つらつら日暮らし

或る経典に見える「酒失」について

「酒失」とは、文字通り、酒による失敗、或いは、酒により失うことを示した教えである。それを、執拗に24個も列挙している経典を見付けたので、見ておきたい。

 仏、比丘に告ぐるに、若し復た人有りて焚焼・冤害より遠離することを欲求すれば、諸酒を飲まずに、施戒の業を修すべし。
 苾芻、応に知るべし、
 酒失の最上は、善法を破壊す。
 酒失の最上は、能く聡慧を壊す。
 酒失の最上は、能く安楽を壊す。
 酒失の最上は、善友を遠離す。
 酒失の最上は、能く諸病を生ず。
 酒失の最上は、解脱を破壊す。
 酒失の最上は、冤家の便を得る。
 酒失の最上は、財物散壊す。
 酒失の最上は、非法を増長す。
 酒失の最上は、珍宝を遠離す。
 酒失の最上は、是非を乱説す。
 酒失の最上は、散乱転た増す。
 酒失の最上は、能く貪忿を生ず。
 酒失の最上は、無明増長す。
 酒失の最上は、忠実が詐に変ず。
 酒失の最上は、隠密を顕露す。
 酒失の最上は、煩悩転た増す。
 酒失の最上は、地獄を成就す。
 酒失の最上は、善根を焚焼す。
 酒失の最上は、三宝を毀壊す。
 酒失の最上は、悪名流布す。
 酒失の最上は、酔、膿血に変ず。
 酒失の最上は、香、臭穢に変ず。
 酒失の最上は、三塗を増長す。
    『妙法聖念処経』巻2


以上の通り、酒を飲むと、こんなマイナスなことが起きるよ、ということを列挙している。見ていただければ、意味するところは理解出来ると思うが、個人的に気になったのは、「是非を乱説す」であろう。要するに、ワケの分からないことを言うことなのだが、酔って言語不明瞭になることは、事象として珍しくない。

「財物散壊す」は、飲酒によって費用がかかるなどし、財産が失われることを示したものである。ただし、「珍宝を遠離す」はどういうことなのだろうか。素直に考えれば、酒に酔って自らが持つ宝を壊すことなどを指すのだろうか。

また、「忠実が詐に変ず」も気になるが、忠実な人間関係が、「詐(いつわり)」になるとしている。これも、酒に酔うことで起こることである。

それから、「隠密を顕露す」については、隠していたことを暴露してしまうことを指す。これも、酒に酔うと口が軽くなることを指したといえる。

もう一つ気になったのが、「香、臭穢に変ず」だが、体臭などを指したものであろう。飲酒の結果、いわゆる酒臭くなることを指していると思うのだが、これも、悪影響として示されている。

さて、他は見ての通りなので、採り上げないけれども、少なくとも飲酒について、斯様に批判的な文章があることは理解していただけたと思う。そして、『大智度論』になると、今度は35もの問題点が挙げられているという。それも、何かの折に採り上げてみたい。

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