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カオスの世紀

カオスとは「混沌」、そしてこの21世紀に生きる自分の混沌とした日常を気ままに書き綴っていきます。

嫌われ松子の一生(ネタバレ注意)

2006-06-04 | 映画(邦画)
いきなり水曜サスペンス劇場で、お約束の片平なぎさと、本田博太郎UPAAAA!でマニアックな笑いで僕を引き込んでしまった!そういやクドカンも出てるぞ。

女の子なら誰だって、お姫様みたいな人生に憧れる。川尻松子(中谷美紀)もそのひとり。でも、現実の彼女の人生は・・・物語は松子の死から始まり、彼女の甥の川尻笙(瑛太)をストーリーテラー役にして、彼女の一見悲劇的な?人生を辿っていくストーリー。

登場人物がとにかく多い!でも全員が印象に残るほどに見事な個性を描ききっている。普通、これだけの人物出てきたら、整理付かなくてダメになってしまう映画は多いけど、この映画は違う。
しかし、良く集めたなあというくらいの個性溢れる俳優陣。俳優と言っても、筋金入りの俳優から、お笑い芸人、アーティスト、俳優といっても、映画俳優、テレビ俳優、演劇俳優と多岐にわたる。
ちょい役でも印象に残る演技だ。これは監督の力以外の何者でもない。
お気に入りは松子が憧れる同僚の爽やか教師役の谷原章介。あの嫌みなまでの白い歯を見せる笑顔。爆笑です。
松子を愛人にする小説家岡野の劇団ひとり。彼の演技は定評があるけど、切れる演技は見事。
ちょっといかれた松子の隣人にガレッジセールのゴリ完全にいってしまってます。ちょい役ながら、監督の前作下妻物語に出てた土屋アンナも切れた役で印象に残るし、牧師役の嶋田久作は相変わらずの存在感。
本当に癖のある俳優が一瞬で記憶に残る演技をしていく。

主役の川尻松子役の中谷美紀は悲劇的な主人公の人生を湿っぽくさせない、見事なまでの体当たり演技で観衆を魅了する。彼女の一途な愛に捧げる姿は、松子の周りがどんなに変わろうと一環している。悲劇的なヒロインからやがて神のような存在になっていく為の、裏付けになるしっかりした演技があればこそ、この映画は成り立っている。
既に彼女は自分の中では最優秀主演女優賞候補だ。

意外に良かったのは松子の甥の瑛太。ひょうひょうとしながらも、彼が段々と松子の人生に共感を覚えていくその心の動きを見事に演じている。若いオダギリ・ジョーにそっくりな感じ。

松子の故郷は福岡県大川市大野島。そして松子が人生最後に見つめたのは東京都足立区日ノ出町
その二つの土地に共通するのは川。大野島には筑後川が悠然と流れ、松子はそれを懐かしむように日ノ出町の近くを流れる荒川の河川敷に佇む。このシーン、ぐっと来ました。なぜなら、僕は江戸川区平井に住んでいて、そこには荒川の河川敷が広がっていて、昔遊んだ母の故郷、久留米市の筑後川と良く似てるなあと思ったから。いきなり自分の人生にもオーバーラップして、ここでこらえきれず涙がポロリ・・・僕も故郷福岡を思い出して荒川に佇んでいた事あったなあ。

そして涙の止まらないラスト。あまりに悲惨な松子の最期。思わず、絶句してしまう衝撃の最期
松子を最後まで愛した男。龍洋一(伊勢谷友介)が言う「松子は俺の神様でした」。松子はどんな悲惨な状況にあっても、愛する人を信じ、明るくあろうとする。笑わない父を喜ばせようとした、あのひょうきんなバカ顔。それが最後には天使の顔に見えてくる。

そしてラスト。悲惨な最期を遂げた松子は懐かしい故郷へと帰っていく。そこには絶縁して松子に冷たくし続けた弟川尻紀夫(香川照之)がまだ明るく松子を笑顔で迎え入れる我が家があり、厳格な父恒造(柄本明)がいて、母多恵(キムラ緑子)が居て、一家団欒の風景がある。そして、2階へと進もうとすると、病弱でほとんど寝たきりながら松子の事が大好きな妹久美(市川実日子)が階段の上で大きく手を広げて待っていた、「おかえり」と。そして松子は笑顔で言う「ただいま」

時に人は自分の尺度で、他人の事を勝手に幸せだとか不幸せだとか決めつけてしまう。
松子の人生は一見すると悲劇的だ。でも本人に取ってはそうだったのだろうか?
それを決めるのは彼女自身でしかない。どんな境遇にあっても、松子は明るく歌い続ける
彼女が見たデパートの屋上の夢の舞台の主人公のように、煌びやかな人生の主人公であり続けようとした松子の一生。
明るく歌い続け、どんな時にも絶望をしなかった彼女の人生。最後に彼女を暖かく迎え入れたくれたのは、暖かい彼女の家族だった。そして、彼女の愛すべき家族の一人が彼女の思いを受け継いでいく。そうあの雄大な筑後川のように・・・


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