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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

チビコロ パワークレーン が来院しました。

【申告】

 動かない状態で頂いたおもちゃなのですが、少しでも動くようになればと思い来院しました。

 

【診察】

 おっ。この顔つきは!

 そうです。全国のおもちゃドクターが分解に苦労するチビコロポッポと同じ顔つきです。

 チビコロポッポは、西松屋チェーンで発売されていたおもちゃです。このおもちゃの場合車輪が軸に圧入されていて、これを外さないと分解できずおもちゃドクターは苦労されています。

 今回も何か暗雲が立ちこめるかもと、お預かりするときに持ち主様に分解が困難な場合があり、破損することもあるとお伝えして了承を得て入院となりました。

 他のドクターが診察を始めましたが、制御基板のある回転台は簡単にねじを外して分解できる構造ではありませんでした。そのため車体にねじがある付近に穴をあけ分解しようとしましたが、分解できず治療移管がされました。

 

 車体を固定しているねじは、5本有りますが前方の赤丸印のねじは#1のプラスネジなのですが、ねじ穴が標準的なドライバー軸太さより細いドライバーでないと入りません。ねじも他の4箇所と違っていました。

 

 このおもちゃの情報を得ようと検索しましたが、治療情報をえられず手探りで治療を始めました。

 まずは、外回りの診察です。

 ・前輪にラバーの滑り止めが1本有りません。ただ、モータ駆動ではないので目的は何でしょうか?

 ・運転席上のランプがシーソーのようにばねがあり、高く飛び出ているランプを押すと他方が上がります。指で押すのでしょうか?

 ・クレーンアームの角度の固定が甘くなっており、下がってくることがあります。

 

 内部を開けて診察の開始です。

 最初のドクターが開けた穴があります。内部の配線も切れていたり無かったりしているとのこと。誰かが開けてさわったようです。

 前輪軸にカムがあります。

 制御基板は、クレーンの回転台の内部にありそうですが穴あけして2本のねじと、他1本を外しても開くことが出来ません。

 クレーン回転台と車体の隙間から覗きますが、ねじ穴らしきくぼみが見つけられませんでした。止む無くクレーン回転台を押し広げ、のこぎりで結合部を切断して開くことにしました。

 クレーン回転台と車体は4つのツメで結合しており、クレーン回転台を開けてからこのツメを外そうとしましたが強固で外すことは出来ませんでした。ましてやクレーン回転台を開く前では無理と思われます。嫌な予感は当たってしまいました。

 このおもちゃを分解するには、2箇所に穴を開けないとねじを外せません。切断したねじ位置が中心位置に近かったため、クレーン回転台と車体の隙間からは分かりませんでした。おおよその中心からの距離を書きましたので、穴あけ時の参考にしてください。

 

 これで、制御基板を確認できましたので音が復活するか、不足していたり、切れている配線を接続して試そうと思いました。ただ困ったことに電源ライン、グランドライン共に外れており制御基板にも表示がなく接続場所の手がかりがありません。電源、グランドラインを逆接続すると命取りになります。注意が必要です。

 一般的にスイッチの共通ラインは、グランドの場合が多いですが絶対ではありません。幸いにして運転席上部にLEDランプが2個あり4本の配線の内2本が共通であり、アノード側だったのでこれが高電位側です。そしてこのラインと繋がっている接続場所が電池BOXからの正極につなぐ場所と推測出来ます。この推測を元にするとスイッチの共通ラインは、電源ラインでした。トラップです。

 

 スイッチ基板の櫛歯パターンを清掃して4つのスイッチを押しましたが、LEDは点灯しましたが音は鳴りませんでした。スピーカに接続されている配線を追いかけると2本ともCOBに直接接続されていますので、BTL(*1)で音を鳴らしていると思われます。スピーカ単体では正常です。音は復活できないかと思いながら、オシロスコープで観察すると1本からは信号が出ているようです。音量が半分くらいになるのですが、この信号に回路を追加して音が取り戻せるか試しました。

  幸いに音量も十分な結果でした。故障前は大きな音だったことでしょう。

 

 最も大切な音が復活しましたので、残りの気がかり点の治療をします。

 ・前輪に滑り止めのラバーがある。

 ・前輪軸にカムが付いている。

 ・運転席状にシーソー状にランプが動くようになっている。

 これらから推測出来ることは、前輪の回転でランプを上下に動かす仕掛けです。ですがカムとランプのシーソーを繋ぐリンクがありません。

 平板でリンクを作成して、前輪の回転とランプのシーソーをつなぎました。

 前輪のラバーも作成しました。

 

 車輪の付いているラバーは、シーソーのバネの力に負けないで前輪を回すためでした。

 

 クレーンアームの角度固定が甘くなり下がってくることがあるので治療します。

 

  固定するピンが摩耗していますので、ピンを変えます。ピンを竹ひごで作成して埋め込みました。

  最後に、回転台のねじを外すために開けた車体の穴をふさぎます。切断した4つ目のねじは、新たに車体に穴を開けて締めつけなくても3本のねじで固定されていますので、このままにしました。

 

 

 これで治療終了です。

【治療後記】

 既に、販売は終了したためかWEBや西松屋のHPも覗きましたがありませんでした。また、おもちゃ病院のカルテも探しましたが見つけられませんでした。

 内部をいじられて不完全な状態だったのでパズルのピースをはめ込むような治療になり、楽しい時間を持てました。このおもちゃもいかに分解するかが肝になります。ねじを外すための穴あけを上手に行いましょう。

 

【おまけ】

*1:BTLについて

   次のPDFファイルを参照してください。

   <42544C82C182C489BD82BE288F4390B33230313131303331292E6169> (elekit.co.jp)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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