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支流からの眺め

世の動きは力が決める(7)前提の力


 前のブログの趣旨は、「人々が自分の意思を重視し、民意を反映する政治を求めるようになった現代では、国内・国際社会とも民主制が望ましい政体であろう。それが実現する迄は、自国を守るのが生存戦略である。但し、その間に民意をより公平に反映させる政体としてAI制が出現するかもしれない。」となる。ここで言う民意とは、個々の政策の賛否というより、人々が共同体に対して無意識に抱いている思い込み(前提)の意味である。この前提の力が共同体の特性を規定する。

 共同体を支えているのは、大きく情と理である。情が支える共同体の典型は家族で、血縁や居住地で規定される共同体もそうだ。自然発生的(目的が曖昧)で、複層的な相互依存に支えられた人間関係があり、独自の歴史と文化が存在する。体制は保守的で、年配者の権威や不文律の習慣が支配し、法の適応はなじまない。共同体内には一体感があり身は安全で、組織員の共同体への帰属意識は高い。但し、互いの信頼関係が崩れると、深い確執や憎悪が生じることもある。

 理が支える共同体とは、営利団体、宗教団体、政治団体などの各種の団体で、特定の目的のために契約や約束に基づき人為的に形成されたものだ。運営は目的と法に従い、体制の変革も比較的容易で、人間関係や歴史の広がりは目的や契約の範囲に留められる。共同体内は相互評価の緊張感があり、帰属意識も限定的である。なお、情と理のいずれが優れるということではなく、共同体はこの両方の特性を有している。例えば、夫婦は契約関係であり、会社員も愛社心をもつ。

 国という共同体は、この情と理が極めて複雑に絡んでいる。ヒトは生誕とともに国民となり、他の国民と遺伝形質、言語、歴史、習慣、生活などを共有し、自然と一体感を抱く。この多数の国民に対して国は、徴税権や警察権を含む権力を行使すると同時に、その安全や権利を保障し、国内の多様な共同体の利害調整を行う。他国に対しては、領土や国民を保全するために実力行使する。国の運営が情に流れれば偏狭で攻撃的な愛国心に、理に走れば国境を破壊し国を売る世界主義につながる。

 この複雑で微妙な関係性の上に国を成り立たせている力は何か。わが日本国を例にとれば、それは「和」、即ち「万物は自然に調和する」という思い込み(前提)であろう。日本贔屓が過ぎるというなら、「友好(ヒトは誰も友好関係を望む)」と言い換えてもいい。この前提に反する史実は無数にあるが、逆にこの前提なしで国のような複雑な共同体は維持できない。ヒトの発展は共同体なくしてありえなかったのであるから、この前提は必須条件のはずである。

 つまり、ヒトが求めているのは、共同体内での自己実現と良好な関係性(自由かつ安心な社会生活)であり、その達成には和と友好が前提となるはずである。しかし、国内で和や友好が前提となっていても、国際社会の運営は事情が異なる。その前提は、他国に対しては、独善的・排他的、または過度に寛容になりやすい。技術の発展が国際交流を促進させ、自身を一国の国民ではなく地球市民と自然と思える日が来れば、そこでも前提として機能するかもしれない。

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