すずめとつばめ
むかしむかし、ずっとむかしは、つばめとすずめとは、姉妹だったといいます。つばめが姉(あね)さんで、すずめが妹だったのです。
ねえさんつばめと、妹すずめとは、いつでもいっしょに仲よく暮らしておりました。それでほかの鳥たちからも、
「うらやましい、いい姉妹よ。」
と、いわれていました。この二羽の小鳥がならんで小枝にとまっているようすは、ほんとにかわいいものでした。ところが、つばめのねえさんのほうは、生まれつきのおしゃれさん。いつでも顔や、衣しょうのことばかり気にしています。
「ねえ、このドレス、あたしににあうかしら。くちばしのつや、よくでているかしら。」
そんなことばかりいって、ひまさえあると羽をなでたり、くちばしをこすったりしていました。だが、妹のすずめのほうは、ちっとも顔や衣しょうのことを気にしません。
「あたし、これでけっこうよ。」
そういって、いつでもじみな古い服を着て、平気で飛びまわっているのでした。ねえさんのつばめがときどき、
「あなた、その服、じみすぎるわよ。もっとはでな、赤や青のまじったのを着るといいわ。」
そんなことをいっても、
「だってこの服、とってもあったかいんですもの。それにとてもじょうぶなの。」
といって、いつも茶っぽい、じみな服を着てすましています。それにくらべてねえさんつばめのほうは、ちょっとそこらへ出かけるにも、むらさきがかった濃いい紺(こん)の長いドレスに、まっしろな下着を着ないと気がすまないのでした。
あるとき、この姉妹の住まいへ、急ぎの使いがきました。使いにきたのは、飛ぶことの速い野ばとでした。
「おかあさんが危篤(きとく)です。すぐにいらっしてください。」
そう使いのことばを聞いて、姉妹の小鳥はとてもびっくりしました。ふたりのおかあさんは、山のむこうの遠い森に住んでいるのでした。おかあさんはもう、年をとっています。その年よりが、死にそうだというのです。
「まあ、たいへんだわ。すぐにいかなくっちゃ。」
妹のすずめはそういうと、ふだんのままの着のみ着のままで、もうぱっと飛んでいきました。ねえさんのつばめも、
「あたしもすぐいくわ。」
といいましたが、おしゃれのつばめはそのまま飛んでいくことはできません。大急ぎで着がえにかかりました。まず、まっ白な下着にアイロンをかけて、それから頭をなでつけたり、くちばしをみがいたりしました。それがすむと、よそいきのビロードの服を出して、ていねいにブラシをかけ、何度も着たりぬいだりして、かっこうをつけるのでした。
野ばとの使いがきたのは朝でしたのに、つばめのねえさんはそんなことばかりしていたもので、したくができあがったときには、もう夕方になっていました。
「さあ、出かけましょう。」
と、急いで飛んでいきました。だが、まにあいませんでした。重い病気のおかあさんは、もう死んでしまった後なのでした。
「ねえさん、おそかったわ、おそかったわ。」
妹のすずめはそういって泣きました。
「おかあさんは、とてもねえさんに会いたがったのよ。それなのにねえさんたら、いくら待ってもこないんですもの。」
「ごめんなさいね・・・・」
つばめのねえさんもそういいましたが、死んでしまったおかあさんを生き返らせることはできません。
「親の死にめにも会えないなんて。」
と、ほかの小鳥たちがいいました。
森の神さまは、着のみ着のままで飛んできたすずめには、
「おまえは孝行者だ。たんぼに米がみのったら、まずはじめに食べていいことにしよう。」
と、おきめになりました。それから、おしゃればかりしていて、親の死にめにも会えなかったつばめには、
「おまえはこくもつを食ってはいけない。虫や土でも食ってるがいい。」
と、おきめになりました。
それで今でもつばめは、虫だけ食べて、土をくわえているのです。
「ツチクウテ、ムシクウテ、クチャシブイ・・・・」
そうつばめは、早口にさえずっているのだといいます。
(出典不明)
