『カリフォルニアの炎』
ドン・ウィンズロウ
東江一紀訳
”California Fire And Life”by Don Winslow(1999)
2001年・角川文庫
カリフォルニア火災生命の火災査定人である主人公・ジャック・ウェイドが、失火に見せかけた放火殺人に挑む。
ウィンズロウの小説は、主人公は変われど、筋としては大体いつも一緒。
とっても強い敵にコテンパンにされながら、ほんの一握りのチャンス(証拠)をもとに、大逆転の大団円へと、物語が一気に加速していく。
ちょっとハリウッド映画向きな感じで。
すごい筆力だけどね。
ウィンズロウは敵役をしっかり描く。
本作の敵であるニッキー・ヴェイルは、途中からどっちが主人公か判らなくなるほどキャラが立ってる。
アフガニスタンの戦場と、ロシアの刑務所で地獄を生き抜いてきたニッキーは、カリフォルニアの太陽と自由に、誰よりも強く恋焦がれる。
あれか。
男子校出身の大学生が、抑圧されてきたからこそ共学のキャンバスで余計ハジける、みたいなやつか。
美しい妻、家族、素晴らしい家屋と家具、そして金。
ニッキーは、ようやく手にしたカリフォルニアの楽園を壊そうとする火災査定人ジャックを許さない。
ロシアから連れてきた子分の2人もひたすら恐い。
個人的に、ウィンズロウの代表作、ニール・ケアリー・シリーズはそんなに好みじゃないので。
アレよりも好きかな。
でも、俺にとってのウィンズロウの最高傑作は、いまんとこ『ボビーZの気怠く優雅な人生』(1997)。