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1600Kmバイクひとり旅/2(新潟県長岡市~秋田県由利本荘市)

2021年07月31日 | 焼き芋みたいなショートエッセイ

焼き芋みたいな
エッセイ・シリーズ  (49)

「1600Kmバイクひとり旅/2(新潟県長岡市~秋田県由利本荘市) 



【バイク旅2日目】
2016.7.27 
AM5:00
新潟県長岡市のホテルを出発。
新潟全域は今日も大雨の予報だ。
早朝の長岡市街を走り抜けて新潟バイパスへ入った。
入口の電光掲示板の「大雨洪水雷警報発令中」の文字にやや緊張が走る。

「うーん。やっぱり今日も雨との戦いになるかあ。事故らないようにしなきゃな」

しばらくはどんよりと暗い、鈍く光る雲が空を覆っているだけだったが、
やがてそれはバイパスの路面を激しく叩きつける豪雨に変わった。

まだ早朝なのに、バイパスが突き抜ける新潟盆地の四方八方に雷鳴が鳴り響く。
真っ向からぶつかって来る雨に打たれながら走る前方に、時おり稲光がピカッ!と光る。

「うっひゃ!パニック映画に出て来るような嵐のバイパスじゃないかい!」

対向車線を走るトラックの激しい水しぶきが、丸腰のPS250目掛けて頻繁に覆い被さって来る。
 出勤時間帯だからか、周りの車はさほどスピードを落とすことなく飛ばして行く。

「えっ?もう少しスピード落としても良いんじゃないの」

そう思ったが、地元の人にとっては、この激しい雷雨のバイパスも手慣れたものらしい。
仕方がないので僕もクルマの流れに合わせ、注意深く走り続けたが正直怖かったなあ。
それにしても、新潟のバイパスは噂通りよく整備されていて、路面もしっかりしているし、
片側4車線の贅沢なほどの幅広は、天気が良ければ最高に気持ちが良かっただろうな。


雷雨の中を走りながらそんな事を思いつつも、やはり気掛かりなのは
ハンドルに外付けしたナビの事だった。

「この豪雨に耐えられるだろうかな・・」

バイクショップの整備士S君がしっかり防水対策をしてくれたが、この大雨だ。
電源部分が少しでも濡れればヒューズが飛ぶ。そんな事を心配しながら、
まるで豪雨の中の激しいレースの様相だった新潟バイパスをようやくのこと抜け出し、
ホッとしながら走っていると、さっきまでとは打って変わって空いた日本海沿いの街道に出た。

    新潟県・荒井浜辺り

  
    クルマの行き来も少なく、海岸線沿いには風車が何基も続いてい

     ボート・スクールかな?


AM8:30 
そして、新潟県境「葡萄トンネル」で思わぬアクシデントが待っていた。
まさかのスリップ転倒事故だ。

                                                                 
実はこのトンネルの手前1Kmくらいから、道路のセンターライン辺りに油のような物が
延々と続いている事に気付き、僕はかなり注意して走って来ていた。
(それでも途中、リア・タイアが2回ほど軽くスリップしたよ。)


   おそらくオイル漏れの跡だ 

そしてトンネルに入ってすぐに、
油が左車線にかなり拡散している事にハッとした。


  

こりゃマズイと思い、慎重に路肩側に逃げようとした途端、
バイクは一瞬でスリップ、僕はハンドルを握ったまま横転、
バイクと共に時計と反対周りに一回りスピンして壁の手前で止まった。
後続のトラックが慌てて急ブレーキをかけ、僕の2メートルほど手前で止まった。

トラック・ドライバーが「怪我ないかい?」と言いながら降りてきて、
バイクを起こすのに手を貸してくれた。
僕は礼を言い、
バイクを路肩に移動した後、トラックに再度一礼し見送った。

そしてバイクを押しながらトンネル出口へ歩き始めた時、
一台のバイクが出口の向こう脇に倒れているのが見えた。

「やっぱり!この油で滑ったんだな」すぐにそう思った。

倒れたバイクの傍で30代前半くらいの男性がぺたんと座っていた。
「大丈夫ですか?」と声を掛けると、男性は大腿骨の辺りを手で押さえながら
「かなり打っちゃったみたいで・・」と。

