キリスト教徒は、今一度、彼の声を聞け。

「先輩！危ない話題はちょっと！」

「白人至上主義も反人種差別主義も結局、キリスト教から派生した問題なんだから、一回聖書を読み返せ！

ということが、危ないことかな？

牧師やら神父が、自分の主張に合わせて、聖書から引用したりするけど……

もっと、心を空っぽにして、聖書を読んでみるべきだと思う。

僕の聖典は『ロードス島戦記』と『銀河英雄伝説』と『魔界都市ブルース』だけれども、読み返す度に、その時の心理や環境で受け取り方が違う。

日曜日に教会に行って祈りを捧げる前に……

イエス・キリストの声を聞くべきだと思うけどね……

まあ、新約聖書がイエス・キリストの言葉だけ入ってるわけでもないけど……

何度も読み返して、熟知するんじゃなくて、熟感して欲しい」

「知るのではなく、感じるですか？」

「そ……

本なんて、１度読めば知識として蓄えられるんだ。

同じ本を２度も３度も読むのは、時間の無駄だけど……

気に入った本は、何度も読む人がいるだろう？

僕もだけど……

その人たちは、知識を求めてるんじゃない。

感動を求めてるんだと思う。

無論、話を知ってるから、同じ感動は味わえないけど……

でも、１度目とは違った感動を得ているんだ。

本を蒐集するって趣味は、知識の蓄積じゃなくって、感動の蓄積だと思ってるんだよ……

聖書は世界一売れた小説だよ。

でも、その小説が人々の意識を変えるに足る感動を与え続けている事実は変わらない。

今、人種差別で暴力的事件がいっぱい起きているけど……

その原因となっているのは、キリスト教だ。

断言するよ。

キリスト教という一神教が、この世の人種差別の半分くらいの理由を作ってる。

でも、その聖典は、本来そういう思想を教えているわけじゃないんだ……

だから、今一度、読み返してみろ！

と、言ってるんだ」

「……判断の難しいことを言いますね」

「私家隠秘学者だからね。

キリスト教とは、相容れないのさ」

「確かにアメリカの人種差別による暴力事件が連鎖しています。

クールダウンさせるためにも、読書するのは良いかもしれませんね……」

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「君の聖典は『ラブクラフト全集』じゃなかったのか？」

「世界観は好きだけど……あの書物を読んで、何を感動しろと？」