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『死神』1.死神のするべきこと<2>

2011-03-14 16:45:52 | 小説『死神』
死神

1.死神のするべきこと

<2>

「ルリ、仕事よ。」
心の引っかかりを放置したまま、次の日の夜になった。
ルカに叩き起こされ、私は気分が悪い。
「で、仕事って何?」
「ある病院に重い病気の人がいるらしいの。いつ「死なせてほしい」って望むか分からないでしょ?すぐに望みを叶えるために、死神は傍にいなきゃいけないんだって。」
めんどくさそうにルカが答えた。
星の光で2つの鎌がきらめく。
「本当はあんたか私の1人だったのに、あんたが見習いだから2人になったの。」
「ちょっと!見習いって強調しないでよ!」
付け足されたルカの言葉に私はすぐさま反発した。
でも、ふと思いついて聞いてみる。
「なら、ルカだけで良かったんじゃないの?」
急に、ルカが暗闇でも分かるほど顔を赤くした。
後から知ったことだが、ルカが私を推薦してくれたとか。
まあ、この時は知らなかったから、黙り込んだルカに首を傾げ続けた。
「沢崎、楓。」
「え?」
「それが、名前よ。」
さわざき かえで。
その名前を脳にしっかりとインプットした。

* * * * *

少し先になるが、楓さんがいる病院は結構新しかった。
「306号室ね。行くわよ、ルリ。」
そう言いつつ、ルカは玄関に向かわない。
逆に病棟に向かっている。
「ちょっと!どこ行くの?」
「え、306号室。」
ルカが当たり前のように言った。
「ど、どうやって?」
ルカは目を丸くした。
何で知らないの?っていう感じ。
「あ~…そっか…。教えてないっけ。」
「?」
どうやら気付いてくれたようだ。
「あのね。死神は――っていうか私達はもう死んでるじゃない?神でもあるけど幽霊でもあるの。」
頷きながら私は少し考えた。
ルカがもう死んでるなんて、聞いたことないけどなぁ…。
「だから壁をすり抜けることだって出来るの。さ、行くよ。」
説明終わり、とルカはさっさと歩いて行ってしまった。

まったく、死神って慣れない。


written by ふーちん


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