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タローさんの、トコトコ♪エッセイ

アーティスト・きしもとタローの、旅の話や、夢日記、想い出話など…

その9『デモとブリーフ』

2006-05-18 10:53:04 | アンデスの国…ペルー・ボリビア編
『デモとブリーフ』

ラ・パスの街は、あちらこちらに屋台が出ていて、まるで毎日が縁日のようです。朝起きるとブラッと通りに出て、教会前の広場のお目当ての屋台で買い食いをしてオバちゃんの屋台でグレープフルーツを一杯飲んで散歩を続けるのが、私の毎朝の日課になっていました。

そんなある日、教会の前に行くと、とんでもない人だかりが出来ていて、プラカードを持った人々が口々に何かを叫び、街頭で箱の上に乗って演説をしている男もいます。どうやら祭りでもないし…デモか何かでしょうか?通りは農民系の格好のオバちゃんチョリータ達で埋め尽くされており、ずっと向こうの通りまで人で一杯で、どこまでこの列は続くのかなぁ~と思ってブラブラ歩きながら眺めていると、向こうの方からものものしい軍人の群れが手にデカい催涙弾か何かを持ってワラワラとやって来るではありませんか!これって、もしかしてヤバイ状況??群集を少し離れたところからグルッと取り囲むように隊列を組み、並ぶ軍人達。その顔は…う~ん、当然かも知れないが全然笑ってない!いや、いむしろ何か怒ったような顔しとるやないの!半ばビビッて様子を伺っていると、軍人達を見て俄然やる気出して口々に何か叫び、軍人達を挑発するオッサン達!おいおい、大丈夫なのか??何か投げるようなそぶりまで見せて挑発する無謀親父もいるし…やめてくれー!何の集会か知らんが、あんまし武器持っとる連中をその場の勢いで刺激すんなぁ~!そんな、一触即発にも見える雰囲気の中を、人だかりをかき分けて白いカゲがヒョコヒョコとやって来ます。良く見たら、アイスクリーム売りです。すかさず、オバちゃん達がワラワラと群がって買ってるので、思わずつられて一個買って食べてみると…これがうまい!?いや、のん気にアイスなんか味わってる場合なのか??アイスを食べ終わったら今度は突如、ノリのいい太鼓と笛の爆音が響き渡り、振り向くとタルケアーダ(木製の笛の大合奏)の群れが登場!…なんか、脈絡わかんないけど格好いいぞ!?これは一体何のイベントなんでしょ?(いや、デモですよね)

見渡してみると、心なしかいつもより屋台も沢山出てるみたいだし、アイス売りは普段と変わらず営業に励んでいるし、軍人達は手に嫌なもの持って突っ立ってるけど…これはもうちょっと奥の方まで行って見る価値がありそうだな…そう思った私は、オバちゃんチョリータ達の間をズンズン進んで行きました。通りは本当に真っ直ぐ歩けないほどの人です。近くに大学(だったかな)があってその前まで行くと、やたら大きな人だかりが出来ていて、オッサン達が口々に何か叫んでいます。何か面白そうなので野次馬根性で近づいてみると、上のほうを見上げて泣いたり叫んだりしとるオッサンもいるし、なにやら想像以上の大騒ぎです。何があるんだろう、と思って一緒に見上げてみると…なななな、何と!!建物の一番上にデカい十字架が立ってて、ブリーフ一丁の親父が貼り付けられてるではありませんか!!??何をやっとるんだ、あの親父は!?どっからどう見てもアブナイ奴だが…いや、待てよ?確かあの姿には見覚えがある…。そうだ!昔「俺たち!ひょうきん族」に出てた、グレート義太夫やないか~っ!(注:別人)しかも、良く見たら同じようなのがもう一人おる。足元からは何かをアピールする内容が書かれた垂れ幕が下がっており、どうやら身を挺して何かを訴えているようです。私の言語知識では何が書いてあるのかわからなかったのですが…。

