ハラスメント・いじめ問題を考えましょう

大阪地裁染髪禁止校則裁判の判決を読む(その3・不登校後の措置は違法か)

大阪地裁染髪禁止校則裁判の判決を読む(その1)(その2)に続いて、

判決の争点(3) 原告が不登校となった後の学校の措置は違法といえるか

についての判決を読んでみましょう。

 

判決によると、原告は、2年生の2学期のはじめの9月上旬に

学年主任から、頭髪指導に従わないと文化祭に友だちと参加できなくなる

との通告を受けたあと不登校になりました。

それからの事実は次のようなものでした。

 

9月下旬に、教頭は、女子生徒(原告)に対して、頭髪指導に従わない場合は、

修学旅行に参加しても他の生徒とは別行動にすると通告されました。

女子生徒は2年生の10月に実施された修学旅行には参加しませんでした。

学校は、女子生徒に修学旅行積立金を返金しましたが

その中からキャンセル料として約5万6千円を差し引きました。

 

女子生徒は3年生に進級しましたが、不登校のままでした。

学校は女子生徒に、クラスと出席番号を書いた生徒証を渡しました。

しかし、実際にはそのクラスの出席番号には別の生徒が在席しており、

教室には女子生徒の席はありませんでした。

またクラスの名列表にも女子生徒の名前はありませんでした。

 

この措置は違法といえるでしょうか。

被告の大阪府は違法ではないと反論しました。

判決には、この点についての被告の弁明が書かれています。

それは次のようなものです。

「学校は、名列表に原告の氏名を記載し、教室に席を置けば、

 原告が勝手に欠席を続けているにも関わらず

 3年生に進級したことが他の生徒にも明らかになり

 他の生徒が原告席にいらずらをし、

 あるいはSNS等に原告の心情を傷つけるような

 無責任な噂が拡散される可能性があったから

 このような措置をとったのであり、これは合理的な措置である。」

この弁明を読んで、なるほどと納得する人はまずいないでしょう。

このような生徒に対する排除的な措置は、教育機関として不当で

裁判所が違法と判断したのは当然だと思います。

 

学校がこのような違法な措置をしたことは

ただ単にこの措置そのものだけでなく、それ以前の、

それまでの頭髪指導における学校の姿勢がどういうものであったかが

間接的ではあっても浮かび上がってくるでしょう。

 

原告は、学校の行き過ぎた頭髪指導によって

修学旅行に行けなかったと主張しました。

しかし裁判所は、修学旅行に行かなかったのは

原告自身の判断だったから違法ではないとしました。

しかしこれは無理のある解釈でしょう。

原告の心情をもう少し掘り下げて考えるべきではなかったかと思います。

 

原告の自己判断ということについて

裁判所は、染髪禁止の校則が違法ではないという理由に

原告は自ら高校の定める規律に服することを前提として

受験する高校を選択したということを挙げています。

しかし、校則の内容で受験する高校を選択する余地は

実際にはないでしょうから

このような原告自らの選択を理由とすることも無理があります。

 

最後に、損害額です。原告が請求した慰謝料額は200万円でした。

裁判所は、学校が、クラスに原告の席を置かなかったことなどを違法として

慰謝料として30万円を認定しました。

損害賠償額としては、これに弁護士費用を3万円加えた合計33万円でした。

 

この額を聞いて、とんでもなく高額だと思う人はおそらくいないでしょう。

日本の裁判所の慰謝料基準は非常に低いのが現状です。

これでは、意を決して訴訟を提起して、時間と費用をかけて勝訴しても

金銭的にとても見合わないのです。

 

慰謝料というのは精神的苦痛に対する慰藉ということです。

慰謝料基準が低いことの背景には

日本では精神的苦痛を非常に低く見ていることがあります。

このような現状は早く変えていくべきです。

 

また、弁護士費用が3万円(概ね損害額の1割とされます)

というのも実態とかけ離れています。

この点も、被害者が訴訟を起こすことをためらう要因になっています。

弁護士費用も実費賠償にして、被害者の権利回復をはかるべきでしょう。


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