あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

禍福

2022-02-17 | 本(文庫本)
奥山景布子さんの『圓朝』を読みました。

初代・三遊亭圓朝。幕末から明治に活躍した落語家。三遊派の総帥であり宗家。幼いころから落語家を志し、母の反対にあうけれども若くして真打に昇進。順風満帆な人生のように見えるが、師匠や弟子の裏切り、息子の逮捕など、次々と目の前に障壁が現れる。三遊派のみならず落語中興の祖であり「大圓朝」とも呼ばれた落語家の一代記。

以前、歌舞伎座で『牡丹灯籠』を観劇しました。玉三郎さまと中車さんが共演されるというので、お二人の大ファンである私はウキウキ気分で出かけたものです。その『牡丹灯籠』の作者が圓朝で、圓朝を演じていたのが猿之助さんでした。
芝居中の圓朝はストーリーテラー的な存在で、高座で語ってる様子を猿之助さんが演じるのだけど、その芝居に玉三郎さまや中車さん以上に魅了されてしまったのです。出番の時間としては短かいのに、語りの間とか所作とか、憎たらしいくらいに上手いの、猿之助さん。
それがあって、猿之助さんが演じていた「圓朝」が強烈に心に残っていたので、本作も書店で見かけた途端に手にとっていたのでした。

圓朝の人生は、新しいアイデアを落語界に持ち込んで人気者になるなど、華やかなものに見えます。でも「禍福は糾える縄の如し」で、ひとつ問題をクリアして幸せなときを迎えてもまた次の問題が勃発。それを乗り越えてまた波風が……、という具合に繰り返されます。
それって、私も一緒。誰だって一緒。
圓朝は災いに出くわしてもそこでへこたれることなく、堂々と立ち向かって、ひとつひとつクリアしていくんです。それが素敵なのは、問題に立ち向かう姿が「深刻」な感じがしなくて、軽やかさを感じます。お洒落と言うか、粋と言うのか。読めば読むほど、それが猿之助さんが演じた圓朝と重なりました。
新しい話を作る面白さに夢中になる若いころの圓朝から、落語界の重鎮となっていくまでの過程も面白いのだけど、裏切られたり、泣いたり泣かせたりのリアルな人生を愛おしく感じる。そんな素敵な読書の時間がもてました。
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