『虫…?』
いつもは道端や広場の外れにある屋台で昼御飯を食べていた私でしたが、ある日突然、「そうだ、たまにはレストラン風の所で、もうちょっとリッチなランチを楽しんでみようかな~」なんて事を思いついて、裏の通りを徘徊し、一軒のレストランを見つけたのでした。ホテルのレストランや外国人向けレストラン・もしくは本当にリッチなレストラン…というわけではない、庶民的なレストラン…というのでしょうか。
二階に上がってゆくと、リッチなのか、そうでもないのか…これまた微妙なファッションの方々が、気分的には少々ノーブルな感じで座っておられます。
ちょうどランチの時間だったので、適当に注文すると、最初にスープが出てきました。私はスープ類が大好きで、今でもどこかに旅に出かけると必ずその地域のスープを注文します。この時は何のスープかよくわからないままランチで注文しましたので、テーブルに置かれるとすぐに「何のスープかなぁ~??」とばかりに皿を覗き込みました。そして、一瞬ギョッとしたのです。何か白い糸の切れ端みたいなのが一面に浮かんでいて、これが虫というか幼虫というか…とにかく、得体の知れないものに見えたのです。「…む、虫??」そのまま皿に顔を近づけたままの姿勢で硬直していますと、ウェイターのオジサンが「何をやっとるんだ、こいつは?」というような表情で、手際よく次の皿を持って来てしまいました。その間も、私の頭の中では「これは虫か??それとも何??」と青ざめた押し問答が続きます。これはラチが開かん、と思い、思い切ってスプーンですくって汁だけを口に入れてみました。これがうまい!うまいけど、白いのは何かわからない。
その時、ふと昔…子供の頃にうちでイナゴを食べさせられた時の事を思い出しました。確か、うちの父親がビールのあてに食べたいとか言って、皆でイナゴを捕りに田んぼへ行った事があったのです。急いで作った木綿の手ぬぐい袋いっぱいにイナゴを捕まえて、上機嫌になった私は、その袋いっぱいに詰まったイナゴを見ながら、これからどうするのかなぁ~と呑気に構えていたのですが、家に帰ると母親が大鍋に湯を沸かし、いきなり「見ときやぁ~」と言うと、生きたままのイナゴをドバッ!とその鍋に放り込みました。一瞬のうちに真っ赤になってゆくイナゴ達!茹で上がると丁寧にとげのある足を抜き取られ、甘辛く佃煮にされちゃいました。その後、小鉢に盛付けられたり冷まされて瓶詰めされていく様を、まるで写真のスライド・ショーを見てるような…時間軸を失くしたような気分で私は見ていたのでした。これって一種のトラウマ?何で、こんな時にあの光景がよみがえるかなぁ…と、思ってたら今度はオーストラリアの先住民の人達がカブトムシの幼虫みたいなのをおいしそうに食べてた映像や、ジャングルの中で木の幹を斧で割り、中から出てきた虫の幼虫を葉っぱにくるんで火にかけて蒸して食べてる絵を本で読んだのとか…何かいろいろ出てきた!
