに震えました。
応援してくれた家族や友人、そしてラークスの諸先輩方に心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました!
前回までの記事で、公認会計士試験・短答式に向けての勉強法をご紹介しました。その初回にて”論文式試験にあたっての勉強方法は、合格した暁に。”と予告しておりましたので、早速「私の勉強法・論文編」を始めていきたいと思います!!
論文編は科目ごとにご紹介します。ちなみに私の選択科目は「経営学」でしたので、他の科目を選択しようとなさってる方はごめんなさい。
一応ご紹介しておきますと、論文式試験は短答式よりも受験科目が増え「企業法」「監査論」「租税法」「会計学(=管理会計論+財務会計論)」「選択科目」の5科目を受験します。このうち、選択科目については「経営学」「経済学」「統計学」「民法」のうちから1つを選択します。
今回は企業法を取り上げます。
企業法という科目は短答では得点源だったけど、論文は全然できない・・・という方が多いような気がします。というのも、短答での企業法は暗記のみでかなり戦えてしまう科目だからです。
ところが、論文になるとそうはいきません。分かっているつもりで答練を解いてはみるものの、点数に結びつかない。そのため、短答では得意だったけど論文では苦手という状況に陥りやすいのかと思います。私はそうでした。
試験1ヶ月前になっても、答練の点数は上がらず苦手意識は増すばかりでした。ですが2つのポイントを意識したことにより、飛躍的に手応えが変わっていったのです。そのポイントとは・・・。
①誰の立場で論じるのかを意識する
近年の企業法の論文式試験は、そのほとんどが事例問題です。つまり、ある事件について問題文で説明されており、それについてどのような法的処理をするか、が問われる形式であります。
例を挙げましょう。
A株式会社が株主総会にて、株主の質問を無視して剰余金の配当額についての決議をおこなった場合、株主は株主総会決議の取消しを主張できるか、という問題だったとします。
この場合、答案では株主の立場で論じるべきです。つまり、主張できるのかできないのか、できるならどのようにするのか。従って、主張の可否について記述すればよく、それが実際に認められるかどうかは書いてはならないということになります。
対して、
A株式会社が株主総会にて、株主の質問を無視して剰余金の配当額についての決議をおこなった場合の株主総会決議の効力について論じなさい、という問題だったとします。
この場合、答案では第三者、いわば裁判官の立場で論じるべきです。従って、今度は株主の主張方法の適法性や取消原因の有無、取消判決が認容されたら対世効なのか相対効なのか等を吟味して有効か無効かを判断する必要があります。
このように、同じ事件について論じていても、立場が変わると書くべき内容は大きく変わります。これを履き違えて答案を作成すると、すっとんきょうな解答となってしまいます。
どの立場で論述すべきか、必ず確認するようにしましょう。
②条文の使い方を理解する
短答を合格したレベルであるならば、主要な条文の内容は知識として理解しているかと思います。しかしこれを用いて論述するとなると、知識として知っているだけでは不十分であると痛感しました。
そのため、条文の使い方を身につけることがとても重要です。
企業法の論文式試験において最も大切といっても過言ではありません。論文式試験では法令基準集は手元にありますし、条文の内容を暗記していることよりもその条文を使いこなせるかどうかの方が遥かに必要な能力であるといえるでしょう。
先程の例を用いてご紹介します。
A株式会社が株主総会にて、株主の質問を無視して剰余金の配当額についての決議をおこなった場合の株主総会決議の効力について論じなさい、という問題の場合、短答を合格した方であれば「質問の無視は会社法314条に違反している」ということにはすぐに気づけると思います(条文番号は暗記している必要はありません。手元の条文で確認すればOK)。
しかしこの設問におけるメインの条文は314条ではありません。決議の効力が主題であるため、本問の主人公は831条1項(株主総会決議取消しの訴え)です。
831条1項では、誰が・どのようなときに・どのような方法で取消しを主張できるかが書かれており、本問においてそれを満たすかどうかを検証するという論述の方法をとることになります。この”どのようなときに”のあてはめの際に314条が出てくるに過ぎません。
このような「条文の使い方」は、マークシートの短答式試験の対策をしているだけでは身につきません。株主の質問を不当に拒絶してはならないということを知っていたとしても、実際に不当に拒絶された場合に法廷でどのように主張をおこなうのかは別の技術です。
条文の使い方を理解することで、より説得力のある論述ができるようになると思います。
誰の立場で論述するか、条文をどう使うか、この2点を抑えることが論文式試験における企業法の鍵になると確信しています。
どなたかの参考になりましたら、幸いです。
次回は監査論編です。お楽しみに!