流血などはしていない様だったが、僕は男性の腕に手を回して
「立てるかい?」と訊き、ゆっくりと立ち上がらせてみた。

男性はやや痛そうな表情をしながらも、何とか立ち上がったが放心状態だった。

と、その時だった。

一台のバイクがトンネル内を走って来る音がした途端、ガシャーン!!
そのバイクも転倒してしまったのだ。


僕はトンネルへ走って行きバイクを起こすのを手伝った。
年配の男性ライダーだったが怪我はしていない様だった。
「滑っちゃったよ」
男性は僕にそう言いながら、バイクを押しトンネルを出た。

通行量の少ない場所だったが、僕は他のライダーが来ても制止出来るように
トンネル入り口側に立ったまま、
警察に電話し状況を説明し始めた。

するとその時、パトカーが駆けつけて来た。
さっきのトラック・ドライバーが近くの交番に寄って知らせてくれていたらしい。

   

警察官は現場で道路上に続く「油」を確認。
その後、道路管理の作業員4,5名が来て油の筋の上に砂を撒き始めた。
一人の作業員が「向こう2,3Km続いているなぁ」と言うのが聞こえた。


                    
    手際良く砂を撒き始めた

そうこうしている間に、出口で転倒していた30代前半のライダーが救急車で搬送されて行った。
バイクはエンジンが掛からないと言っていた。きっとツーリングの途中だっただろうに。

    
    この黄色ジャケットのライダーは、この後病院へ搬送されて行ったが、
    大腿骨あたりをかなり痛めた様子だった。
    バイクは裸だから、こうした事故は身体ダメージが大きいのだ。



そんな中で、僕は出口脇に止めたままにしていたHONDA PS250のエンジンを
恐る恐る掛けてみた。

「掛かってくれよ」

天に祈る様な気持でエンジン・キーを回すと、最初はブルルルル・・ブルルルル・・と、
か弱い回転音が続いた後、
いきなり目を覚ましたかのように
BURUrururu-!!! と勢いよく回り始めた。

「よっし!掛かった!」
ナビ・システムも無事で、エンジンと共に自動的に起動した。
「他は大丈夫かな?」

見ると、右バック・ミラーの一部が破損し、リア・ブレーキレバーがぐにゃりと曲がっている。
しかし、バックミラーの鏡は割れていないので何とかなるし、ぐにゃりと曲がってしまった
ブレーキ・レバーも、
これまた不思議と何とか握れるくらいの範囲で収まっていた。

他は大丈夫そうだ。自分の身体も特に痛みはない。
ジャンバーの下の右肘がややヒリヒリするくらいで腕は動く。
「大丈夫だな。旅は続けられそうだ。」ほっとした。運が良かったと思った。


年配の男性ライダーAさんは御年62歳だそうで、名古屋から来ていて、
これから北海道稚内まで行く予定だと話してくれた。

が、バイクがやられた様だ。エンジンは掛かるが、ギアを入れると止まってしまう。
(クラッチ系統かな?)保険会社に電話してレッカー待ちをする事になった。

 
そうこうしていると、さっきの柔和そうな警察官が近づいて来て、
「レッカーはすぐ来てくれるんですかあ?」と。
Aさんが「1時間くらいで来てくれるそうです」と答えると、そのおまわりさんが言った。

「実はここ、長居しない方が良いです。
 最近、親子連れの熊が頻繁に出没して、
ニュースでも出たんですが、
 まさにこの場所なんですよ。長居しない方がいいです!」
と。

それを聞いたAさん、慌ててまた保険会社に電話を掛け、
「出来るだけ早く来てもらえますか!
 ここ、熊が出る場所らしいんで早くお願いします!」と。

(むはは。これ本当の話です。)

僕はと言えば、おまわりさんに教えて貰った近くの自動車整備工場に電話を掛け、
バックミラーとブレーキ・レバーを修理して貰う事になった。

「それじゃ、Aさん、申し訳ありませんがお先に失礼します!
 北海道のどこかで会えたら良いですね!」

と、僕は別れの挨拶をした。Aさんは穏やかな笑顔をみせて、
「バイク何とか直して後を追いますよー。向こうで会いましょう!」と。
僕はそんなAさんと笑顔で握手を交わした後、自動車整備工場へと向かった。

