焼き芋みたいな
エッセイ・シリーズ (50)
「Hさんの丁度いい暮らし」
山梨県の片田舎で、昨年から小屋暮らしを始めたHさんに会いに行った。
Hさんは80万円ほどで小さな土地を買い(ほとんど衝動買いに近かったらしい)、
驚いたことに半年掛かりで手造りの小屋を自力で建てた。
「いつでもイイからさ、よかったら今度遊びにおいでよ。
何泊でも、好きなだけ居て貰って構わないよ」
Hさんにそう誘われ、さっそく小屋を訪ねた時、僕は思わず「おおっ!」と声をあげた。
想像していた以上に本格的な造りの小屋だった。
「どう?なかなかイイっしょ。知り合いの大工から廃材を大量に譲って貰えてさ。
20万円くらいで済んだわ、総工費」
「へぇー」
「で、こっちがリビング」
案内された部屋は、南側が全面窓ガラス仕様の8畳ほどの板張りの床に、
茶色のソファベッドと薪ストーブ、
Hさんが「ボクの事務所」と笑った16インチのMacBook Proを載せたテーブルと、
小さな本棚があるだけのすっきりとした空間だった。
「ほとんどここで過ごすよ。仕事の合間に本を読んだり音楽聴いたり。窓から森の鳥をぼーっと観察したり。
コーヒー沸かしたり、昼寝したり。ナンだかここ、丁度いいんだわ」
「いいですね」
エッセイ・シリーズ (50)
「Hさんの丁度いい暮らし」
山梨県の片田舎で、昨年から小屋暮らしを始めたHさんに会いに行った。
Hさんは80万円ほどで小さな土地を買い(ほとんど衝動買いに近かったらしい)、
驚いたことに半年掛かりで手造りの小屋を自力で建てた。
「いつでもイイからさ、よかったら今度遊びにおいでよ。
何泊でも、好きなだけ居て貰って構わないよ」
Hさんにそう誘われ、さっそく小屋を訪ねた時、僕は思わず「おおっ!」と声をあげた。
想像していた以上に本格的な造りの小屋だった。
「どう?なかなかイイっしょ。知り合いの大工から廃材を大量に譲って貰えてさ。
20万円くらいで済んだわ、総工費」
「へぇー」
「で、こっちがリビング」
案内された部屋は、南側が全面窓ガラス仕様の8畳ほどの板張りの床に、
茶色のソファベッドと薪ストーブ、
Hさんが「ボクの事務所」と笑った16インチのMacBook Proを載せたテーブルと、
小さな本棚があるだけのすっきりとした空間だった。
「ほとんどここで過ごすよ。仕事の合間に本を読んだり音楽聴いたり。窓から森の鳥をぼーっと観察したり。
コーヒー沸かしたり、昼寝したり。ナンだかここ、丁度いいんだわ」
「いいですね」
「前に住んでたマンションよりずっと良いよ」
Hさんは嬉しそうにそう言うと、今度は僕を小屋の裏に連れて行った。
「どう?ヒノキ風呂」
「おおっ!遂にやりましたか!」
「やったやった。遂にやりましたか!なのよ!」
Hさんが以前よく話していた長年の夢、ヒノキ風呂がそこにあった。
「今夜ゆっくり浸かるといいよ。ほらあれ、薪、薪」
裏に大量に積んである薪を、Hさんはまた誇らしげに指差した。
「昨日たっぷり割っておいたからね」
一時、仕事のストレスが溜まり体調を崩したHさんは、
ここに移り住んで以来、少しずつ元気を取り戻しているようだった。
「いや、でもね、ここはここで結構大変なんだよね、実際暮らすとさ。
村みたいなもんだから、近所付き合いには結構気をつかうよ。
何もかも理想的な生活環境なんて、そんなん、あるわけないしね」
「ですよね」
そりゃそうだと、僕も深く頷いた。
その夜、小屋の庭でHさんと久しぶりに焚き火を囲み飲んだ。
「そう言えばさ、あの歌。あれ、やっぱり良いんだよねえ」
突然、そんな話をHさんが切り出して来た。
「あ、あれ。Hさん、覚えてたんだ、まだ?」
「覚えてるさ」
「なんだかんだと懐かしいなあ。うんうん」
「最近さ、ここで一人で毎晩聴いてるんだよ。丁度いいんだわ、あの歌」
変わってないなあ、Hさんの口癖の「丁度いい」。
人には、その人に「丁度良い」というものがあって、それが一番快適なのだというHさん。
丁度いい服装や、丁度いい仕事。丁度いい趣味や、丁度いい行動範囲。
それと、丁度いい暮らし。
ほろ酔い気味のHさんが、また独り言のように呟いた。
「丁度良いんだよなあ、ここ」
星空Cafe、それじゃまた。
皆さん、お元気で!
Hさんは嬉しそうにそう言うと、今度は僕を小屋の裏に連れて行った。
「どう?ヒノキ風呂」
「おおっ!遂にやりましたか!」
「やったやった。遂にやりましたか!なのよ!」
Hさんが以前よく話していた長年の夢、ヒノキ風呂がそこにあった。
「今夜ゆっくり浸かるといいよ。ほらあれ、薪、薪」
裏に大量に積んである薪を、Hさんはまた誇らしげに指差した。
「昨日たっぷり割っておいたからね」
一時、仕事のストレスが溜まり体調を崩したHさんは、
ここに移り住んで以来、少しずつ元気を取り戻しているようだった。
「いや、でもね、ここはここで結構大変なんだよね、実際暮らすとさ。
村みたいなもんだから、近所付き合いには結構気をつかうよ。
何もかも理想的な生活環境なんて、そんなん、あるわけないしね」
「ですよね」
そりゃそうだと、僕も深く頷いた。
その夜、小屋の庭でHさんと久しぶりに焚き火を囲み飲んだ。
「そう言えばさ、あの歌。あれ、やっぱり良いんだよねえ」
突然、そんな話をHさんが切り出して来た。
「あ、あれ。Hさん、覚えてたんだ、まだ?」
「覚えてるさ」
「なんだかんだと懐かしいなあ。うんうん」
「最近さ、ここで一人で毎晩聴いてるんだよ。丁度いいんだわ、あの歌」
変わってないなあ、Hさんの口癖の「丁度いい」。
人には、その人に「丁度良い」というものがあって、それが一番快適なのだというHさん。
丁度いい服装や、丁度いい仕事。丁度いい趣味や、丁度いい行動範囲。
それと、丁度いい暮らし。
ほろ酔い気味のHさんが、また独り言のように呟いた。
「丁度良いんだよなあ、ここ」
星空Cafe、それじゃまた。
皆さん、お元気で!
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