○ 今回はマウスの代わりとして使えるPC周辺機器、トラックボールを紹介したい。
その歴史はかなり長く、PCの登場初期から存在する。もともとはマウスもボールを内蔵しており、これを机の上で動かすことで機能していた。そのボールを机側ではなく上側に取り付けて指で動かそうというのがトラックボールである。マウスが光学やレーザーのセンサーに変わっても、トラックボールは変わらずにボールを動かすスタイルを継続している。
PCで仕事をする際にトラックボールを使う最大の利点は、場所をとらないことである。マウスは動かすエリアが必要だが、トラックボールなら本体を動かす必要がない。テレワークで自宅の机の狭さが気になっている方にこそお薦めしたい周辺機器だといえる。
また最近は、リビングに置いたテレビにPCをつないで使う機会が出てきたという人もいるだろう。マウスはリビングでは使いづらいが、トラックボールであればソファに座っていても快適に作業できる。
以下では、トラックボールの活用法とお薦めモデルを見ていく。
使いこなしの鍵は速度調整。
トラックボールはマウスに比べると、長距離の移動が苦手だ。マウスは、本体を動かした分ポインターが移動する。つまり机の上が広ければ、いくらでも動かせる。これに対してトラックボールは、ボールがだいたい半回転したら指を元の位置に戻して追加で回さなければならない。トラックボールにおいて指で触ることができる部分は基本的に上半分で、1回の操作で1回転させることはできないからである。およそ180度の回転――つまりボールが半回転したら最初から回し直しになるわけだ。
この動作原理から考えると、トラックボールですばやくポインターを動かしたいのであれば、180度の回転以内で画面上を縦横無尽に動かせるようにする。だが、その副作用として緻密な作業がしにくくなる。ワープロソフトで文字を選択する程度は問題ないが、画像の一部を選択するような細かな作業が難しくなっていく。
そこで重要なのが、マウスポインターの移動速度の調整だ。これを何度か繰り返して快適な操作ができるようにセットしておいたほうがよい。例えばロジクールのトラックボールの場合はポインターの速度を1パーセント刻みで調整可能なので、少しずつ調整してベストな設定を見つけよう。もちろん、Windowsの標準機能で調整してもかまわない。
また、ホイールや多機能ボタンの使いこなしもトラックボールを活用するこつになる。これらは、形状やできる操作がメーカーや機種によって様々である。購入前に確認しておくとよい。
お薦めのトラックボール3選。
ここからは、僕が使ったことがあるトラックボールのうち、作業をしやすいものを3製品紹介していく。
1番のお薦めはロジクールのワイヤレストラックボール「ERGO M575S」だろう。定番モデルと言える機種で、Webの直販の場合7370円(税込み)で販売されている。ボールの反応が素晴らしく、ホイールの動きもキレがあり使っていて心地がよい。
ワイヤレストラックボールの上位モデル「MX ERGO」は1万6940円(Webの直販の場合、税込み)と高価だが、多機能ボタンを搭載し2台のPCと接続して切り替えて利用できる。アプリケーションごとにボタンの割り当てを変えられるのも便利だ。最大の特徴は、本体の角度を20度調整できること。より手に合うスタイルで利用できる。
米アコ・ブランズ(Acco Brands)のKensingtonブランドのトラックボールも有名だ。その中で「Pro Fit Ergo Verticalワイヤレストラックボール」は、手首を自然な角度で使えるモデルである。3台のデバイスに接続できるほか、全部で9つのボタンを持つ本格派で、ショートカットを割り当てて使いこなせる。Amazon.co.jpでの販売価格は1万1000円(税込み)だ。
熱烈なファンもいる。
トラックボールを一度も使ったことのない方もいらっしゃるだろう。だが実は、手や作業に見合うとかなり使いやすい。熱烈なファンがいて地味ながら製品が継続して販売されているのがその証拠だと言える。ノートPCをタッチパットで使っているなら、導入することで作業性が大きくアップする。マウスが使えない場所でも活躍するので、いちど検討してみてはいかがだろうか。
なおマウスとトラックボールは併用もできるので、普段はトラックボールを使い、細かな操作を要求される作業のときはマウスに持ち替えるというのも良い手だ。