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☆ 世界を凌駕して宇宙まで響け !!




  

小説(37)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-31 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
寄居総合病院のベットに横たわり、何故か、胸騒ぎを俊輔はしていた。
その理由ははどこからくるのか?
自分でも分からない。
独りポッンとベットで寝そべっている自分に苛立ちも感じていた。
その感情がどこからくるのか、分からない。
でも、何故か、美樹の存在が大きくなり、その感情はどうしようもない。
打ち消しても、消えるものでなく、内ち消そうとすればするほど、ますます大きくなってくる。

(美樹・・・)そうつぶやく・・

そこに看護婦の大島さんが病室に入ってくる・・。

「どう、具合は?」
「・・・まぁ・・」
「はははははは・・・・」大島さんは明るい
「・・・・」
「彼女のこと考えているのでしょ!!??」
「えっ?」
「まぁまぁ・・・ハハハハ・・・・この間来た、2人・・・ステキな彼女じゃない」
「・・・・」
「どっちか、当ててみようか?」
「冗談はよして・・・」
「あははははは・・・・図星!!」

俊輔は本当に、現在の自分の揺れ動く気持ちを見透かれるような思いで、話を誤魔化す。

「大島さん!!・・・」
「何かしら?」大島看護婦
「この間、私を見つけてくれた?」話す途中で
「そうそう・・・あの子らのお母さん、しっかりしているわ」
「・・・・」
「カブトを捕りに行ったでしょう?・・・」
「・・・・・」
「それであなたを発見したのよ・・・」
「偶然にね・・」
「そうなの・・・だけれどね・・・2人のママ、しっかりしているわ・・・」
「????・・・」
「カブトや虫採りにしても、決して殺さないのよ・・・・」
「・・・・???」
「お母さんから厳しく言われているんですって!!」
「どういうこと??」
「カブトを捕まえてもいいけれど、ちゃんと帰すのよ」
「と、言われていたんですか?}
「そうなのよ・・・どんな小さな虫でも、命があるのよ、と言われていたのよ!!」
「ふーん・・・」
「だから、あなたは幸せよ・・・」
「・・・・・・・」
「命を大切にする・・・教えを受けた若いママの子供に救われたのよ」
「・・・・・」俊輔は、成る程と・・・
「こう言う私も、何がなんだか、最初は、分からなかった、けれど、子供を育てて見て、なんとなく分かったのよ」
「・・・・・」
「いろんな教育方法が言われているでしょう?・・・」
「・・・・」
「何が、間違いない、ものと思う?」
「・・・・・」
「教育に関しては、その間違いない方法とは・・・???・・・・」
「・・・・・・・・」
「命なのよ!!・・・どんな小さな命でも大切と、思う心・・」
「・・・・・」
「そこなの・・・・・若い2人のママ・・本当に立派ね」

俊輔はまだ、実感がなく、ふんふん、うなずいて聞いていたが、どんな命も大切という、教育は、本当にすべてを乗り越えて、一番、大事か?と思うようになりつつあった。

命を最も大事、という教育をされたに子供に、おかしくなった、という子供はのことは、聞いたことはない。

教育の根本に、生命を置くところに間違いのあるものは出てこない。

有名無名を問わず、母なる偉大な慈しみに則った、命を大切にする教え、教育を受けた子供らは一番、この世に生を受けて、幸せ・・・。

なぜなら母ほど、無条件で、我が子を最も、大切に慈しみ大事にする存在だからだ。
その慈愛を満身に受けているからだ。
この受けた慈愛を忘れなければ、いかなる犯罪も起きようもない。

母の慈愛こそ最大最愛の教育!!!・・・・・・・・。

「俊輔さん!!・・・」

瞬間、物思いに耽って、はっとして、我にかえる・・・・・・・。

「早く、子供つくりなさいよ!!・・・・・はははははははは」看護婦の大島さん






小説(36)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-30 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
新宿警察は多忙。
細かい道を尋ねてくる人間らが途切れなく聞きにくる。
係りの担当者は、そんなことでも嫌な顔一つせず、懇切丁寧に対応していた。
不祥事を一掃しようという意気込みが見られ、それがこうした小さい事の対応にも現われていた。

路上生活者の誠は、フラリと新宿警察に立ち寄った。身なりは、いかにも路上生活者らしかったが、ほんの少し前までは、れっきとしたデザイナーで、それも腕のいい社員。
自由自在な生活にあこがれて、路上生活になったが、まだ、この分野では素人。
サラリーマンが抜け切れていない。
担当の警察官は、うろうろする誠を見つけて・・

