パドヴァはイタリア、ヴェネト州にある人口21万人の都市。
シェークスピアの『じゃじゃ馬ならし』の舞台設定でもある。
(それにしても、『じゃじゃ馬ならし』とは、なんとキャッチーな邦題であろうか・・・)
ヴェネツィアの西30kmにあり、1405年から1797年にヴェネツィア共和国が滅亡するまで、400年近くこの支配を受けた。
(その後、オーストリア帝国による支配を経て、1866年にイタリアに併合)
位置的にはこんな感じ。
こりゃ、まあ、海洋強国だったヴェネツィアには攻められるわなぁ、という近さ。
この辺りは、塩野七生さんの熱烈なファンである私には胸熱な展開でもある。
でも、実際に現地を歩くと、少し違和感を覚える。
現代の観光地化されたヴェネツィアは、パドヴァを含めた近隣のどの都市よりも弱そうだからである(笑)
ちなみに、地図を西に進めると、ビチェンツァ、ベローナ、ガルダ湖を挟んでブレシア、そしてミラノと都市が続きます。
ミラノはもちろん楽しいけど、パドヴァ好きだなぁ、ちょうど良くて。
(なお、地元のサッカーチーム『カルチョ・パドヴァ』は現在セリエCで奮闘中)
ヴェネツィアから入る手もありますが、今回はミラノから列車でパドヴァ入り。
間違って、割と高い席取っちゃった(笑)
ちゃんと個室で、添乗員さんが「ボンジョルノ」と言いながら、水とビスケットを届けてくれるヤツ。
無駄なぜいたく・・・(笑)
若いイタリア人女性と同じ個室だったんだけど、ハンドバッグを席に置いたまま、何回も電話に出ていく。
このスリ頻発の国にあって、ナゾの信頼感。
あのぅ、私ってそんなにモノを盗まなそうに見えますか?
パドヴァにつくと、ミラノとの密度の違いに驚く。
この解放感。
ここは中心部の南側にある広場、プラート・デッラ・ヴァッレ。
今、私とサンタ・ジュスティーナ教会の間にはカップルが1組と、おじさんが一人居るだけ・・・(笑)
私の知る限り、東京にこんな空間は無いなぁ。
そして、中の荘厳さもすごい。
陽の光がふんだんに降り注ぐ明るい空間でありながら、静謐さを併せ持つ。
本当に圧倒される。
以前、この街在住のSさんに案内されて、ビールを飲みながら街を練り歩き、すっかりこの街のファンになってしまった。
寺院も良いが、もちろん普通の街なかの小路も良い。
(Sさんは、その後に異動があり現在はドイツ在住)
それにしても、持つべきものは各地で活躍される後輩の皆さんだ。
今回はAさんのご案内で歩く。
片手には勿論モレッティ。
あ、ワイもジェラート食べたい~!
モレッティとジェラートで両手ふさがっちゃうけどぉ。
なお、自ら両手をふさいじゃうのはナポリとかでは御法度です。
パドヴァは、まず1222年創立のパドヴァ大学が有名で、イタリアで2番目に古い大学と言われている。(最古はボローニャ大学)
だから街に学生も多く、勉学の街というイメージもある。
この街に来たなら、パドヴァ聖堂(サントアントーニオ・ダ・パードヴァ聖堂)はマスト・ゴーである。
街の中心であるラジョーネ館(中世の市庁舎兼裁判所、地下に市場があり、今でも街の人々の生活の中心)から、ほんの少し南に位置する。
キリスト教において所謂ドゥオーモ(大聖堂)の称号は与えられていないのだが、小島よしお風に言えば「そんなの関係ねー」と言ったところ。
要するに俗世の称号とは無関係に素晴らしいのである。
中はとても広い。
計3回訪れているが、そのスケール感と荘厳な空気に圧倒されちゃうのだった。
(ちなみに入場は無料です)
日本にも素晴らしい寺院はたくさんあるが、ヨーロッパの教会に行った時の、このとにかく圧倒されちゃう感じには「天井の高さ」という要因があると思う。
この辺り、やはり木造建築と石造りの差も大きいのかもしれない。
ちなみに、パドヴァ聖堂は横から見た姿がとてもイカシテいる。
ゴシック調のアーチ、ビサンチン風のドームだけでなく、イスラムを取り入れたような鐘楼まで、これでもかと一望できるのだ。
この威容を自宅でも感じたく、パドヴァ聖堂を模したマグネットを買ってしまったほどである。
と言っても、パドヴァ聖堂は「正面より、傍ら目(かたわらめ)」というのは一般的な認識のようで、パドヴァで売られている観光マグネットのほとんどは横から見たパドヴァ聖堂の姿である。
露天商に並ぶ、無数のパドヴァ聖堂の横顔マグネット。
あまりに種類が多く、且つ、全部パドヴァ聖堂。
こうなってくると、どれもこれも全く同じに見えてくる・・・。
コレでどやぁぁぁッ!
