やっつけ仕事

EverQuest2に登場する"本"を勝手に集めた場所。一部日記有り。08/06/20更新終了。管理は続行

大変動の終わり

2006年09月24日 | EQ2 本
■ 大変動の終わり
これは“大変動”が終わった理由が書かれた話である。
別の理由をあげる者も存在するが、信じる心を持つ者にとって、答えは1つしかない。

彼女の父は海路を使ってフリーポートへ旅したあと、危険な陸路を使ってケイノスへ行った。
「俺たちはフリーポートの奴らとは違うんだ」Daneiの父はことあるごとにそう言っていた。
Daneiは「ケイノスの人とも違うけど」と思った。
彼女の父はフェア・ダルの射手だった。
彼女が一度も会ったことのない母は、ケイノスのヒューマンだった。
Daneiたちはずっとフェア・ダルと共に暮らしてきたが、今はケイノスへと向かっているのだ。

「私たち、どこに住むの?」Daneiはもう一度聞いた。
彼女が背負った長い棒が、地面をひきずられながら、砂ぼこりや小さな石をはね上げていった。
「Tunare様が導いてくださるところに住むんだ」父は答えた。
Tunareはどうやら街へと導いているらしい。
大地震が続いていた日も含め、今まではずっと壁の外に住んできた。
地震が起きるたびに地面が自分もろとも海に飲み込まれてしまうのではないかと怯えていた。

街は再建中だった。
当然といえば当然だ。
Daneiの父はかつて射手だったが、街に着いてからは他のエルフやヒューマン、バーバリアンたちと一緒にドワーフ風の建物の建設を手伝った。
Daneiの母は姿を消してから一度も現れなかった。
彼女の家族がどこに行ったのか知る者はいなかった。
Daneiの一日は長く退屈なものだった。
地面が唸りを上げると、Daneiは巨大なオーク材のテーブルの下に潜り、父親が戻ってくるまでじっと待っていた。

Daneiは近所の他の子供たちと友達になった。
ある子供はハーフエルフ、ある子供はフェア・ダルだった。
皆、石でできた道と建物を好きになれなかったため、小さな中庭にあるほこりまみれの木に登って遊んでいた。
「この木は枯れてきているんだ」フェア・ダルの1人が囁いた。
「Tunareは雨を降らせるようKaranaに話をしないとだめだね」それを聞いたDaneiは「TunareとKaranaが話なんてできるわけないでしょ。
2人とももういなくなったのよ」Daneiは笑って言った。
しかしその少年は意見を曲げなかった。
彼の名はGenoaといった。

Genoaは、神々が世界を歩いていた時代の話をするのが大好きだった。
Daneiは彼の話をすべて信じていたわけではなかったが、楽しく聞いていた。
地面が揺れたときも一緒に身を隠した。
父がいなくてももう怖くはなかった。
地震が収まると2人で手をつないで飛び出し、どちらが先に地震の跡を見つけられるか競った。

「私たちの木が!」大きい地震のあと、Daneiは中庭に走っていった。
木は倒れ、根の半分は空に向かって飛び出し、枝は伸びをする猫のように小石の上に横になっていた。
「僕たちの木が」Genoaは幹を触りながら言った。
2人はその場に立ちつくした。
Daneiもとても悲しかったが、Genoaほどのショックは受けていなかった。
彼はそのゴツゴツとした木を、まるで珍しい花であるかのように優しく撫でていた。

Genoaの袖を引っ張りながらDaneiは言った。
「地震を止めるようにTunareにお願いしようよ」Genoaは「Tunareがいるなんて信じてないくせに。
馬鹿にしないでくれよ」と言った。
Daneiは首を横に振って言った。
「信じてないとは言ってないよ。
もし願いが通じたら、Tunareがいるって証拠になるじゃない?」Genoaは多少納得したものの、ためらっていた。
Daneiは挑発するように言った。
「Tunareを信じてないんでしょ? はっきり言いなさいよ」それから2人のケンカが始まった。
大人2人がかりで止めなければいけないほどの激しいものだった。

「Genoa、ごめん」Daneiは言った。
Genoaの表情を見て、本当に悪いことをしたと思った。
彼からTunareを取り上げるつもりはなかった。
GenoaはDaneiが差し出した手を払って、走って家に帰っていった。
Daneiは埃まみれの道に立ちつくしながら、彼の後ろ姿を見ていた。
涙が込み上げてきた。
そのときの気持ちは、「Tunareがいない」と感じたGenoaの気持ちと同じくらい悲しいものだった。
Daneiは、Tunareがまだ見守ってくれていることをGenoaに証明しなければならないと思った。

その夜、Daneiはフェイドワーの木でできた古いカップを取り出した。
このカップがこれから行う儀式に一番適していると考えたのだ。
倒れた木の側に立ち、Daneiは囁いた。
"Tunare、我々の母よ、地震を沈めるようお願いします。
そしてGenoaと私が仲直りできますように。
でもどちらかと言えば、地震のほうをよろしくおねがいします」そして水をゆっくりと根に掛け、カップをしまった。

その夜、地震は一度も起きなかった。
次の日、Daneiは家から飛び出ると走って木の場所へ向かった。
なんと木はまっすぐ元通りに立っていた。
DaneiはGenoaの姿を見つけ、彼のほうへ走っていった。
Genoaは「昨日君が祈っているところを見たよ。
……Tunareに声が届いたんだね」と言った。
Daneiは頷いた。
「そうだね。
これでもう大丈夫よ」2人は手をつなぎ木を見上げていた。
それ以来、地震は一度も起きることがなかった。


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