「何か?・・・」風体を見ながら
「いえ・・・ちょつと事件を目撃しまして・・」
「えっ!!・・・なんだって?」
「誘拐です・・・・」
「ちよっと・・・ちよっと・・君」昔、流行した言葉が警察官の口から
「誘拐を目撃したんです・・・その事をお知らせに」
「どこで?・・・まぁ・・こっちに来て・・詳しく」

誠は今朝、見たことを一部始終、見たとおりのことを話した。そして、車のナンバーについても付け沿えた。

世界資源探査ナンバー2の亀井は、その本当の素性が分からない。年齢も自称、63歳と言っているけれど、本当か、どうか?
でっぷり太り、押しの強さを出している。
脂ぎった体格でいるが、目は、決して顔の笑いとは違い、にぶく光っていた。
その目には、すがすがしさというものとは、全く、対比する、冷たいものが沈んでいる。
これは噂の域に出ないけれど、以前、現在の地位を確保するまでの、経歴の中で、あの悪名高き『闇金』に従事していたらしい。

それに手を染める前は、最初は、2万円までしか貸さないルールを自分で作り、それも貸す相手は、タクシーの運転手。利息は、月50%
1万円を借りれば、5000円が毎月の利息。
借り手が、給料日に2万円を返しにくると、元本は受け取らない。

「おう!!1万円でいいよ」

こうして、借り手の方も、利息分だけ払って、楽になり、翌月へ・・・・

小口暴利で、稼ぎに稼ぎ、一年間で2億円以上を稼いでいた。
そして、ボロ儲けた資金をさらに貸付原資にして、短期間で、数億円の金を手に入れた。
ここからが、亀井の真骨頂。

(いずれ警察ざたになる)と、踏んで、自分の持っている顧客リストと債権を売り飛ばし、
また億単位の金を掌中にしたのであった。

その後、手にした暴利からの資金を元手に、何食わぬ顔をして、裏のビジネスから表のビジネスへ変身していった。
この事は、部下の一部しか知らないことだった。
今は、世界的規模で活動している世界資源探査のナンバー2なのだ。
しかし、不気味な目の光はその頃からの名残りでなく、本性から出ているもので、生涯変わらないそうした世界に住んでいる住人でもあった。
命がその世界であった。

金は腐るほど手に入れた。だが、まだ、欲しい。欲に限度がなくその欲を自在にコントロールも出来なかった。
権力も欲しい。
人を自在に操りたいのだ。
その舞台が、世界資源探査なのだ。
生命は汚れきっていた。
見た目の第三者は、世界規模の組織のナンバー2ということで、誤魔化されているが、実態は、性悪人間だった。
濁りきった生命からは、何の、清涼感も醸し出されないのは当然だ。

世界資源探査の他のメンバーも似たりよったりのものだ。
要するに、類は類を呼ぶ、という風に、集まった悪の集団。
困ったことに、表面は『善人』を装っていたことだ。
社会はそれに、コロリと騙されていた。

しかし、人生とは不思議なもので、いかなる人間も自身の運命からは逃れない厳しさがあり、亀井も例外ではない。
他のメンバーも同様。
まだ、その厳しさに直面していないから、分からないだけの話だった。
その厳しさに直面したした時、こいつらはどうなっていくのか?




小説(35)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-29 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
路上生活の朝は早い。
どこともなく絶え間なく聞こえてくる虫の声で起される。
公園に生えている草むらにひそんで啼いている。
木々は昨夜の豪雨で、しっとりと濡れて、どこか勢いを増しているようだ。
誠はいつものように、ブルーシートから起き出し、キャンプ用の簡易コンロでコーヒーを沸かして、手製のイスに座ってコーヒーを飲む。

まだ少し、暗かったが夏の夜明けはもうすぐ・・・・・・・・・。
本格的な夏の朝はセミが教えてくれる。
すがすがしい朝の空気を独り占めして、優雅なモーニングコーヒー・・・
風変わりな生活を堪能はしていた。
誠はブルーシートの前に、描いた絵と物々交換で得たカップとコーヒー豆で、こうした優雅な生活を享受していたのだ。

公園全部が、誠の別荘地。かなり広い。ただし、まったくただで、手にした(?)ものだ。
少し散策し始めると、セミが啼き出した。
朝の到来・・・

木々の合間からは力強い朝の太陽が、光彩を放ち、木々の横から徐々に、周囲を照らす。
それと同時に、早朝の通勤の人々も動き出す・・・・・・
だけれど、一番手ではない。
虫たちが一番手・・・・・・・。

朝の時間の経過は、あっという間に過ぎ去る。
誠のように時間を自由に出来ている、縛られない者でもそれは同じ。
公園内の時計を見ながら散策する誠。                         
(もう午前8時40分か・・・)

