☆10/27☆
先週の木曜日 夕方いつもの様にマッサージから夫が戻ると こう言った。
「何であれが出てるんだ?」
目線の先には 先程まで調べ物をしていた書類の束が二つきちんと並べて置いて有った。
「お父さん 仕舞って行くと言いながら 出しっぱなしでマッサージに行ったのよ♪」
私の言葉に 「あれ・・・変だ おかしいよ 何も思いだせない・・・」
1時間半前までは 普通だったのに 何も思いだせないと真剣な眼差しで 私に訴えかける夫。
「今日仕事から何時頃帰って来た?」「今日はお休みで 書類作りをする為にさっきまで書類とにらめっこしてたじゃない」
「何にも思いださない・・・どうしたんだろう?なんだか変だよ・・・」
「今日は一緒に光が丘公園に行って ランチにあの美味しいパンを買って一緒に食べたじゃない?」
「覚えてない・・・今日は何日だ?」「10月27日よ」「今日は10月27日か・・・其れで今日は何日だっけ?」
夫の顔を見ると アルツハイマー症状の顔でも無く 痴ほう症の顔でも無く ごく普通の顔つきだった・・・。
夫にいったに何が起こっているのだろう!
「ちょっと一緒にお散歩に出て見ようよ、思いだせるかもしれないよ・・・」
夫とリンと一緒に散歩に出たが 何も思いだせないで 質問ばかりが口にする・・・今日は何していたんだろう・・・。
散歩の帰りに息子の為に借りたままの駐車場を聞いてみるが 息子の駐車場が解らないと言う・・・どうなちゃうんだろう!
「思いだせるから大丈夫! それより夕飯だべようか?」
「いや、悪いがちょっと 付き合ってくれないか・・僕と話をして・・・思いださなくちゃ・・・」
「息子の名前解る?」「そりゃ解るよ 〇〇〇だよ」
「お嫁ちゃんの名前は?」「〇〇だよ」
「孫が生れたけど名前解る?」「解るよ〇〇だよ、子供や孫の名前は解るよ」とすらすらと名前を言える。
「少し前に終わった仕事の場所は〇〇だけど 覚えてる?」「全く解らない・・・」
仕事の事 今日一日の行動、出来事を伝えると 私の言葉を確認するように繰り返して言う夫。
今迄 子供の為 家族の為に一生懸命働いて来た夫、今病気になったら・・・可哀想過ぎる!
それに これから一緒に色々沢山出掛けたり 孫の成長を楽しみにしたり やりたい事も沢山有る
未だ未だ 元気でいて欲しい!
私が支えなくては!私が治してあげる! そんな思で一杯になった。
同じ事を何度も 何度も過去を辿り 記憶に擦り込んでいった。
明日は友人が仕事を手伝って欲しいと 朝の6時半に待ち合わせをしている。
迷惑を掛けない為に 早く連絡をして断らなければとの思いが湧き 夫に話すと「ちょっと待ってくれ!」と言う
明日の朝 待ち合わせ場所が近いので 夫の話し相手に此の侭成り 朝断ろうと決心した。
1時間過ぎ 2時間ほど過ぎた頃 ふと夫が「そうだ 三角形のパンを食べたんだよな」と言った。
それは 私が記憶を辿りお昼に一緒に公園でパンを食べた事は話したが 形まで話してはいない・・・。
夫が思い出したのだ・・・其れからは 記憶の回路が繋がったのか 朝からの事 仕事の事を思い出して行った。
夫も ほっとした様子で 遅い夕飯を食べながら 今手がけている仕事先のお客様の名前など 思いだして行った。
夫が霧の中を彷徨っていたのが 薄皮を剥がすように 少しずつ霧が晴れて行くように・・・元へ戻って行った。
「明日は仕事はどうする?手伝って欲しいって話だけど 行ける?朝私が断っても良いし」
「もう大丈夫だよ 明日行けるよ」
数時間記憶を無くした夫が 果たして仕事が出来るのだろうか・・・でも明日は迎えに来た友達の車に乗り出掛ける予定なので
運転の心配は無い・・・本人の意思の通り 仕事へ行って貰って大丈夫だろうかと 自問自答が続いた。
一先ず朝の様子を見て 決めようとそう思いながら 夫の身に何か重大な問題が起こったのではないかと 不安と心配が広がって行った。
翌朝は 全く普段と変わりない夫、約束だからどうしても仕事へは行かなくては成らないと言う夫に
私はお弁当を作り 其れを持って夫は出かけて行った。
仕事先で又記憶が無くなったらと思うと 落ち着かず 仕事先へ着いた頃だろうかと思っていると夫から電話が入った。
「今着いたよ♪」「大丈夫?」「大丈夫だよ♪」「お昼に又電話をしてね」「あいよ♪」
一応 息子へ話しておかなくてはと 電話をして昨日の様子を伝えると・・・
「何で今日仕事へ行かせたのよ!仕事より病院でしょ!」と強い言葉が帰って来た。
「(゜ー゜)(。_。)ウンウン解ってるよ、心因的なものだと本人の意思も尊重した方が良いのかもと思えて・・・
今日は運転する事も無いので様子を見た方がと思って・・・」と答えると
「明日病院へ行ってきなよ 心配だし」「脳に一時的に血液が流れなかったとすると梗塞も考えられるから・・・そうする」
午後ホームドクターの杏先生の所へ行き 相談をすると
「何処の病院へ検査に行きたい?」
「脳外科が良いかな?良い病院をお願いします」
「解った 女子医大で良いね・・・」と懇意にしていると言う脳神経外科の担当教授へ 目の前で電話をしてくれた。
教授は席を外して居る様で「では 秘書の方へ」秘書の人に診療の予約を入れてくれたが 予約が一杯で一週間後との返事だった。
「急いで診察&検査をして頂きたい患者さんなので 電話をしているんです!もっと早く予約が取れませんか?」
「私は〇〇クリニックの○〇です、教授とは懇意にしているので 頼んでいるんですよ!」最後には怒った口調で頼んでくれた。
結果・・・「明日の午前11時半 予約が取れたから 夕方紹介状を取りに来てね・・・」
大学病院の脳神経外科のエキスパートの教授に翌日診療して貰える事に成り 有難さで一杯になった、杏先生に心から感謝!
