『ハイペリオン』(上・下)
ダン・シモンズ/ 酒井 昭伸訳
"Hyperion" by Dan Simmons(1989)
ハヤカワ書房SF・2000年文庫
海外SFノヴェルズ・1994年単行本
いやー、分かってますよ。
表紙がダサいのは。
でも、そこを敬遠して良い物語と出会えなければ、不幸って事もあるじゃないか!
48年生まれ、82年デビュー、米コロラド州在住のダン・シモンズの出世作。
本作で90年のヒューゴー賞、ローカス賞をダブル受賞。
いろんな因縁で集まった7人の男女が、時間の墓標という場所へ巡礼に向かう話。
・・・なんのこっちゃ。
それにしても、この『ハイオペリオン』上下だけで899ページ。
これが、この後『ハイペリオンの没落』(上・下)、『エンディミオン』(上・下)、『エンディミオンの覚醒』(上・下)と続くので。
・・・もうね、これ自体が巡礼の旅かと。
アメリカ人は大作主義だなぁなどと、聞いたふうな事を述べてみる。
でも、内容は面白い。
この『ハイペリオン』は、7人の巡礼者が、道中でそれぞれ「なぜ自分が巡礼に参加する事になったか」を語るくだりが核になっている。
つまり7つ(実際は一人語らない人がいるので6つ)の個別のエピソードで構成されている。
その中の一人女探偵のブローン・レイミアが語るエピソードの設定は、まるっきり日本のコミック、攻殻機動隊。
その昔、映画『マトリックス』の製作時、製作のジョエル・シルバーが、監督のウォシャウスキー兄弟に『GHOST IN THE SHELL/ 攻殻機動隊』(95年)を見せて参考にさせたという逸話がある。
その『攻殻機動隊』(コミックの初出は89年)に本作『ハイペリオン』が影響を与えてるとしたら、この世界観は米国→日本→米国で連鎖していってる事になりますな。
95年公開された映画『GHOST IN THE SHELL/ 攻殻機動隊』が日本での興行成績はパッとしなかったのに、米国ではビルボードのビデオ週間売上げ1位を記録したのも、『ハイペリオン』みたいな下地があったかどうかの差という事でしょうか。