   
 Aさん。じつにパワフルな60代ライダーでした。
 (あの後、無事にバイクが復活して、きっと北海道へ渡れただろう。)



そして我がPS250は、
トンネルから2Kmほど先の、親子で営んでいる自動車修理工場へ。


  


   
バックミラーは応急処置として自動車修理用ボンド(?)で固定


  
ブレーキ・レバーは、何とか握れるし、
これ以上無理に戻すと折れてしまうという事でこのまま乗る事に。
父親の方が「ナンカおしゃれで良いんじゃない」と笑っていた。(むはは、そんな。)


修理をして貰っている間、北海道の旭川まで行くと話したら、息子さんの方がびっくりして
「旭川!?旭川は毎年行ってますよ!」と。
実は息子さんはスノー・モービル選手で、毎年2月に旭川で行われる大会に
毎回参加しているのだとか。
父親もその時はいつも同行して行くのだという。

そこから一気にその親子と話が弾んだ。
最初は朴とつとした感じの無口な親子だなと思っていたが、気心知れると実に気さくな親子で、
修理完了後も、出して頂いたお茶など飲みながらしばらく談笑した。

やがて時計を見ると、
ありゃりゃっ!もう昼ではないの!

あの葡萄トンネルで1時間半近くナンダカンダしていたのか・・。

「それじゃ、そろそろ出発しますわ!」
僕は礼を言い、応急修理されたバイクの調子を確かめながら慎重に発進させた。
初めて訪れる新潟で出会った整備工場の親子は、
二人きちんと工場の前に並んで、いつまでも手を振り見送ってくれていた。
(ホント、素敵な親子だったなぁ。「プロフェッショナル」とかに出て来そうな
 親子2代の修理工場だった。お世話になりました!。)



AM11:30 

んじゃ、旅再開!

 
 
バイクは応急処置で何とか走れそうだし、ワタシの右肘の怪我は、
擦りむいたくらいで、まぁ大丈夫でした。


   
これだけで済んで良かったわ。(キモチワルイですかぁ?・・気持ち悪いヨ)



 新潟県・羽州浜街道にてひと休み。

 「しっかし新潟県は長い!まーだ抜けません」 by S.Y


PM1:30
ようやくのこと、縦長の新潟県を抜けて山形県に入る。
初めて訪れる山形県の日本海沿い海岸線をしばらく走っていると、

 何やら向こうに、巨大な岩が見えて来た



映画「未知との遭遇」に出て来た山みたいだわね



 ここ「立岩の暮坪」と言うそうです





 
   なんだか異様な存在感があったなあ。



 バイクを停めて、しばし日本海を眺める

   
                     山形県「立岩の暮坪」


PM4:00 
その山形県を一気に駆け抜け、秋田県に突入。
その間、写真は一切撮らずじまい。
暗くなる前に秋田の宿泊ホテルに着きたかったので、

撮る暇も惜しみ、只ひたすら走り続けたのでした。いやはや長いルートだった。


 今日の目的地はもうすぐだ。ホッとして秋田街道のコンビニで休憩。

 ん?

 むはは。

 
秋田の猫、じつに気持ち良さそうに寝てたので、
「わっ!」っと驚かせてやりましたぜよ。(うそです)



PM6:00 
ようやくのこと秋田県入り口、
由利本荘市の「本荘グランドホテル」に到着です。


 
この日は思わぬ事故なぞあって、かなりタイム・ロスしたけど・・

 
初めて訪れた秋田の夜です。無事でよかった!。風呂に入って即爆睡。


<この日の走行ルート>
新潟県長岡市→秋田県由利本荘市:(走行距離315Km)



<次回>は秋田県由利本荘市から大館市へ。何て旅だっ!は続く。




       星空Cafe、それじゃまた。
      皆さん、お元気で!


    
                









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2 コメント

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Unknown (山さま)
2021-07-31 09:24:00
「イージーライダー」のラストみたいにならずに良かったです。
山さまへ (S.Y)
2021-07-31 21:14:37
従兄弟の兄ちゃんの部屋に、ばかでかいイージーライダーのポスターが飾ってあったのを思い出したよ。(^^)

あそこで円陣、あちがった、エンジンが掛からなかったら、旅は2日目で終わるところだった。そうしたら山さまとの寿司も無かったわけだ。汗

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