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つらつら日暮らし

「三聚浄戒総頌」について

拙僧の手元に、『〈密宗必須〉三聚戒本』(東京書林山口屋佐七版、明治13年以降)という冊子があるのだが、内容は『梵網経』『瑜伽戒本』『根本説一切有部戒経』の3種の戒本を収録したもので、「密宗必須」とある通り、日本の真言宗で用いたもののようである。以前、【「摂律儀略頌」について】という記事を書いたが、その続きで、「三聚浄戒総頌」が収録されているので、見ておきたい。

  三聚浄戒総頌
 律儀は断徳にして法身を成ず。
 摂善は智徳にして報身を成ず。
 饒益は恩徳にして応身を得る。
 因りて三聚と名づけ、果は三徳なり。
    原典に随って訓読


非常に、端的な内容の偈頌である。要するに、「三聚浄戒」と「三徳」だと説明しているのである。では、その「三徳」とは一体何なのか?それで、「三徳」について説明しているのは、世親『摂大乗論釈』であり、以下のように見える。

 論じて曰わく、一切智智を得るの為に。
 釈して曰わく、即ち是れ一切智にして無畏なり。此の三句、即ち三徳を顕す。初めに断徳を明かし、次に恩徳を明かし、後に智徳を明かす。
    『摂大乗論釈』巻8


まずは、以上の通りである。「一切智智」の説明で、「三徳」として展開する様子を説明している。そして、更に以下の一節もある。

 正護戒、如来断徳の因と為す、
 摂善法戒、如来智徳の因と為す、
 摂衆生戒、如来恩徳の因と為す。
    同上、巻11


こちらは、「三聚浄戒」と「三徳」との関係であるけれども、こちらは、先の「総頌」と同じ内容なので問題が無い。しかし、問題となる一節も見出した。

 三身、即ち是れ三徳なり、
 法身、是れ断徳なり、
 応身、是れ智徳なり、
 化身、是れ恩徳なり。
    同上、巻12


・・・あれ?いや、何度見ても「応身」で間違いないようで、「報身」では無いのである。そうだとすると、そもそも「三身」の捉え方自体が問題になってくるのではないか?ということで、先の「総頌」について、基本は『摂大乗論釈』である、といいたかった当方の目論見は破綻した模様。

どこを出典だと言えば良いのかな?それで、今回問題となっているのは「報身と智徳」との関係なので、それを中心に探したところ、以下の一文を見出した。

摂善法戒は、一切の善法、皆、此の戒に属し、亦た智徳と云う、即ち是れ毘盧遮那如来の円満報身なり。
    『金剛頂瑜伽略述三十七尊心要』


・・・密教系か。時代的には、かなり後になりそうだ。ただ、元々『三聚戒本』は密教系で用いている文献なので、この辺は特に大きな問題では無い。『三聚戒本』に載っている、各頌の紹介はとりあえず以上だが、『三聚戒本』には続けて「臨長浄期有犯疑罪説悔守持法」が収録されているため、機会を得て採り上げてみたい。

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