むかしむかし、ずっとむかしは、つばめとすずめとは、姉妹だったといいます。つばめが姉(あね)さんで、すずめが妹だったのです。
ねえさんつばめと、妹すずめとは、いつでもいっしょに仲よく暮らしておりました。それでほかの鳥たちからも、
「うらやましい、いい姉妹よ。」
と、いわれていました。この二羽の小鳥がならんで小枝にとまっているようすは、ほんとにかわいいものでした。ところが、つばめのねえさんのほうは、生まれつきのおしゃれさん。いつでも顔や、衣しょうのことばかり気にしています。
「ねえ、このドレス、あたしににあうかしら。くちばしのつや、よくでているかしら。」
そんなことばかりいって、ひまさえあると羽をなでたり、くちばしをこすったりしていました。だが、妹のすずめのほうは、ちっとも顔や衣しょうのことを気にしません。
「あたし、これでけっこうよ。」
そういって、いつでもじみな古い服を着て、平気で飛びまわっているのでした。ねえさんのつばめがときどき、
「あなた、その服、じみすぎるわよ。もっとはでな、赤や青のまじったのを着るといいわ。」
そんなことをいっても、
「だってこの服、とってもあったかいんですもの。それにとてもじょうぶなの。」
といって、いつも茶っぽい、じみな服を着てすましています。それにくらべてねえさんつばめのほうは、ちょっとそこらへ出かけるにも、むらさきがかった濃いい紺(こん)の長いドレスに、まっしろな下着を着ないと気がすまないのでした。
あるとき、この姉妹の住まいへ、急ぎの使いがきました。使いにきたのは、飛ぶことの速い野ばとでした。
「おかあさんが危篤(きとく)です。すぐにいらっしてください。」
そう使いのことばを聞いて、姉妹の小鳥はとてもびっくりしました。ふたりのおかあさんは、山のむこうの遠い森に住んでいるのでした。おかあさんはもう、年をとっています。その年よりが、死にそうだというのです。
「まあ、たいへんだわ。すぐにいかなくっちゃ。」
妹のすずめはそういうと、ふだんのままの着のみ着のままで、もうぱっと飛んでいきました。ねえさんのつばめも、
「あたしもすぐいくわ。」
といいましたが、おしゃれのつばめはそのまま飛んでいくことはできません。大急ぎで着がえにかかりました。まず、まっ白な下着にアイロンをかけて、それから頭をなでつけたり、くちばしをみがいたりしました。それがすむと、よそいきのビロードの服を出して、ていねいにブラシをかけ、何度も着たりぬいだりして、かっこうをつけるのでした。
野ばとの使いがきたのは朝でしたのに、つばめのねえさんはそんなことばかりしていたもので、したくができあがったときには、もう夕方になっていました。
「さあ、出かけましょう。」
と、急いで飛んでいきました。だが、まにあいませんでした。重い病気のおかあさんは、もう死んでしまった後なのでした。
「ねえさん、おそかったわ、おそかったわ。」
妹のすずめはそういって泣きました。
「おかあさんは、とてもねえさんに会いたがったのよ。それなのにねえさんたら、いくら待ってもこないんですもの。」
「ごめんなさいね・・・・」
つばめのねえさんもそういいましたが、死んでしまったおかあさんを生き返らせることはできません。
「親の死にめにも会えないなんて。」
と、ほかの小鳥たちがいいました。
森の神さまは、着のみ着のままで飛んできたすずめには、
「おまえは孝行者だ。たんぼに米がみのったら、まずはじめに食べていいことにしよう。」
と、おきめになりました。それから、おしゃればかりしていて、親の死にめにも会えなかったつばめには、
「おまえはこくもつを食ってはいけない。虫や土でも食ってるがいい。」
と、おきめになりました。
それで今でもつばめは、虫だけ食べて、土をくわえているのです。
「ツチクウテ、ムシクウテ、クチャシブイ・・・・」
そうつばめは、早口にさえずっているのだといいます。
(出典不明)
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