缶チューハイの缶で三角形が組み合表わされた柄のついている「ダイヤカット缶」とよばれるアルミ缶があります。
ダイヤカット缶の胴の部分には、トラス(三角形の骨格構造)を立体的に組み合わせた、切子細工のような独特の形の加工がほどこされています。
そしてふたを開けると、胴にダイヤの形状がくっきりと現れます。
ダイヤカット缶に用いられている形状は「PCCPシェル」(Pseudo-Cylindrical Concave Polyhedral Shell)とよばれ、宇宙工学の研究から生まれたものです。
1960年代にNASAのラングレー研究所で日本人研究者(三浦公亮氏)が行った、円筒形の構造体に力が加わって生じる変形パターンの研究があります。
そのアイディアが、20年以上の時を経て缶のデザインに応用されました。
なぜこのような柄がついているかというと、実はロケットや航空機の設計では、強度を保ちつつ極限まで軽量化することが求められます。同様に、強度を損なわずに軽量かつ最薄の缶の考案に迫られた飲料缶の開発者が、試行錯誤の末にたどり着いたのが、このPCCPシェル構造でした。ダイヤカット缶は強度を損なうことなく従来の3ピース缶に比べて30パーセントも軽量化することに成功したといわれます。
このようにロケットや航空機開発の技術が思いがけない身近なものに使われていたりします。
普段なにげなく使っている簡単なものにも、試行錯誤は繰り返されているのですね。