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タローさんの、トコトコ♪エッセイ

アーティスト・きしもとタローの、旅の話や、夢日記、想い出話など…

その5『効いたよ!?』

2006-05-17 14:06:29 | アンデスの国…ペルー・ボリビア編
『効いたよ!?』

その謎の薬を飲んで横になると、ボーイの彼は少し掃除をしながら、「ところでボリビアに何しに来たの?どこか行きたいところあるの?」と私に話しかけてきました。天井をぼんやり見ながら「子供の頃からケナ(ケーナ)を吹いてるんだよ。だからずっと南米に来たかったんだ。」と答えると、突然彼は元気な声で「じゃ、ケナ持ってるのか?」と言ってカバンの方に目をやりました。「もちろん、あるよ。日本の竹で作ったヤツが。ボクが作ったヤツ。」私は、日本とアンデスの空気の中で、同じ笛の音がどう違うのか試してみたくて、日本の竹で作った笛を持ってきていたのです。ボーッとしながら、そのうち元気になったら吹いてみようかな…♪なんて思っていると、「それはすごい!今出して!見せて!今吹いて!今!」と騒ぎ出すではありませんか。この~っ、たった今、高山病の頭痛で苦しんでるの見たとこやろ~!何の薬かわからんような薬飲まされて青ざめてる、可哀そうな日本人青年つかまえて、今!今!って、一体何言い出すんじゃぁ~?!思わずのけぞってると、「音楽がすごく好きなんだ。ボクは出来ないけど。聴くのは大好きだし、いつも聴いてるよ。日本人のケナも是非聴きたいな~!」と、またもや屈託のない顔で罪な要求を…ホントに、あんまり考えんと喋っとるな、この男は。

「いや、今、頭痛いから、また今度ね。」「ちょっとだけ!今、ちょっとだけ吹いて!すごく聴きたいから。」くくく…どう言ったろか、この男。「高山病で(酸欠で)頭痛いんだよ。笛なんか吹いたら…」「そういう時に吹いたら、頭痛いの直るよ。だから、今吹いてみて!」「んん??いやいや、頭もっと痛くなるだろ?」「笛を吹いたら元気になるから、頭痛いのも直るよ!そういう話を前に聞いた事ある!」どんな話や、それは!?お前がただ元気になるんとちゃうんかぁ?!大体誰や、そんなこと言うヤツは…困りながらも彼の強烈な押しに負けて、私は仕方なく笛を出し、簡単にチョチョッと吹いてみることにしました。重い体を起こして、笛を構え、息を吹き込むと、二、三音で「…すごい音だねー!!」と彼が感嘆の声を上げました。しかし、驚いたのは私の方でした。あまりに突然の体験だったので、思わず笛を口から離しました。音が信じられないくらいに「とおる」!響きが勝手に大きくなるような、音がスパーンと四方に抜けていくような、それは日本で体験したことのない、全く新しい感触だったのです。

よく「音の違いは楽器の違い」と端的に考えてしまう人も多いのですが、空気…その違いが生む響きの違いに、本当に驚いたのです。その後短いフレーズを吹いてみて、彼も喜んでくれたし、何だかもうそれ以上吹く必要もなくなってしまったので、楽器をしまい、再びベッドに寝転びました。音や響きに関する感覚がこっちの人は自然に違うだろうな…当然、奏法に関しても、楽器の製作に関しても主眼が変わってくる…面白い~!一人で部屋で寝転びながら、あれこれと思いをめぐらせている内に、私はいつの間にか眠ってしまいました。

しばらくして目が覚めると、「頭が痛くない!!??」まだ完全ではないけど、あの頭痛が結構ましになっている。時間が経って治っただけなのか、コカ茶が良かったのか、それともラッキーなことに下剤じゃなく本当に頭痛の薬だったのか、それとも笛を吹いたのが良かったのか…?ともかく、効いた(何かが)!!
調子を戻した私は、寝てりゃいいのに、いてもたってもいられなくなって、再び外に出かけました。昨日よりはゆっくりと、慎重に、でも再び暗くなるまで街のあちらこちらを歩きました。そんな風にして、私の最初の2日間が過ぎたのです。


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