「はぁ、はぁ。僕、丸い縁取りが付いてるヤツにしてみたんですけど・・・」
同行のAさんがオジさまを傷つけないよう「ものすごく、どうでもいい」という感情を押し殺し、笑顔で答える。
「こ、好みですよね!」
さて、この街については、つい書きたい事が溢れ出てしまうが、そろそろ本題に行きたい。
今回のお目当ては街の古書店である。
古都の路地を進む。
前回も訪れた店なので、場所はだいたい覚えている。
パドヴァには書店が沢山あるが、こちらはパドヴァ大学の南にある結構有名な古書店である。
そうそう、ここなんです!
細長い店内は、両側に天井まで続く本棚があり、年代物の書物も並ぶ。
中央は背の低い本棚になっており、大判の地図なんかはそのうえに広げて状態を検分できるようになっている。
奥は明るいギャラリーになっており、古書にまつわるイベントもよく行われている。
イタリアに限らないが、書店は文化の発信地だ。
(ここに来たら須賀敦子さんの『コルシア書店の仲間たち』を20年ぶりくらいに読みたくなった)
私のお目当ては前回訪店時に見惚れてしまったベネツィアの小っちゃい古地図でして。
先日来た時はこの棚にさりげなく立てかけてあったんだけど。
一点モノなので売れちゃったかしら・・・。
あ、イヤ、ありましたぞッ!!!
値札は200€との事ですが、前回Sさんがお店のおっちゃんにイタリア語で聞いてくれた時は「180€でいいよ」と。
そこまで高くないのに、あの時なぜか勇気が出なかったので、結局わざわざベネト州まで再訪することになった訳で・・・。
今回は手に入れたい。
Aさんが尋ねてくれると、店主は「うん、じゃあ150€!」と・・・。
さすがイタリア!
若い女性が聞いてくれると、それだけで更に30€下がりました(笑)
こちらも「ほな、買わしてもらいますゥ!」と関西弁で即答して現金払い。
おじさんが丁寧に包装してくれる背中を見ながら、やっと買えたなぁと思ったのでした。
古地図の値ごろ感なんかこちらは分からないから、得してるか損してるか知らないけど、こういうのは旅の思い出として楽しい。
結局こっちが良い思い出を持って帰れたら、そこは良い店ってこと。
その後、街の中心部に戻って、エルベ広場。
テラス席でスプリッツを飲みながら、沈みつつある夕日と広場を行きかう人々を眺める。
ここまま店のスプリッツ、全種類飲みたい(笑)
ディナーは、サオナーラのローマ街道沿いにあるリストランテに車で移動
美味いイタリアンに舌鼓を打ち、ワインをたらふく召し上がる。
お部屋の奥にあるオーナーのお酒のコレクションにも興味津々・・・。
さて、食事してる間に陽もとっぷり暮れた。
その後、Aさんに車でホテルまで送って頂いたのでした。
イタリアの地方都市は(ヨーロッパ全般そうだけど)、夜になると真っ暗なので、送ってもらってとても助かった。
ホテルの部屋に戻ったら、昼間買ったあのヴェネチアの古地図を眺めながら、もう一杯だけワインを飲もう。
でも、もう一杯とか言って、しっかり飲んじゃうんだろうなぁ・・・。
そう思いながら、車を出すAさんに手を降る。
いい日だったなぁ・・・。