いつものようにいつものコースを散策していると、見慣れない黒のワンボックスが止まっていたことに気が付いた。
その車が静かに何かを狙っているように動き出す。
豹が獲物を狙うように・・・
不審な動きだ・・・
ソロソロと・・・
車の先には2人の女性が、歩いていた・・・・・・。
たまたま同時間帯で一緒になった美樹とアカネ。

「お早う!!」
「ずいぶん早いのね・・」

まだ、通勤する人達はまばら・・・・
そんなに多くの人達はいない。
それを狙って、黒の車は、猛然と獲物を狙って走り出す・・・
アッという間の出来事だった。

美樹とアカネが誘拐された。

目の前で起きた、出来事にのんびり散策していた誠は、ギッとしたが事情はすぐ察知した。感がよかった。

(何か?)とっさのことだった。

走り去る車のナンバーを記憶した。絵を描く誠にとっては、風景の記憶もさることながら、車のナンバー位、簡単だった。
まさか、誠が車のナンバーを記憶しているとは、バカどもらは知る由ない。

車内では、すぐ口を押さえられ、バカどもに拘束された美樹とアカネ・・・・

「騒ぐなよ!!・・・・静かにしていれば何もしない・・・」

車中には4人の男達。
恐怖でおののく美樹とアカネ・・・・
4人の内の誰かが言う・・・・・

「うまくいった!!」
「へへへへ・・・これで兄貴から、ほめられる」
「しかし・・・こう近くで見ると、いい女だ!!」
「おい・・・そのことを考えるのは後だぞ!!」
「ただ、言っただけさ!!」

聞こえてくる卑猥な男どもの声に、2人は身体を硬直して寄せ合っていた。

(どこに連れていかれるのだろうか?)
(一体、誰なの?)

2人にこれから襲いかかる未知なる不安と恐怖に、誰も助けがないのだろうか?
心なしか通り過ぎ去る公園の木々も何故か、淋しそう・・・・・。
虫たちも黙りこんでいる。




小説(34)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-28 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
米連邦準備委員会、通称、FRBはドルの世界基軸通貨制度には、厳しい目を光らせている。それもそのハズで、アメリカの金融政策の根幹を担っているからだ。
日本で言えば、日銀。
ただし、日銀と決定的に違うのは、国と民間。そして、規模と影響力がまるで違うことだ。アメリカの金融政策を民間が仕切る、というのも不思議な話だ。
この民間の団体の、本当のトップは一体、誰なのだろうか?
ドル紙幣を自在に刷る権利を持っている、人間だ。
1ドル紙幣の裏のピラミッドアイが見つめるものは何か?
ドルの世界基軸制度の守護者として、それを脅かす存在に対してでか?

秘密結社、一方で、フリーメーソンといわれる、この組織の始まりの淵源は、石工の集団と言われる。ピラミッドを作ったのも、彼ら石工が中心であった。

油断は禁物・・・・。
美樹とアカネは、俊輔の無事を確認してからは、それぞれの自宅から日々、新宿の研究所に通う。せっかく用心を重ねたことを、もうすっかり忘れていた。

「美樹・・・たまには、ビヤガーデン行かない?」
「そうね・・こんなに暑いんだしね」

2人は揃って、新宿西口公園を歩いていく・・・・
公園には、ブルーシートがチラホラところところ見える。
彼らもなんか、暑そう。
政治がダメなのだ。ここに居る人達一人一人様々な事情があって、路上生活をしている。
誰も、好き好んで路上生活をしているのではない。

現実の姿がここにある。

この現実をどう打開していくのか、というのが政治家連中の仕事なのだ。

彼ら?
何をしている?
豪勢な社宅に居て、ふんぞり返っている。
エラソーに、ただ、ペラペラしゃべりまくっている。

路上生活者の誠は、自問自答していた。

(お前等、芸人か?!!
政治家は、最も苦しんでいる人々に光を当て、法律を作り、実行していくのが、仕事。
バカども!!
もう手に負えないほど、バカなのだ。
しかし、バカは自分がバカとは認識できない。)タバコを吹かす。そして・・

(もともと政治屋というのも、おこがまし。いい名前の方だ。
本来、国民の奴隷なのに、何時の間にか、本末転倒して民衆を見下ろしている。
ふざけた野郎たちだ。
税金で喰っている、奴らなのだ。その税金は、どこから、得ているのか?
難しく考える必要なんか、一切、ない。
民衆が王であり、政治屋??