学生の頃、D島の地下のうどん屋で、食べてた饂飩のどんぶりからデッカイ羽の虫が出てきて(羽はほとんど無くなってた…ということは僕の口の中に入ったのかな?)、文句を言ったら出てきた店員がその虫見て「きゃ~っ!!」と叫び、急いで新しいの持って来てくれたのはいいけど、食べ終わった後で「これは当然タダになるのかな」とか思ってレジに行ったら、なんと半額請求された!「なんで!?」と聞くと「…だって半分食べられたから…」などとほざきやがったあの店員の顔!虫のダシで羽ごと客に食わせながら平然と半額請求してきよって~!あの顔が何でこんな時に出てくるかなぁ…(ちなみにそのK屋は今でも営業しています)。
とにかく、目の前に並んだ二つの皿を眺めながら、走馬灯のごとく脳裏に蘇る記憶の数々を打ち消しつつ「う~ん、もし虫だとして、これは重要なタンパク源かも知れんではないか!」などと考えながら、決心つくのを待ってると、後から出てきた皿にのった肉団子から、今度は謎の黒い毛が出てるのを発見!「これは…間違うことなき毛であるが…動物の毛か、それとも料理人の毛か??」目の前の第一ハードルで頭一杯になっていたのに、いきなりその向こうにもハードルがあったので、しばし愕然とし、思わず周りの人々をぐるりと見まわしました。すると、何故かハイソな雰囲気でナイフとフォークを上品に使い、食をすすめている皆さん!「う~ん、これは動じてる場合じゃないぞ。まだ次のハードルが控えてるかも知れん…」そう思った私は、意を決して、まずは肉団子から出た毛をつまんで引っ張ってみることにしました。「うりゃっ!」…すると、それが結構長いではありませんか!出てきた毛をテーブルの白いクロスの上に置き、私は分析を始めました。う~ん、わからん。動物といえば動物の毛にも見えるが、案外、野性的な料理人の毛かも知れん。テーブルの上に置いた毛を凝視する私を、ウェイターのオジサンが怪しんで横目で見ています。う~ん、これ以上不審な行動は出来ん。私は、覚悟を決めて両方食べる事にしました。すると…「!?うまい!!」そう、おいしい。どうなってるんだ??
結局、肉団子は何の肉団子かわからずじまい、謎の毛は動物の毛なのか野性的な料理人の毛なのかもわからずじまいでしたが、あの白い糸の切れ端のようなものは、かの有名な「キヌア」だったのです。スーパー穀物と言われるキヌアは、この頃はまだ日本国内ではほとんど知られていませんでした。煮込むと、中心の部分が透明のタピオカの粒のようになり、胚芽部分?か何か端っこの繊維質が分離してスープに漂うのです。これが虫に見えたんですよねぇ。それ以来、私はすっかりキヌアにはまってしまい、日本に帰ってもキヌアを入手してスープを作るようになったのです。ボリビアではキヌア歯磨きを見つけて、毎朝愛用していました。これも結構、おいしい~!?
いつもは道端や広場の外れにある屋台で昼御飯を食べていた私でしたが、ある日突然、「そうだ、たまにはレストラン風の所で、もうちょっとリッチなランチを楽しんでみようかな~」なんて事を思いついて、裏の通りを徘徊し、一軒のレストランを見つけたのでした。ホテルのレストランや外国人向けレストラン・もしくは本当にリッチなレストラン…というわけではない、庶民的なレストラン…というのでしょうか。
二階に上がってゆくと、リッチなのか、そうでもないのか…これまた微妙なファッションの方々が、気分的には少々ノーブルな感じで座っておられます。
ちょうどランチの時間だったので、適当に注文すると、最初にスープが出てきました。私はスープ類が大好きで、今でもどこかに旅に出かけると必ずその地域のスープを注文します。この時は何のスープかよくわからないままランチで注文しましたので、テーブルに置かれるとすぐに「何のスープかなぁ~??」とばかりに皿を覗き込みました。そして、一瞬ギョッとしたのです。何か白い糸の切れ端みたいなのが一面に浮かんでいて、これが虫というか幼虫というか…とにかく、得体の知れないものに見えたのです。「…む、虫??」そのまま皿に顔を近づけたままの姿勢で硬直していますと、ウェイターのオジサンが「何をやっとるんだ、こいつは?」というような表情で、手際よく次の皿を持って来てしまいました。その間も、私の頭の中では「これは虫か??それとも何??」と青ざめた押し問答が続きます。これはラチが開かん、と思い、思い切ってスプーンですくって汁だけを口に入れてみました。これがうまい!うまいけど、白いのは何かわからない。
その時、ふと昔…子供の頃にうちでイナゴを食べさせられた時の事を思い出しました。確か、うちの父親がビールのあてに食べたいとか言って、皆でイナゴを捕りに田んぼへ行った事があったのです。急いで作った木綿の手ぬぐい袋いっぱいにイナゴを捕まえて、上機嫌になった私は、その袋いっぱいに詰まったイナゴを見ながら、これからどうするのかなぁ~と呑気に構えていたのですが、家に帰ると母親が大鍋に湯を沸かし、いきなり「見ときやぁ~」と言うと、生きたままのイナゴをドバッ!とその鍋に放り込みました。一瞬のうちに真っ赤になってゆくイナゴ達!茹で上がると丁寧にとげのある足を抜き取られ、甘辛く佃煮にされちゃいました。その後、小鉢に盛付けられたり冷まされて瓶詰めされていく様を、まるで写真のスライド・ショーを見てるような…時間軸を失くしたような気分で私は見ていたのでした。これって一種のトラウマ?何で、こんな時にあの光景がよみがえるかなぁ…と、思ってたら今度はオーストラリアの先住民の人達がカブトムシの幼虫みたいなのをおいしそうに食べてた映像や、ジャングルの中で木の幹を斧で割り、中から出てきた虫の幼虫を葉っぱにくるんで火にかけて蒸して食べてる絵を本で読んだのとか…何かいろいろ出てきた!
