星空Cafe

//satoshi.y

Nの流れ星

2021年02月07日 | 焼き芋みたいなショートエッセイ


      焼き芋みたいな
      エッセイ・シリーズ  (29)

      『Nの流れ星 』



            高校時代のこと。
         バスケの部活の帰り道、メンバー3人で流れ星を見た。
         北海道の広大な夜空をスーっと長い曲線を描くように
         山のスキー場の方へ落ちて行った。


         突然、Nが叫んだ。


         「やった!俺いま、願い事言った!」


         あまりにすっとんきょうなNの甲高い声に、
         僕らは可笑しくて大笑いした。


         「ええっ!ウっソだろー?」


         「ホントだあ!願い事言ったっしょー!」


         「だってさ、一瞬だったよなぁ」
         「何て祈ったんだ?」


         僕らのからかい半分の問いかけに、
         Nは急に真面目な顔になってこう言った。


         「修学旅行に行けますようにって言ったんだ」

         大笑いしていた僕らは皆黙り込んだ。


         Nの家が経済的に困窮しているのは僕らも知っていた。

         町でも名の知れたNの親父さんの会社が倒産して間もない頃だった。

         いつも明るく陽気で、男気があって、
         人を笑わせるのが好きなNだった。

         「修学旅行に行けますようにって言ったんだ」

         あの時のNの、初めてみせた悲しそうで悔しそうな顔。
         僕らにはどうにもならない事だった。



         その半年後の修学旅行。


         幸い、僕と同じ班にいつものようにゲラゲラ笑いおどけるNがいた。
         京都~奈良~東京と3日間、

         先生から「お前らいい加減静かにしろ!」とよく注意されながらも、
         僕らは朝から晩まで思いきり楽しく過ごした。

         「Nの流れ星」

         あの時見た流星を、僕らは今もそう呼んでいる。

         「ホントだあ!願い事言ったっしょー!

         Nの願いは、ちゃんと間に合ったんだ。






               星空Cafe、それじゃまた。
                  皆さん、お元気で!


              
               
               












  



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (りり)
2021-02-07 01:05:52
毎日素敵なエッセイが続いていますね~
どれをとっても じんわりとします
夜空から降って来る☆のようですよ~
毎日そう思っていました。

今日のNの流れ星は画像と共にピッタリ 星空カフェ
です~
返信する
りりさんへ (S.Y)
2021-02-07 01:27:03
もう長い事、こんなコロナ禍の状況が続いている中で、
僕に何が出来るだろうと考えました。
皆さんの少しの癒しになってくれたらと思い、拙いのは承知で書いています。
読んでくれたひとに優しい星が降りそそぐことを願いながら。
だって、それが僕の、星の子としての使命ですから。(むはは。星の子って!・爆)

りりさん、ありがとうございます!。(^^)
返信する

コメントを投稿