こんなのは奴隷だ。

奴隷が、エラソーに、グダグダ言う。
今まで、黙して静かに怒りを持っていた、民衆が、必ず、立ち上がる時が来る。
もう民衆の新時代に入っているのに、バカは分からない。

何が、美しい国?
路上生活が?
何年か前に、そう言った政治屋がいた。
二世、三世議員で、世襲で、仕切っていた、甘い汁は、もうこれからは、目覚めた民衆が許さない。
本当の、志を持って、ただ、ひたすらに、生涯、民衆の幸福の為に命を捧げる人物が出現
するには、もう少し待つしかない。)バカに変わるまでと、誠はつぶやく・・。

新宿西口公園で、横になっている鋭い批判精神を持った、路上生活者の誠が、通り過ぎるサラリーマンやOLらを眺めながら、拾ったタバコに火をつけながらこんなことを思っていた。

そのブルーシートテントに隠れるように1台のワゴン車がじっと、美樹とアカネの姿を執拗に追っていたが、まだ、2人はそれに気が付いていない。

「オイ、出てきたぞ!!・・・やっとだな・・へへへ」
「あの女ら、結構、いいじゃないか・・ヒヒヒヒ・・」

ワゴン車の中では卑猥な目つきで、美樹とアカネを追う・・・・・・。

小説(33)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-26 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
俊輔の無事が確認され、ひとまず美樹とアカネらも安心し、アカネも自宅から研究所に通うになった。池袋にある自宅では父母と弟の4人が夕食の談笑をしていた。

「あなた、俊輔さん本当に、もう大丈夫なの?」
「えぇ・・お母さん、奇跡的だって先生も言っていたわ」
「お姉さんは、これでひとまず、心配事が消えたね」
「アカネ、それにしても、どんな連中がそんな事をしたんだろう?」父
「分からないわ・・・警察の方でも、今、いろいろやっているみたい」
「あなたも、気をつけてね」母親は眉を曇らせて言う

東京湾の海上にそびえ立つ、世界資源探査の本部には、4人の幹部が定例会議を開催していた。東京湾の埋立地に建つ高層ビルは彼ら、資源探査の連中らにとっては、交通の便も便利だし、また、海底資源を得るにも、ピッタリの立地条件になっていた。
世界資源探査は、表向き、財団法人だったが、このグループの実態は、外部からは分かりにくい。
エージェントは世界各国に存在し、その数は、数10万人ともいわれていたが、誰一人、全貌は把握していない。
彼らの究極の目的は、資源の独占であり、資源を介し、とんでもない狙いを待っていた。
衛星をふんだんに駆使し、ありとあらゆる世界の資源資源情報を把握しようとしていた。
今まで、ピラミッドから発見された、黄金プレートについては、単なるお遊び程度しか、認識していなかったが、ジャパン考古学アカデミイの総裁の記者会見をキッカケに、従来の取り組みを改めるようになった。
今夜の、定例会議は、その為の方針決定会議でもあった。

欲が欲を呼び込み、それに限度というものがなかった。
彼らは壮大な計画を秘めていたのだ。
それを実現する為の組織、人材を揃え、そして資金もたっぷりあった。
国家を超えたグローバル組織といってもよい位巨大化していた。

「先を越されてはならない」断固としたリーダ各の丸山が言う
「斉藤さん、世界考古学研究所の方はどうなっていますか?」太った亀井

組織の目的遂行に立ちはだかる、困難なダーテイな仕事は、斉藤が仕切る分野だ。
この会議で決定された事は、そこにどんな障壁があろうと、貫く。
この実行力が、世界中に広げたこの組織の強さであった。
場合によっては、戦争を手段にも使っていた。
目的達成の為は非合法のこともやる恐ろしい集団だった。
ただ、表向きは、高尚な目的を掲げて、社会、世界を騙していた。

謎に溢れた組織だ。

そして世間的には慈善活動も行い、善の行為をするという、虚飾の組織、もっと突っ込んでみると悪そのものだった。
主義主張なんて、青臭いことは、とうに忘れていた。

「今、報告を受けている範囲では、まぁ、使い物にならない」斉藤
「まぁ、素人に毛の生えた程度の連中を使うのも、その辺にしておいた方がいい」丸山
「我々には、そう時間がないんだ」強欲な足立が言う
「まぁ・・その辺は充分、承知しているがね」ムッとして斉藤

(じゃ・・お前がやればいい)と、斉藤は内心思っていた。

この組織も実情は、一枚岩ではなかったが、それはさすがに、欲という一点で結びついていたので表面的に喧嘩しない。
どんな巨大な組織でも、人間が営んでいる以上、人間の持つ本質からは逃れきれない。
それが出てくる。

美樹は、改めて、自分の心がこうなっていたのか?と自分で自分を新たに発見して、ビックリしていた。
俊輔のことだ。
今までは、なんでもなかったのに、俊輔のことを強く意識するようになっていた。

(私、恋しているのかしら?)
(恋って、こんなにも孤独で苦しいものなのかしら?)
(でも、遇いたい・・)
(どうしているのかしら?)
(後遺症は大丈夫かしら?・・・俊輔のことだから大丈夫と、思うけれど)

彫りの深い綺麗な横顔から、憂いの表情が、色濃くなっていく・・。

(こんなに世界には男がいるのに、全く、目に入らないのは、何故?)

