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つらつら日暮らし

飲酒の注意 其の三(養生せいや~!!18)

ここ数回の連載は、貝原益軒『養生訓』第4巻に収められている「飲酒」から、一頻り見て行きたいと思っておりまして、今回も飲酒の話でございます。前回は飲み方、飲ませ方の問題でしたが、今日は特に、益軒が飲んで良い酒と、飲んではいけない酒の違いについて語っているところがあるので、それを見て行きたいと思います。

 おおよそ、酒というものは、ただ朝晩の食事が終わった後に飲むべきである。夏・冬、ともに冷やして飲むのも、熱くして飲むのも良いことではない。温めた酒を飲むべきである。
 熱くして飲むと、気が昇ってしまい、冷たくして飲むと、痰を集めてしまい、胃も損なってしまう。
 丹渓(中国元代の医者)は、「酒は冷たくして飲むのが良い」といっている。しかし、多く飲む人が、冷たくして飲めば、内臓を損なってしまう。僅かばかり飲む人も、冷たくして飲めば、食欲を滞らせてしまう。
 おおよそ、酒を飲む場合には、その温くした酒に気を借りながら陽気を助けて、食が滞った際にめぐらせるのである。冷たくして飲めば、この2つの益はない。温くして飲む酒が、陽を助け、気をめぐらせるのに勝ることはない。
    岩波文庫『養生訓・和俗童子訓』92頁、拙僧ヘタレ訳


最近では、売れない日本酒をなんとか売ろうというので、冷酒用とか、熱燗用とか、色々と種類も出ていると側聞していますけれども、貝原益軒からすれば、「養生に悪い」という理由で、両方ともに一刀両断されてしまうようです。味わい的にはどうでしょう?冷や酒は口当たりが良く、純米酒の良い物であれば、米の香りと喉に染みる「清水」の味が本当に楽しめるように思います。その点、温度を上げてしまうと、この「染みる」という感覚が曖昧になり、ただ甘ったるいだけ、という話になるように思うんですね。ただ、それ以降、内臓までこの冷や酒が届くと、身体に悪いようなのです。しかも、痰も溜めてしまう・・・益軒、随所でこの「痰」の話をされますが、相当に問題だったようですね。

しかも、「痰」の切り方まで詳しく説いている場合もある(特に、老人は痰を切りすぎては良くないそうです)ようですから、人間にとって大切な呼吸にも関連しているのでしょう。

ところで、熱燗もダメだそうで、熱すぎると、気が昇ってしまう・・・この言葉の解釈が難しいのですが、酔いやすいということでしょうか。で、結局ぬる燗が良いということになります。益軒的には、それこそ身体にも良い飲み方ということで、もしダメ出しされた飲み方をされている場合には、一度お試しあれ。

でも、益軒はただ、ストイックに身体に良いことだけをして、味なんかどうでも良いとはいっていないのです。味にも気を遣っていますし、そして、大概味が良くない物は、身体にも良くない場合があったようですよ。

 酒を温め過ぎて、煮たことによって生じる旨味を失った物、或いは温めて時が過ぎ、冷えた酒を、再び温めて味が変わってしまった物、これらは皆、内臓を損なってしまう。
 飲んではならない。
    岩波文庫『養生訓・和俗童子訓』93頁、拙僧ヘタレ訳


これなどは如何でしょう?確かに、余りに温め過ぎると、かえって美味しくはないというのは、この通りですし、アルコール分も飛んでしまうような気がします。或いは、一度冷えた酒を、再度温めるというのも、なるほどもったいないと思っているのかもしれませんが、身体には良くないようです。よって、そうなった場合には捨てるか、別の物に転用するかして、新しく銚子を準備すべきなのでしょう。

それから、益軒は薬酒なども良いと勧めています。一応、寒い季節の冷え性対策ということのようです。そういえば、「養命酒」も、そんな効能を謳っていた気がしますが、一応あれは酒と入っても、さまざまな「生薬」も入っているので、その辺の総合的な効果ということなのでしょう。それに、古来から冷え性対策には酒、というのは民間では一般的だったようです。その辺は以前、【冷え性になった和尚】という記事を書いたことがあるので、ご覧下さい。

なお、この連載記事は、「かつて養生に関わる説にていわれていたこと」を、文献的に紹介しているのみでありますので、実際の医学的効能などを保証する内容ではありません。その辺は重々ご注意の上、ご覧下さいますようお願い申し上げます。

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