振り返ってみると、次から次へと人々が押し寄せ、どうやらこの大騒ぎの中心で、私は全く身動きが取れない状態になっていました。えらいとこにまぎれ込んでしまった!そして、そんなグレート義太夫(ツイン)を指差し、泣いたり叫んだり、こぶしを振り上げて怒りの言葉をぶちまける群集!それにしても、何でブリーフ一丁で…私は腰が砕けそうになりながら、周りを見渡しました。すると…私一人、浮いてる!この状況にはまれない人間が一人…!マズい…!かと言って、あの東西南北どっから見てもアブナイ親父を指差して一緒に嘆き悲しむ事も出来んし。するとその時、あからさまに悪そうな顔つきのオッサンが人だかりをかき分けて中心に躍り出て、なにやらデカい声で演説を始めました。政治家か何かでしょうか?罵声を飛ばしながら迫り来る人の群れ、手に嫌なものを持った軍人達と押し合いへし合いが続きます。そんな群衆の間でもみくちゃになりながら、一体どうなることか、と思ってふと気付くと、屋上の十字架に、さっきのグレート義太夫ズ(ツイン)がいません。いつの間に…と辺りを見回すと、人だかりが「うわあああっ!」と開けて、一際大きな歓声があがりました。そこには、あのブリーフ一丁のグレート義太夫(ラテン・バージョン)が!身ぐるみ剥がされて一昼夜さまよった後のオッサンのように、足元おぼつかなくフラフラと歩いてきます。しかも、ヨレヨレのブリーフは心なしか脱げかけです。義太夫がかすれた声で、しかし力強く何かを話すと、群衆の中からどよめきが起こり、次の瞬間、なんと!さっきの悪顔の政治家と義太夫がガッシリと抱き合い、二人の頬には熱い涙が!?湧き上がる大歓声と拍手、泣いたり叫んだり、口々に大声をあげる大観衆!至近距離(約2m)で繰り広げられる謎の感動シーン!全く状況にはまれない日本人が約一名…俺、最前列やん!?なんでここにいる??

今更逃げる事も出来ず、オッサン二人が涙で抱き合う感動シーンを眼前に、呆然と立ち尽くしながら「オッサンのブリーフ、脱げかけやし、誰かあげてやってくれ!」と、心の中で群集に叫び続ける私でした。

その8『おのれ…!』

2006-05-18 10:28:03 | アンデスの国…ペルー・ボリビア編
『おのれ…!』

ホテルから少し歩いた所に、農村の風景や農民などをモチーフにしたかわいい刺繍の作品が沢山置いてる、私のお気に入りの店がありました。ある日その店に入ると、アメリカ人らしきオバサン二人組(ちょっと小太り)がいて、店の人に無理やり英語で話しかけています。店の人は「英語は話せない」と言っているのですが、「何よ!英語も話せないの!?」「何を考えてるのよ!?」とこれまた英語で文句を言っています。それから、二人で幾つかの作品を手に取り「これを全部買ってあげるから、この額にしなさい」と言って電卓を取り出し、とんでもない安い値段をバチバチバチーンと打つのです。

「この刺繍はいっぱい時間がかかる、作るのは大変、そんな安く出来ない」…と店番の女の人はスペイン語で一生懸命説明しているのですが、「わからないわ!」「額が気に入らないの?」「本当はもっと安く出来るんでしょう?!」「どうして英語喋れないの?店員なのに」と更に二人はまくしたてます。そして相手が英語が出来ないと見るや、英語でヒソヒソと相談し始めました。「英語はわからないようね」「もうちょっとよ」「もっと強く言いましょう」…おいおい、入口に立ってる日本人が、アンタ達の英語聞いて理解してるかもしれない、なんて事も想像も出来んのか?それほどしゃべれないにしても何を言ってるかぐらいは結構わかるぞ~!…それか、全然英語わからんような顔に見えたのかな?相談が終わったオバサン達は、店の人がうんざりして困り果てているのを見ると、すかさず自分達が言い張っていた額の現金をレジにバン!と出したのです。「OK?!」と詰め寄るオバサン達に押されて、思わず「…OK…」と小さな声で答える店番の人。まさかその店員さんがOKと言うとは思っていなかったので、「ええ?!」とビックリして私がレジの脇に突っ立ってると、オバサン達は自分達でさっさと商品を袋に詰めて、「うまくやったわ」「私達は賢いわ」と讃えあって、足早に出て行きました。なななな、なんて奴らでしょう~!!内容が何となく分かりながらも、何も出来なかった自分にも腹が立ち、しばらくその店の外で呆然としてしまいました。おのれ~。