学生の頃、D島の地下のうどん屋で、食べてた饂飩のどんぶりからデッカイ羽の虫が出てきて(羽はほとんど無くなってた…ということは僕の口の中に入ったのかな?)、文句を言ったら出てきた店員がその虫見て「きゃ~っ!!」と叫び、急いで新しいの持って来てくれたのはいいけど、食べ終わった後で「これは当然タダになるのかな」とか思ってレジに行ったら、なんと半額請求された!「なんで!?」と聞くと「…だって半分食べられたから…」などとほざきやがったあの店員の顔!虫のダシで羽ごと客に食わせながら平然と半額請求してきよって~!あの顔が何でこんな時に出てくるかなぁ…(ちなみにそのK屋は今でも営業しています)。
とにかく、目の前に並んだ二つの皿を眺めながら、走馬灯のごとく脳裏に蘇る記憶の数々を打ち消しつつ「う~ん、もし虫だとして、これは重要なタンパク源かも知れんではないか!」などと考えながら、決心つくのを待ってると、後から出てきた皿にのった肉団子から、今度は謎の黒い毛が出てるのを発見!「これは…間違うことなき毛であるが…動物の毛か、それとも料理人の毛か??」目の前の第一ハードルで頭一杯になっていたのに、いきなりその向こうにもハードルがあったので、しばし愕然とし、思わず周りの人々をぐるりと見まわしました。すると、何故かハイソな雰囲気でナイフとフォークを上品に使い、食をすすめている皆さん!「う~ん、これは動じてる場合じゃないぞ。まだ次のハードルが控えてるかも知れん…」そう思った私は、意を決して、まずは肉団子から出た毛をつまんで引っ張ってみることにしました。「うりゃっ!」…すると、それが結構長いではありませんか!出てきた毛をテーブルの白いクロスの上に置き、私は分析を始めました。う~ん、わからん。動物といえば動物の毛にも見えるが、案外、野性的な料理人の毛かも知れん。テーブルの上に置いた毛を凝視する私を、ウェイターのオジサンが怪しんで横目で見ています。う~ん、これ以上不審な行動は出来ん。私は、覚悟を決めて両方食べる事にしました。すると…「!?うまい!!」そう、おいしい。どうなってるんだ??
結局、肉団子は何の肉団子かわからずじまい、謎の毛は動物の毛なのか野性的な料理人の毛なのかもわからずじまいでしたが、あの白い糸の切れ端のようなものは、かの有名な「キヌア」だったのです。スーパー穀物と言われるキヌアは、この頃はまだ日本国内ではほとんど知られていませんでした。煮込むと、中心の部分が透明のタピオカの粒のようになり、胚芽部分?か何か端っこの繊維質が分離してスープに漂うのです。これが虫に見えたんですよねぇ。それ以来、私はすっかりキヌアにはまってしまい、日本に帰ってもキヌアを入手してスープを作るようになったのです。ボリビアではキヌア歯磨きを見つけて、毎朝愛用していました。これも結構、おいしい~!?