考えて見れば、一つ気がついたのはここ数年間劉雲と会うたびに、彼女の口から
ご主人のことが殆ど無かった。いつも娘の事ばかり心配していた。
「娘はもうそろそろ簡単な手紙ぐらい書けるかなあ」、「よく娘の夢を見る」、「娘に会い
たい」と、娘からの手紙と写真を毎日のように期待している様子はとても印象的だった。
「詩音さん、これを見てご覧、あなた宛の手紙らしい」
中津はA4 サイズの茶色の封筒を私の目の前に持ってきた。
封筒に「詩音様親展」と書いてあった。
私は心臓がドキドキしながら、早速封筒を開けた。
封筒には小さな航空便の封筒と三つの録音テープが入っていた。
航空便の封筒は中国からの手紙らしい。封筒の右の上の方にある丸い郵便スタン
プの日付けは「一九八八年十二月二〇日」とはっきり見える。
三つの録音テープの横に全部「詩音様へ」と細いボールペンで書いてあった。
「一体何があったのだろうか?何の録音テープだろうか?」
中津は録音テープが気にかかった。
「すみません、私は先に帰ります。録音テープの中身を聞いたら、劉雲の家族の事が
分るかも知れない。そして彼女の自殺の原因もわかるかも・・・」
村田、中津の返事を待ちきれずに、私は録音テープと航空便の手紙を再び茶色の
封筒に入れて、それを持って劉雲の部屋を飛び出した。
私は一刻も速く録音テープを聞きたい。
一刻も速く劉雲を家族のところに帰したい。
一刻も彼女の自殺の謎を知りたい。
私は阪急線庄内駅の近くでタクシーに乗って、急いで自宅のマンションに帰ってき
た。
部屋に入ると本棚の上のダンボールから何年か前に買った小さな録音機を取り出
し、早速劉雲の録音テープを聞こうとしたその時、三つの録音テープと航空便の封筒
は、A4サイズの茶色の封筒から畳に落ちた。何故か知らないけど私は右手を伸ばし
て先に航空便の封筒を拾った。封筒の郵便スタンプの日付は間違いなく十二月二〇
日でちょうどクリスマスの四日前だった。ということは、劉雲が村田に電話したのもこの
手紙を劉雲に届けた頃だった。もしかしたら劉雲はこの手紙を読んだ直後に、村田に
電話を掛けたかも知れない。
私は迷わず航空便の封筒から手紙を取り出した。
手紙は二通だった。
一通は「瑜川」という名前の人から劉雲宛の手紙だった。
一通は劉雲が私に書いた手紙だった。
続く
ご主人のことが殆ど無かった。いつも娘の事ばかり心配していた。
「娘はもうそろそろ簡単な手紙ぐらい書けるかなあ」、「よく娘の夢を見る」、「娘に会い
たい」と、娘からの手紙と写真を毎日のように期待している様子はとても印象的だった。
「詩音さん、これを見てご覧、あなた宛の手紙らしい」
中津はA4 サイズの茶色の封筒を私の目の前に持ってきた。
封筒に「詩音様親展」と書いてあった。
私は心臓がドキドキしながら、早速封筒を開けた。
封筒には小さな航空便の封筒と三つの録音テープが入っていた。
航空便の封筒は中国からの手紙らしい。封筒の右の上の方にある丸い郵便スタン
プの日付けは「一九八八年十二月二〇日」とはっきり見える。
三つの録音テープの横に全部「詩音様へ」と細いボールペンで書いてあった。
「一体何があったのだろうか?何の録音テープだろうか?」
中津は録音テープが気にかかった。
「すみません、私は先に帰ります。録音テープの中身を聞いたら、劉雲の家族の事が
分るかも知れない。そして彼女の自殺の原因もわかるかも・・・」
村田、中津の返事を待ちきれずに、私は録音テープと航空便の手紙を再び茶色の
封筒に入れて、それを持って劉雲の部屋を飛び出した。
私は一刻も速く録音テープを聞きたい。
一刻も速く劉雲を家族のところに帰したい。
一刻も彼女の自殺の謎を知りたい。
私は阪急線庄内駅の近くでタクシーに乗って、急いで自宅のマンションに帰ってき
た。
部屋に入ると本棚の上のダンボールから何年か前に買った小さな録音機を取り出
し、早速劉雲の録音テープを聞こうとしたその時、三つの録音テープと航空便の封筒
は、A4サイズの茶色の封筒から畳に落ちた。何故か知らないけど私は右手を伸ばし
て先に航空便の封筒を拾った。封筒の郵便スタンプの日付は間違いなく十二月二〇
日でちょうどクリスマスの四日前だった。ということは、劉雲が村田に電話したのもこの
手紙を劉雲に届けた頃だった。もしかしたら劉雲はこの手紙を読んだ直後に、村田に
電話を掛けたかも知れない。
私は迷わず航空便の封筒から手紙を取り出した。
手紙は二通だった。
一通は「瑜川」という名前の人から劉雲宛の手紙だった。
一通は劉雲が私に書いた手紙だった。
続く