その後、ペルーでも同じようなことをする男に出くわした事があります。英語圏でない国に来てるのに、英語が世界の共通言語であるかのように「当然のように」英語で話しかけ、経済格差のカラクリも少しは知っているだろうに、現地の人が時間かけて作ったものを「どうせふっかけてるんだろう?」「儲けようったって、そうはさせないぞ」てな感じで、ゴリ押しして買い叩いていく人は一体何を考えてこの国に来ているんでしょう?ふっかけてきたり、それに対して交渉したり…そういう駆け引きみたいな事も、確かに旅の楽しみかも知れないし、実際ふっかけて来てる場合もありますが、品物をしっかり見て、順当な額は払おう…という気が最初からなくて、「強く出たほうがいい」「押し切って、安く買った方が勝ち」なんて感じで、ゲーム感覚のようにただ買い叩くのって、何だかあさましいですよね。普段自分の国で、どうでもいい事にその数十倍のお金を使っているかもしれないのに…。それに、英語が通じるかどうか尋ねてから英語で話しかけるのはいいと思うのですが、通じて当然と思い込んで英語を使ったり、その国の言語を全く勉強せずに行く、というのは、礼儀ある姿勢とは言えないですよね。挨拶とカタコトだけで充分、誠意は通じるのに。

それから違う店に入って、壁からぶら下げられた色とりどりの布を眺めていると、今度は日本人の父娘が、なんとビデオを回しながら店に入ってきました!普通自分の国で、店の中にビデオ回しながら無言で入っていって商品録画していく無礼者もいないと思うのですが、ここにいた~!唖然としていると、パパらしき人は、舐めるように店の商品を録画していきます。その様子を奥から見ていた店の人が「ビデオなんか撮ってないで、こっちに来たら?」「布を見たいなら出してあげるよ?」と話しかけました。すると、娘がそちらの方は見ずに「何か言ってるわ!」とはき捨てるように言い、パパは完全無視で撮り続けます。その時、店の中ではボリビアの音楽がかかっていたのですが、突如娘がデカイ声で「こんな音楽かけて気分盛り上げて買わそうって腹だろうけど…見え見えよねぇ~」と言い、あまりにことにビックリしてこれまた突っ立ってる私の前を、ビデオを覗きっぱなしのパパとさっさと出て行ったのです。「オウ!日本人…!」と店の人が肩をすくめて溜息をつき、それからチラリと私の方に目をやるではありませんか。思わず居心地悪くなって、私は逃げるように店を出ました。くう~っ、恥くさい~っ!!通りに出たらその父娘はもうどこかへ行って見えなくなっていました。お、お、おのれ~!

もうちょっと後の話ですが、ボリビアの空港でも、エクアドルを周ってきたらしい日本人のオジサン達の団体が、周りに日本人がほとんどいない事をいい事に、大声でエクアドルの街のことを「汚い」「貧乏」「日本はやっぱり綺麗」と口々にわめいていました。どうやら酒も入っているようでしたが…恥ずかしいなんてもんじゃありません。よく「最近の若者は…」なんて言って、若い人の無作法を嘆くオジサン・オバサン方がいますが、人の国に行き、でかい声で勝手な悪口や文句を言う、言葉わからないだろうってなもんで自分達だけで日本語で好き勝手なことを言う、自分の国では出来ないような無礼を無思慮にする、その国の言葉を全然勉強せずに行く…そういうオジサン・オバサン達をこの旅で随分見ました。以前旅行会社の人からそういう年配無礼者ツアーの話は聞いていましたが、よその国を楽しんだり、そこの人達に礼儀を尽くしたり出来ない人が、どうして旅行なんかするのかな…気が付いたら旅先で日本人と見るや、意識的に近づかないようにしてる自分がいる。全く、おんのれぇ~!