紅茶を一口、飲むけれど、それも喉に通らない。


バカの5人組は、自分等がどうも失敗続きで、お払い箱になるのではないか、と戦々恐々としていた。しばらく、新宿の考古学研究所の周りをうろうろしていたが、美樹とアカネの姿は見かけない。
しかし、ここ一発、逆転ホームランを上げないと、どうなるか分からない。
バカはバカなりに必死だった。

この執拗な行動が、美樹とアカネに、新たな苦悩と遭遇するとは思いもよらなかった。

小説(32)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-24 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
なんの打算も利用しょうとする気持ちのない美樹とアカネの見舞いの後には、一陣の爽快な風が吹き抜けていったような感じを受けていた俊輔。
ただ独り、病室のベットで、横たわりヘッドホーンで桑田の曲を聴いていた。
桑田の曲は、こう聴いてくると、レパートリィが多く広い事を改めて、感じた。
そして、意外に、元気になってくるのだった。

その内、ヘッドホーンから聞こえてくる曲以外に、さまざまな思いが、切れ切れに浮かんでは消えていった。
まるで夏の雲のように・・・

(3000年前、3500年以上前の古代の人達も、病気、死というものに直面した時、それらにどう立ち向かったのだろうか?ということに、思いを寄せていた・・
人間の持つ厳しい運命というものに・・・
フアラォも市民も、これからは逃れられない・・・

どんな人々も、人間である以上、平等に抱える人間の持つ運命・・
古代人も現代人も未来人も差別はない・・・
男も女も老人も子供も関係なく・・・・
そして民族も関係なく・・・
・・・・
そうだ、真理、真実というものは、意外に、身近にあるのではないか?)ベットの上で、俊輔は、独り静かに、模索していた。

(古代の人々からのメッセージは、単なる、黄金伝説ではないだろう?
もっともっと、深い人間真理、本質に迫ったものではないだろうか?

死から生還した今なら、なんとなく、古代の人々の苦悩が分かる様な気がしていた。
時代に関わらず、人間に具わっている苦悩、喜びには、時代という『時』を超越して現代にも、未来にも通じるものに、きっと違いない。

俊輔にとって、今回の経験は、自分という『者』を知る上で、貴重な体験だった。

(物理学は物理学の法則、化学は科学の法則、経済は経済の法則、社会は社会の法則がそれぞれあって、各分野で途切れなく、研究が続けられている。
そうした間断のない努力の結晶から、新たな発見がなされていく・・・。
新しい発見は、さらにそれを土台にして、又、新しい発見へと昇華していく・・・・。
自然界を人間は、理解を深めれば深めれば程、ますます、自然の深さと広さを知る。

決して、全てを理解したとはいえない。それは間違いない・・・
理解した、という人間ほど、自分の傲慢さを知らしめる結果につながる。
科学の追及は、人間を知ることに他ならないのでは?
芸術も同じさ・・・

すべての学問は、究極的にはここに、帰着する。

なんの為の学問?
何の為の科学?
経済の為? ・・・・・   俊輔は自問自答

究極的には、人間の幸福と平和の為に、全てがあるのでは?
と、するならば、『人間』を知る、即ち、『生命』を知ることが、全ての、ありとあらゆる問題の根本的な解決の方途が、あるのでは?・・・・・・)俊輔の思索はここまでたどり着いた時、弱った身体の中から、どこからか、強い命のほとばしりが湧いてくるのを実感していた。

そして(まさか、古代の人々が、この答えを教えてくれた?・・残してくた?)と・・・。

ノーベル賞の100万倍以上の価値あることを・・・・・。

まさか??
そんな!!

ベットから見える暗い夜空には、あたりの闇を突き破るように光輝く白い月が・・
まるで、俊輔の生還を微笑んでいるように・・・・
虚空に・・・。



小説(31)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-24 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
記者会見後の、マスコミ各社の報道振りを見て、山口は満足していた。
権威が保たれたからだ。汗水垂らして、現場で苦労している村井らの努力なんか、屁とも思ってなかった。
業績は横取り、が彼等にとっては当たり前なことなのだ。
それを指摘したりする人間もいない。
国内では一番、権威がある組織のトップらには誰も、腹とは違って、表立って立ち向かう人間は、余りいない。
下手に、対立、楯突いたりでもしたら、どんなことをされるか、無用な摩擦をさけて、変な大人の感覚で、事なかれ主義を貫いていた。
我、関せず、といったものだ。
彼等、ずるく根性の悪い連中は、そうしたことを見越して、ますます権威、権力を振りかざす・・・・・・・・・。

