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グループ法人税制について~第4回 法人による完全支配関係のある法人間の寄付金の制度について

2015-01-27 11:40:29 | 税務トピック

前回は、「譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度」により繰り延べられた譲渡損益がいつ計上されるのかについて説明させて頂きました。今回は、グループ法人税制の創設により新たに規定された、法人による完全支配関係のある法人間の寄附金の制度について説明して行こうと思います。

 法人による完全支配関係のある法人間の寄附金の制度とは

平成22年の税制改正により、平成22年10月1日以降に法人による完全支配関係がある他の内国法人に対して寄附を行った場合は、当該寄附金の全額が損金の額に算入されないこととされました(法人税法第37条第2項)。今まで、連結法人間での寄附はその全額が損金の額に算入されないこととされておりましたが、連結納税制度を選択していない単体納税の法人であっても、法人による完全支配関係のある法人に対して寄附した場合には連結納税と同様にその全額が損金不算入とされます。しかし、その寄附を受けた法人による完全支配関係のある他の内国法人は、受贈益を益金不算入として調整することとされています(法人税法第25条の2)。つまり、法人による完全支配関係のある法人間では、寄附をしても支出した法人では損金不算入、受領した法人では益金不算入となります。この制度により寄附側では損金とならないとしても、寄附を受ける側では課税されないことから子会社支援を目的とする金銭贈与が行い易くなったと考えることもできます。

 個人株主による完全支配関係のある法人間には、寄附金の損金不算入・益金不算入の制度が適用されないので注意が必要

上記の寄附金の損金不算入・益金不算入の制度については、法人による完全支配関係のある法人間でしか適用されません(法人税法第25条の2カッコ書き、法人税法第37条第2項カッコ書き)。そのため、個人株主による完全支配関係のある法人間には同制度の適用がないので注意が必要です。これは、完全支配関係の範囲の「一の者」に同族関係者が含まれてしまっているため(グループ法人税制①をご参照下さい。)、個人株主による完全支配関係のある法人間においても同制度を適用してしまうと、実質的に親族へ無税で資金等を移転することが可能となり相続税対策に使われる懸念があるためです。例えば、下記の図のケースの場合、「S1」が「S2」に寄付した場合に寄附金の損金不算入・益金不算入の制度が適用されてしまうと、「S1」から「S2」に無税で資金等の移転が可能となり、実質的に「S1」の所有者である父から実質的に「S2」への所有者である子への無税での資金等の移転が可能になることになります。また、「S1」から「S3」に寄付した場合でも、「S3」の資産等が増加するため、結果として、「S3」の株主である「S2」へ無税で資金等が移転することが可能となります。そのため、これを規制するために、「S1」「S2」「S3」それぞれの法人間で寄附が行われた場合には、法人による完全支配関係がないことから寄附金の損金不算入・益金不算入の制度の対象から除かれることになります。一方、「S3」と「S4」の関係をみると、それぞれの株主は法人であるとともに、仮に「S3」から「S4」に寄附した場合であっても、頂点の個人株主である父と子の相続税評価額等には影響されないことになります。そのため、このケースでは、寄附金の損金不算入・益金不算入の制度の対象になることになります。

今回は法人による完全支配関係のある法人間の寄附金の制度について説明させて頂きました。次回は、グループ法人税制の中小特例制限について説明させて頂こうと思います。