こいぬには、トイレが問題

こいぬは、トイレを
覚えなければ、ならない
ひとと、同居する訳だからね
そこで、問題は
おとうさんのトラウマだ
おとうさんは、子どもの頃
こいぬを、拾って来て
両親に頼み込んで
飼ってもらった
トイレを覚えたらね、と
父親との、約束だった
でも、ちっとも
覚えてくれなくて
一週間、飼っただけで
父親から、言われて
こいぬを、捨てに行った
小学生の子どもが
大好きな子いぬを
捨てに行ったんだ
いたいけな、いのちを
掛け替えのない、いのちを
捨ててしまった…
そんな記憶が、いや
トラウマだな
ずっと、忘れない
いや、忘れられない
だから、家の中で
飼うとしても
トイレを、覚えてくれるか
それが、何より心配だった
もし、ダメだったら…
いや、もちろん
捨てたりは、絶対しない
自分は、父親とは違う
そして、儚いいのちを
蔑ろにしてしまった
取り返しのつかない
その過ち、いや罪を
ずっと、悔いてきたんだから
父親みたいに、息子に
捨ててきなさい、とか
元の飼い主に
返しなさいとか
そんな事も、絶対言わない
もう、このこいぬは
うちの子だって
おとうさんの自分が
はっきり、許して
家族みんなで
そう、決めたんだ
だから、もう
どんなごとが、あっても
間違いなく、うちの子だ
でも、トイレを
覚えられない、と
色々、困りそうだな
ここは、おとうさんが
なんとか、するしかない
自分は、父親とは
違う、おとうさんだと
その証しを、必ず示す
絶対、覚えさせてみせる
心配気に見ている
そんな息子たちの前で
でも、出来るだろうか…
　　　　　　　　to be continued