「ピラミッドには黄金が隠されている」と、巧妙に結論めいた事を記者団に発表。
その結論に至る根拠を明快には言わない。
この辺が、ずるさを身に付けた常套手段であった。
要するに、権威ある組織がそう結論めいた事を言うのだから、後は、勝手にそれをどう捉えて、発表、報道するのかは、あなた方の自由ですよ、というズルさ・・・・。
報道されれば、後は、情報が1人歩きし、ますます、権威を高めていく。
アカデミィ的真摯な、好奇心なんか、なんとも思わない。
権力、権威の維持しかないのが、この連中の一番の関心事であり、もっとも執着していることだった。
その為、自分の牙城を守る為には、どんなことでもした。
根性は、卑劣極まりも無い。
ただ、それは表からは見えない。
むしろ、表面は、名士、紳士面していた。


ベットから仰ぎ見る天井は、無味乾燥なもの・・・
俊輔は、まだ、痛みが残る身体を労わる様にして、ベットから、ボッーと天井を見ていた。

(でも、本当によく、生きていた・・・)つくづく、そう思っていた

病室の外は、時折、もう秋の気配を感じさせる、そよ風が吹き抜ける。
窓の近くに植えられている緑が、痛む身体を和らげてくれる。
自然とは、なんでもない時には感じないが、こうして弱った時、優しく包みこんでくれる、母なる海のような大きな存在。

俊輔は、そよ風を受ける度に、感謝・・・・・・・・・・・。

(生きていて、よかった・・・生かされて、ありがたい)と・・・・・・・。

大自然の不思議な哲理に、心から、感謝している自分だった。
と、同時に、人の命の大切さを身体全体で感じていた。

(俺が何にも、力のない、俺が・・・こうして、生きているということは、決して、偶然ではない?・・・・・こんな俺でも・・・何か、生きている意味があるのだ・・・外の木々、ベットに飾られている「ひまわり」、ベット、全てが、何か、意味があって、存在しているのだ・・
意味が無くて、存在するものなんて、この世に、一つもない・・・・
そんな、俺が、生きているということは、必ず、意味があって、生かされているのだ
・・・俺が?
・・・こんな無能な俺が?
・・・こんないい加減な俺が?
・・どんな意味が、俺の人生に?
今は、分からない・・
でも、どんな人間も、俺が生かされているように、必ず、この世界で、なくてはならない存在なのだ・・・・・・
そう考えないで、意味があるのか?
この世界が・・・)俊輔は、九死に一生を経てきた、経験から、強く強くそう思うようになっていた。

生かされたこの命、決して、粗末にはしない生き方をしていこう、と、深く深く心に決めていた。

そんな時、病室のドアーが開く・・・・・・・
美樹とアカネ。

「元気そうじゃない!!」
「アイス食べる?」

どんな時でも、いつもいつも心配してくれて、勇気付けてくれる2人。
どちらが男か、分からない。

「あの世で見た、クレオパトラより2人の方が、よっぽど、ステキ!!」
「あぁ・・・・また、俊輔の冗談!!・・あはははは」
「はははは・・・・」

明るい笑い声が部屋中に響き渡って行った・・・・。


小説(30)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-23 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「無事!!」
「生還した!!!」
「あの世を見てきたって??」
「元気、元気!!」

村井、ミドリ、大沢、沢井のパソコンには、美樹とアカネからのメール。

バンザイ!!
良かった!!

4人はみんな大喜び・・・・・・・・・・。
本当に、心から心配していた事が、今、こうして朗報となって来た事で、肩の荷が降りた。これで、なんの憂いもなく、研究に取り組んでいける。

「よーし!!頑張るぞ!!」呼吸も一緒。

口先だけの仲間ではなかっのだ。

霞ヶ関のビルの中では、4人の男達が、だらしなく銘々のイスにふんぞり返って、雑談に耽っていた。ジャパン考古学アカデミィーの面々だ。
これから、記者会見が始まる。
その為の、待ち時間を雑談で、費やしていたのだ。

トントン・・・時間です。事務員が記者会見を知らせる・・
山口を筆頭に4人は立ち上がる。

「大変、お待たせしました・・・私どもが、これまで調べて、分かったことをご報告させて頂きます」山口が口火を切って話し始める

記者等はメモの用意をする

「ピラミッドで発見された『黄金プレート』からは、大変なことが分かりました」

この大変、という言葉の次を記者等は、待った
山口はもったいぶって、1拍於いて、話す
白ヒゲの口元を記者等は待つ。

「うん・・・・」咳払い
「・・・・」
「このプレートの解明には我々は、ずい分、苦労しました」何か偉そう
「うんうん・・・」又、咳払い。もったいぶっている。
「えー・・・△と○が同一、横並びになっているプレートは何を意味するのか?」

