5月4日、愛知県名古屋市内で第10期叡王戦五番勝負第3局が行われ、先手の伊藤匠叡王が、挑戦者・齋藤慎太郎八段に151手で勝利し、これで2勝1敗としました。
第4局は、5月26日に千葉県浦安市内で行われる予定です。
ということで、かなりゆっくりとした展開だったのですが、中盤以降は持ち時間も無くなって、スピーディーでありながら、ジリジリした展開となり、一時は齋藤八段がリードしていたのですが、最後は伊藤叡王が逆転して、勝ち切った感じでしたね。
ところで、ここ数日、将棋界の話題は以下の一件です。
・山下数毅三段がプロ入り王手…竜王戦5組決勝進出、奨励会員として初の4組昇級へ(YomiuriOnline)
上記報道の通り、現在、奨励会の山下数毅三段(16)が、5月2日に第38期竜王戦5組ランキング戦準決勝で山本博志五段(28)に116手で勝利しました。これが大きな話題となっております。
これはどういうことかというと、現在の将棋界最高の棋戦である竜王戦の規程に関係しています。
・昇段条件(日本将棋連盟)
こちらを見ていただくと、五段や六段の昇段の条件に、「竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝」とあるのが分かると思います。実は、山下三段は前期の第37期竜王戦ランキング戦6組で、以下の通り準優勝しています。
・第37期竜王戦<読売新聞>【6組】ランキング戦
竜王戦のランキング戦6組での昇級条件は、「決勝進出者2名と昇級者決定戦の優勝者2名が5組に昇級」とあるので、山下三段はこれを満たし、今期、ランキング戦5組で戦っておりました。その結果、先の読売新聞の報道の通り、山下三段は決勝に進出したため、ランキング戦5組での昇級条件、「決勝進出者2名と昇級者決定戦の優勝者2名が4組に昇級」を満たしたわけです。
さて、そうなると、「竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝」を満たしたこととなります。つまり、五段や六段に上がれる条件を、奨励会三段の段階で満たしたという快挙が達成されました(なお、そもそも奨励会三段の段階で、竜王戦に参加することも、また、その中で勝つことも、極めて異例であります)。そのため、連盟は以下の発表をしています。
・竜王戦に出場する奨励会員の竜王ランキング戦5組決勝進出時の対応について(日本将棋連盟)
こちらの通知は、山下三段への対応として急遽決まったものらしいですが、「その期(進行中)の三段リーグ終了後に次点1を付与する。ただし、その期の三段リーグにおいて降段点(勝率2割5分以下)に該当した場合は、次点1の付与は行わない」とあって、この結果、山下三段は既に「次点1」を持っているので、今期の三段リーグで、降段点を得なければプロの四段に上がれることとなりました。
いや、こうやって将棋界も徐々に新しい世代の棋士が出てくるわけですね。山下三段は中学生棋士の可能性も指摘されていたほどで、その時は残念ながら次点で上がれませんでしたが、いよいよほぼ、四段を手にしたこととなります。とはいえ、この方はここで止まるレベルでは無いと思いますので、更なる活躍を期待しております。山下三段、名前に「数」が入っている通り、お父さまも京都大学で数学の研究を行っている先生ですので、やはり論理的思考に於いて強いのでしょうね。