子どもの頃に、拾って来て
捨ててしまった、あの子
あの子のことだ
しろは、ほら
だって、こんな風に
お利口だったんだよ
最初、おまえは
なんにも、分かってなくて
しろは、賢くないのかって
一瞬でも、そう
思っていたよな
本当は、賢くないのは
おまえだったのに
それで、あの子だ
父親から
トイレを、覚えられない
賢くないから
うちでは、飼えないって
そう、言われるままに
言い返せない、そのままに
おまえは、あの子を
捨ててきたんだよな
でも、本当に
そうだったのかな
確かに、しろは
二、三日で、覚えた
いや、それは
おまえの方がね
多少は、おまえも
賢くなったのかも知れない
でも、あの子どものおまえは
こいぬが、父親に
無闇に、叱られていても
助けてあげられなかった
あの子は、捨てられていた
だから、きっと
あんな家の中の、木箱で
無理強いされなければ
普通に、庭で
トイレは、済ませられた
そんな賢い子だった
そうなのかも知れない
確かに、あの子は
木箱では、一週間経っても
出来なかったけど
それは、父親やおまえが
愚か過ぎた
だけかも知れない
しろは、ひょっとして
あの子の生まれ変わりで
おまえの愚かさを
教えてくれた
そうだったのかも、知れないな
いや、それは違う
おまえは、そんな風に
なんとか、赦されたいだけだ
あの子は、あの子で
しろは、しろだよ
だから、あの子のいのちは
戻るはずもないんだ…
to be continued