記者等は、肝心なところに来て、集中して聞き洩らさないように・・

「えー・・・結論を申し上げますが・・」

早くしろ!!と感じている記者等もいた

「ピラミッドと○が同じということは、同じです」
「はっ??・・・同じということは?」すかさず質問が投げかけられる
「それはですね・・・黄金がピラミッドと同等、或は、それ以上ということです」
「ということは、その位、黄金がある、ということですか?」
「そうです・・・・・・」自信満々に答える
「どこにですか?」鋭い質問
「・・いや・・・・・・現段階では、それ以上を申しあげられません」

その一言で、ざわざわし始めてきた記者等

「ただ言える事は、黄金がある、ということです」ジャパン考古学アカデミィが言うのだ

勿体ぶった記者会見は終わった。
翌日の一般紙は

「ピラミッドに黄金が!!」

スポーツ紙は

「ついに伝説の黄金発見か」この『か?』というのが味噌。『か?』を小さくして、本文を読ませる紙面の工夫

一般紙、スポーツ紙共に、話題作りで、一斉に、報じて行った。

ジャパン考古学アカデミィの面々は、こうした報道を通して、権威ずけを行なっていた。
彼等自身は、なんら労作業をしていないのにだ。
村井らが一生懸命になって、現場で、灼熱の太陽の下、地道な作業をしているのに、手柄は、こいつら4人組が簒奪しようとしていた。
そして、陰では・・・・

「村井?・・・・あいつらに何ができるのか?・・バカどもが」と言って、侮蔑
「そうそう・・」山口に同調する平井

この4人組みは、村井らの業績に、嫉妬を抱いていた。男の嫉妬ほど、見苦しい。
嫉妬から更に、妨害、嫌がらせをしていた。
それも権威を盾にとってやるから、性質が悪い。
そして、村井らが居ない時を見計らって、やる。
陰湿な行為であるが、見た目は、一見、4人ともヒゲをつけ、偉そう。
権威付けに血眼になっているのだ。
もっとやることが、いくらでもあるのに、労作業はしない。
そんなことは、バカどもにやらせておけばいい、というズルい感覚なのだ。
そこには、真理の探究や好奇心、科学心なんか、毛筋ほどもない。

ただ、既成の権威の維持と、権力の行使しか、考えていない連中。
何故、妨害するのか・・・不思議でならない。
何故、一生懸命活動している人間を侮蔑し軽んじるのか、分からない
こいつらの腸わたを開いて見たならば、真っ黒か?
汚い命に犯され、表面面とは、似ても似つかわない汚れきった命
よく居る連中の中の1人に過ぎないが・・・・。

マスコミで大大的に報じられたことで、一気に、沈静化していた黄金の夢に浮かれ、それを得たいという、欲まみれの連中が動きだした。






小説(29)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-21 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「まだ、消息が分からない?」村井からのメール
「心配・・・分かったら、すぐ、連絡頂戴」ミドリ
「どうしたのかなぁ?」大沢
「長い夏休みは終りだよ・・何か、分かったら、連絡乞う」沢村

いづれも美樹とアカネのパソコンに入ってきた、メールだった。

美樹にとって、普段は、何でもなかったが、今、俊輔がいない現実に直面した時、何か、胸の中がポッカリと穴が開いているようだった。
その状態が長く続くにつれて、穴が次第に大きくなり、虚しさと寂しさとやるせなさの感情が、その穴を充満させていく・・・・・・・・

アカネにとっても、同じであった。

外は、いきなりのドシャ降り。スコール・・・
それまで、あれ程、うるさく啼いていたセミらも、スコールと同時に、ピタッと啼き止ん
でしまった。

美樹とアカネは弾けるような明るさで人を魅了していたが、俊輔が居なくなってからは、
いつも微笑んでいた顔や口元から笑みが消えて行った。
女性から笑顔を奪うということは、なんと悲しいこと・・・・・・。


「おーい!!・・・純ちゃん・・こっち、こっち」
「わかった・・・・・・賢ちゃん」

ここは夕方の林の中。小学生同級生の2人は、カブト虫を捕りに来た。
純一と賢はそっと、樹液の出ている古木の下に、忍び寄っていた。
2人とも、目が点になっていた。
カブト・・・・。
呪文のように、つぶやき古木を舐めるように見ていた。
なかなかいない。
そして、賢が、ふっと古木の横を見た時、・・・・
そこに人が倒れていた。
周りの葉っぱには、血らしきものがへばりついて、折れている。

