あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

「終戦」がなかった島

2014-02-27 | 本(文庫本)
浅田次郎さんの『終わらざる夏』を読みました。
この文庫本は前に読んだ『一刀斎夢録』よりも前に出版されていたのですけど、読む順番が逆になってしまいました。理由は分かっています。太平洋戦争の話だから。あの戦争についての話は、かなり苦手なんです。「歴史」として捉えることができなくて…。「昔」の話じゃない感覚なもので…。

昭和20年7月。沖縄が陥落し本土決戦のための大規模動員計画は立てられるものの、敗戦濃厚のムードは否めない頃、神田の出版社に勤める翻訳編集者・片岡に赤紙が来る。兵役年限ギリギリの45歳11カ月、極度の近視の彼にまで赤紙が来てしまった。家族や仕事仲間たちも混乱したまま、片岡は同時に召集された医師の菊池、「鬼熊」と呼ばれる歴戦の軍曹と一緒に北の地へ向かう。到着したのは千島列島最東端の島・占守島だった。

知ってました? 占守(シュムシュ)島。そしてここであった「終戦後」にしかけられたソ連軍の攻撃。私はまったく知りませんでした。この小説で初めて知ることができました。戦争そのものが「理不尽」でしかないのだけど、これほど「理不尽」なことってないと思いました。
という史実があって、小説としての感想は、やはり浅田さんの作品は読みごたえがあって、登場人物(今回の作品はとくに多い!)それぞれの心情を丁寧に描いているなぁ~、ということでした。

「二度と、戦争はするな。戦争に勝ちも負けもあるものか。戦争をするやつはみんなが負けだ」

というセリフがあるのですけど、本当にそう思えた作品です。戦争がなければ、普通に生活をして、昔ながらの言い方をすれば「畳の上で」死ねただろうたくさんの命が描かれています。
占守島に向かわされたソ連軍の兵士たちも同じ命でした。
読み終わって、同じく終わったソチ五輪をTV観戦して感じたロシアの人たちの暖かさとの違いにちょっとオロオロしつつ、「でもやっぱり北方領土は返してもらおう」と思うこともできた作品でした。
知っておかなければいけない史実でもあります。今年の終戦の日までに、読んでみてはいかがでしょう。
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