カラス物語
十二月三日、四日、奥湯河原に出かけ青巒荘に一泊した。程よい湯加減の温泉にゆったりとつかり、六時から宴会となった。一泊三万円というだけあって、料理は品数も豊富で美味しかった。その後、全員がソファーと椅子のある次の間に移って雑談になった。
S君がカラスを飼った話をし始めた。小鳥とかインコといった鳥類を飼う話は聞いたことがあるが、カラスを飼ったというのは、初めて聴く話だったので、大変興味を持った。
S君の話によれば、このカラスを捕獲したのは近くの公園だった。彼は小鳥を飼うようにしばらくは籠に入れて飼っていたらしい。
そして、カラスについて、次のように語った。
『漆黒の濡れ羽色をしたカラスの魅力は、光沢を帯びて美しく、じっとカラスの目を見ていると、澄んで深みがある。』というのだった。
私などとはカラスに対する考え方が根本から違っていることだった。カラスは何処でも見かける鳥だが、早朝のウォーキングの時、私がゴミをあさっているカラスを追い払おうと、シィ、シィと掛け声をかけても、カラスは図太くて、ピョン、ピョン、と数十センチほど飛びのくと小首をかしげて通り過ぎるのを見送った後、再びゴミ袋に挑戦しているのである。
だから憎たらしいと思う以外、光沢を帯びて美しく、魅力的な鳥と感じたことは無い。
S君はこのカラスを一年半くらい飼っていて、クロという名で呼んでいたそうです。そして更に次のように話した。
『本当は嘴の曲がったハシブトカラスを飼いたかったのだけど、捕まえたのがハシボソカラスだった。ハシブトカラスは都会カラスといって、新宿あたりでゴミ漁りをしている種類で、物覚えが良くて、賢いんです。ハシボソカラスは田舎カラスといって、農耕地などの開けた環境に住むカラスで、物覚えはあまり良くないんです。籠から出してやると、部屋中を飛び回ったりして遊んでいたんですが、ある日窓を開けたら、外に飛び出して逃げてしまいました。』
『でも、時々家に遊びに来るんですよ。ガー、ガーとちょっと変わった声で鳴くので、直ぐに分かるんです。一年半飼われていた家が懐かしいのでしょうかね。』と。
【参考資料】道具を作り餌を釣るカラスの「知能」、英研究者が発見
(朝日新聞 二〇〇二年八月九日)
カラスが針金の先をかぎのように曲げて道具を作り、筒の中にある餌を釣り上げることを英オックスフォード大の研究グループが発見し、九日づけの米科学誌サイエンスに発表する。 このカラスは、グループが飼っているメスのニューカレドニアカラス。針金を道具にして餌をとる姿を目撃したことから、実験を試みた。 その結果、長さ十㎝ほどの針金をくちばしにくわえ、脚などで先を曲げてかぎ形道具を作り、筒の中から餌の入った容器をうまく釣り上げた。十回試して九回成功した。 ニューカレドニアカラスは、野生でも餌をとるために道具を作ることが知られている。だが、自然界にないものまでも巧みに加工したのを確認したのは初めてという。
十二月三日、四日、奥湯河原に出かけ青巒荘に一泊した。程よい湯加減の温泉にゆったりとつかり、六時から宴会となった。一泊三万円というだけあって、料理は品数も豊富で美味しかった。その後、全員がソファーと椅子のある次の間に移って雑談になった。
S君がカラスを飼った話をし始めた。小鳥とかインコといった鳥類を飼う話は聞いたことがあるが、カラスを飼ったというのは、初めて聴く話だったので、大変興味を持った。
S君の話によれば、このカラスを捕獲したのは近くの公園だった。彼は小鳥を飼うようにしばらくは籠に入れて飼っていたらしい。
そして、カラスについて、次のように語った。
『漆黒の濡れ羽色をしたカラスの魅力は、光沢を帯びて美しく、じっとカラスの目を見ていると、澄んで深みがある。』というのだった。
私などとはカラスに対する考え方が根本から違っていることだった。カラスは何処でも見かける鳥だが、早朝のウォーキングの時、私がゴミをあさっているカラスを追い払おうと、シィ、シィと掛け声をかけても、カラスは図太くて、ピョン、ピョン、と数十センチほど飛びのくと小首をかしげて通り過ぎるのを見送った後、再びゴミ袋に挑戦しているのである。
だから憎たらしいと思う以外、光沢を帯びて美しく、魅力的な鳥と感じたことは無い。
S君はこのカラスを一年半くらい飼っていて、クロという名で呼んでいたそうです。そして更に次のように話した。
『本当は嘴の曲がったハシブトカラスを飼いたかったのだけど、捕まえたのがハシボソカラスだった。ハシブトカラスは都会カラスといって、新宿あたりでゴミ漁りをしている種類で、物覚えが良くて、賢いんです。ハシボソカラスは田舎カラスといって、農耕地などの開けた環境に住むカラスで、物覚えはあまり良くないんです。籠から出してやると、部屋中を飛び回ったりして遊んでいたんですが、ある日窓を開けたら、外に飛び出して逃げてしまいました。』
『でも、時々家に遊びに来るんですよ。ガー、ガーとちょっと変わった声で鳴くので、直ぐに分かるんです。一年半飼われていた家が懐かしいのでしょうかね。』と。
【参考資料】道具を作り餌を釣るカラスの「知能」、英研究者が発見
(朝日新聞 二〇〇二年八月九日)
カラスが針金の先をかぎのように曲げて道具を作り、筒の中にある餌を釣り上げることを英オックスフォード大の研究グループが発見し、九日づけの米科学誌サイエンスに発表する。 このカラスは、グループが飼っているメスのニューカレドニアカラス。針金を道具にして餌をとる姿を目撃したことから、実験を試みた。 その結果、長さ十㎝ほどの針金をくちばしにくわえ、脚などで先を曲げてかぎ形道具を作り、筒の中から餌の入った容器をうまく釣り上げた。十回試して九回成功した。 ニューカレドニアカラスは、野生でも餌をとるために道具を作ることが知られている。だが、自然界にないものまでも巧みに加工したのを確認したのは初めてという。