耳呈さんのブログの記事に触発されました。
いわゆる特別研修の話しになります。
以下は、裁判関係から縁遠い者の私見としてお読みください。
消費貸借契約につき弁済期の定めがないとき、民法591条1項に規定がある。
そして、民法591条1項の「返還の時期を定めなかったとき」につき、通説的な学説と、少数説的な学説がある。
通説的な学説は、
当事者が返還の時期を定めなかったときは(当事者の合理的意思解釈として、弁済期を貸主が催告した時とするという合意があると考えて)、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
とされ、この場合、請求原因として、
1 返還の合意
2 物の交付
3 弁済期の定めがないこと(弁済期を催告の時とする合意)
4 催告及び相当期間の末日の到来
を主張証明します。
少数的な学説として
当事者が返還の時期を定めなかったときは(弁済期の合意が欠けているので補充規定として)、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
と考え、この場合、請求原因として、
1 返還の合意
2 物の交付
3 催告及び相当期間の末日の経過
を主張証明します。
そして、上記2学説の差異は、上記請求原因に表われているように、返還時期の定めが、抗弁となるか、否認となるかとの違いにもつながる。
したがって、簡裁民事事件の考え方と実務のP68の記載が合意欠落説である、と結論づけることができますが、
法律要件分類説の説明での例示
条文番号が横に書いてある
催告に関して記載がない
P69に、要件事実論の詳細については、・・・・要件事実の考え方と実務を参照されたいとある
ので、要件事実と条文の規定振りとの密接性を伝えたかったのかな、と思います。
なので、特別研修や認定考査では、(完全に一私見ですが)通説である合意存在構成で起案すれば大丈夫だと思っています。
私なら、そう起案すると思いますし、おそらく特別研修でもそう習うはずです。
なお、上記学説は、消費貸借契約の目的物返還請求権につき、通説となっている契約終了説(返還時期の到来により返還請求できる)をベースとしています。
大正、昭和初期の判例がとった、契約成立説(契約成立により返還義務が発生し、返還時期まで履行が猶予されている)によっても、返還時期の定めは抗弁となります。
(請求原因は、返還の合意と物の交付の2点となります)
なお以下の参照文献として:民法講義Ⅳ山本敬三著P376