時を、追っていた
間に合わないよ
なんだよ、また
間に合わないよ
何時までだった、のに
また、だよ
まあ、おまえが
だらしないから、だけどね
小学生のおまえは
いつも、朝
ぐずぐず、ぐずぐず
ようやく、家を
飛び出すけど
全然、時間がない
時間はないけど
時間は、ある
始業時間だ
必死で、走る
息が、切れるほど
息は、切れる
諦めて、はあはあっ
膝に手をついて
俯いたまま
はあはあっ
もう、走らない
走れないから
先生への言い訳
どうしよう❓
毎日だから
もう、浮かばない
時は、過ぎていた
でも、それでも
過ぎた時を
追っていた…
そんなだったな
中学生、高校生
ずっと、そんなだった
やがて、引きこもり
なのに、開き直れない
何にもしないのに
しようとしないのに
時を、追っていた
追いもしなくて
溢れて行く時を
失われそうな時を
追っていた
いつまでに、どうしなければ
おまえは、終わりだな
そう思って
いや、もう終わっていた
でも、そう思って
引きこもった気持ちの片隅は
時を、追っていた
追わないのに、追っていた
でも、少しは
おとなになって
立ち上がって
なんとか、縋りついた
時の残滓を
追い始めた
立ち上がって
それなりに、追ったよ
間に合わせなけりゃ
いついつ迄に
必ずだ、必ずやれ
出来なくても、やる
間に合わなくても
時を、追っていた
縋るように、追っていた
…今は、それはないな
時は、気になるけど
あんまり、追わない
追わなくても
結構、追いつく
それに、時間がある
いっぱい、ある
本当は、ないけど
いや、まったくないな
きっと、ない
それでも、あんまり
追わない
取り敢えずの時には
だいたい、間に合っている
いや、時は
追うもんじゃなかったのかな
追われるんだったのかな
おまえは、ずっと
時に、追われていた
そう言う事だな
そして、今のおまえは
時には、追われていない
追われるほど
時が、ないのかもな…