仕事先の夫へ夕方電話をして「明日病院へ行くので 仕事は出来ないと断っておいてね」と連絡を入れた。
土曜日 朝からバス&電車で大学病院へ向かう、予約時間より1時間早く到着した、先ず初診受付へ行き手続きをすると
一時間も早いのに 診療室の前で待つ様に言われ 直ぐに診察に入れた・・・
一通りの説明をした後「では先ず色々検査をして下さい、検査が終わったらまた来て下さいね」
陰険な感じの 偉そうにする教授だったら嫌だな・・・なんて危惧をした事を申し訳ないと思える さっぱりとした好感の持てる
信頼できそうな人柄で ほっとしながら 夫は検査に向かった。
血液検査 尿検査 心電図 脳CT検査・・・
約一時間ほどで検査が終わり 診察室の前で暫く待つと 呼ばれて中に入った。
検査結果 脳の画像を見ながら医師は「大丈夫ですよ 脳も異常は無いし・・・」
「今日は予約で一杯でMRI検査が出来ないので・・・来月の中旬まで予約で埋まっているので 他で検査をして来て下さい。
今日中に終わらした方が良いでしょう?」と早速池袋のメディカルスキャニングへ予約を入れてくれた。
「今日の夕方5時半だけど 今日の方が良いでしょう!」
病院での検査は 一日で済ませた方が有難いので お願いした。
「MIRの画像は 持って帰って 次に結果を聞きに来る時に持って来て下さい、何時が良いかな?、僕の診療日は・・・
3日は祭日で病院の外来も休みだし・・・金曜日か土曜日」其れまで普通の生活で大丈夫と言われて
金曜日は仕事の立ち合いに決まっていたので 土曜日に予約をさせて頂いた。
一先ず今日の検査では異常なしとの事 普通の生活も大丈夫と言われ 念の為脳のMRIの検査をする事に成りほっとする。
半分安心しながら 新宿で二人でランチを食べた後 池袋へ向かった。
検査まで時間は3時間半ほど有る 検査病院を確認するためにメトロポリタンホテルへ向かう、其処の地下1階に病院が有った。
其れではと ホテルでお茶を飲んで時間を潰すことにしたが ケーキセットのコーヒーを頼んでおしゃべりしても時間は余り
一旦ホテルの外へ出ると夫が「そうだ カラオケでも行くか 来る途中に有ったよ」
夫の提案で 二人でカラオケへ~♪ 大きな声で歌を唄えば あっという間に一時間半時間を潰せた・・・ボジティブな夫婦で助かる~笑
検査後に預かった画像の入った大きな袋はずっしりとした重みが有った。
☆11/2☆
丁度母の命日・・・あれから一年が経ったんですね、夫とお墓参りに行きました。
夫が記憶を無くした時 娘と両親に手を合わせて 助けて欲しい未だ未だ元気に過ごさせて欲しいってお願いしました~(^^ゞ
母の実際の一周忌とお礼を込めて お墓参りに行きました。
☆11/5☆
そして今日(土曜日)検査結果を聞きに行って来ました。
MIRの画像を見て医師は「大丈夫だね 綺麗だよ、血管のふくれも無いし 何処も異常なし 安心して下さい」
「この画像は持って帰って良いよ、杏先生にも見せてあげて、血液検査の結果もコピーした奴 持って行って
僕からも報告の手紙は出しておくから・・・疲れ過ぎだったのかな? 忙しいのもほどほどに・・・
検査の結果では 又起こるとか そう言う心配もないと思うので 大丈夫ですよ♪」最高のお墨付きが貰えるなんて・・・嬉
何だったんでしょう?夫の数時間の記憶消滅は・・・。
でも検査結果は異状なしで本当に良かった!
直ぐに専門医で診察&検査が出来た事は 杏先生のお陰 月曜日に夫と二人お礼と報告に行く予定です。
診察日と今日 診療が終わり直ぐに杏先生に電話で報告をすると「良かった!良かった!」と喜んで下さった。
息子にも同じように電話をすると「良かったな~ほっとしたよ!」と安心してくれた。
なんだか 夫の存在の大切さが家族で再確認した様な そんなキツネにつままれたような出来事に思えて来た。
いつも 健康でいられる事が一番幸せだと思っているけど 今回ほどその思いを強く感じた事は無い。
そうそう 夫に記憶が消えたあの時間の事を聞くと 思いだした後は その数時間の記憶が今度は覚えていないそうです・・・。
そんなもんなのでしょうね・・・其の時間 夫は一人で何処へ行っていたんでしょうか?
今 笑ってそんな事を話せる事に 心から感謝です~(*^^)v
外は秋色に成りつつあります 夫婦揃って元気に リンを連れてお散歩出来る事に感謝の日々が続いて居ます、
これからも 感謝の日々が続きますように・・・・。