「あっ・・!!」
「人だ!!・・・・・・死んでいるのか??」
「純ちゃん・・人が死んでいる!!」

あわてた2人は、おそるおそる覗きこむ・・・・・・・。
生きているか、死んでいるか、分からない。

「純ちゃん・・・・俺、ここで待っているから、大至急、誰か、呼んできて」

一瞬、1人残して行くを不安に思ったが、すぐ、走り出した。
倒れていたのは、俊輔。

寄居総合病院へ救急車で、俊輔は運ばれて行った。
事は、急を要していた。
意識不明の重体。
あと、1時間も発見が遅れていたら、おそらく助からなかったろう。
身元不明の若い青年の緊急患者。
意識不明の状態が、それから約一週間続いた。
身元が分からないが、病院から警察へ通報。ピストルで撃たれていたのだ。

「もしもし・・・美樹さんでしょうか?」
「ハイ・・・どちら?」
「新宿警察の者です・・」
「はっ??・・俊輔のことが?」
「どうもそうらしいのです・・・今、寄居にいます」
「ありがとう・・・・ございます」

美樹とアカネは、不安な気持ちを押し殺して、すぐに寄居総合病院へ・・・・・・。

暗い病院の廊下の、病室を探す・・・。
目当ての病室のドアーを、おそるおそる開ける。
居た!!
俊輔だ。
だけれど、まだ、意識が戻らないらしい。

側に立っている、看護婦さんに目線で挨拶して、アカネが聞く・・

「どうなんでしょうか?」
「なんとか、峠はこえたようです・・」
「そ、それで、大丈夫なんでしょうか?」美樹が咳き込んで聞く
「意識は?」

首を横に振る看護婦・・・。

その時、病室の外に、純一と賢の2人が、心配になって、毎日、様子を見にきていた。
その姿を見た、看護婦は、2人を招き・・

「この子等が、発見してくれたのよ」と、美樹とアカネに説明
「・・・」
「・・・」
「そう、ありがとう!!」美樹の目からは、みるみる涙が
「ありがとう・・・・・」声にならずアスカも・・

真っ黒に日焼けした顔の純一と賢も、美樹とアカネの喜びに、なんか照れくさくなって、そこに、もじもじ立っているのみだった。
そして、

(よかったなぁ)
(いいことしたんだ)

と、2共、思っていた。

病室が少し、ガヤガヤしたせいなのか、或は、聞き覚えの声に触発されたのか、俊輔の意識が、奇跡的に戻った。
目を覚ました俊輔は、何がどうなっているか、最初は、記憶を辿っていたが、少しずつ事情が分かり始めてきた・・・・・・。
そして・・・

「今、帰ったよ!」

俊輔のその声に、一同、ビックリして、ベットの横へ

「蓋のない石棺から、あの世から、戻ったよ」弱々しい声だったが、冗談を言ういつもの俊輔だ。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

外はスコールが止んだのか、一斉に、セミが啼く・・・・・・・・
大粒の涙を流しながら、2人はそのセミの声が、まるで、俊輔の生還を祝しているように思い、涙が、喜びの涙に変わっていった。

「バカ!!・・」



小説(28)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-20 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「何年か前さぁ・・・・・・」
「大沢ちゃん、それが?」ミドリ
「衛星を使って、新しい墓地の発見があったじゃない」
「それが?」
「それでさぁ、新しいミイラとツタンカーメンのミイラの分析がされた」
「そうね・・CTスキャンを使って、それと遺伝子分析ね・・それが?」
「いや、昔、ジェラシックパークで恐竜が現代に甦った映画みたいに、遺伝子を抽出してさぁ、ミイラを現代に復元したら、面白いなぁ、と思っただけさ」
「ははは・・・・・・・ミイラの再現ね」
「そうさ・・・・もし、それが可能なら、古代エジプト人が、現代の世界を見て、どう思うか、だ」
「完全にSFね・・ミイラが再現されても、記憶なんかないじゃない」
「ははははは・・・・・それも承知さ・・ただ、そんな風に、遺伝子を元に、現代に、古代の人が、再現されたら、面白いなぁ、と感じただけさ」
「大沢ちゃん・・・・・・・完全に、空想の話よ」
「まぁ、そうだけれど・・」
「ただ、今後、医学、科学が進歩して、空想が空想でなくなる時がくるかも知れないよ」
「それは可能性として、ない、とは言い切れない」
「でしょう!!」
「まぁ、今後の話だね」
「はははは・・・・」

大沢と沢村ミドリの3人は、若い発想からいろいろ、空想を交えて、話は飛んでいく・・。

一方、村井はテントの暗いカンテラの明かりの下で、静かに、物思いに耽っていた。

(どうして、こうも世界は、混迷と邪悪と争いに明け暮れているのだろうか?いや、そのような闇の世界に覆われているのだろうか?
不思議でならなかった。
多くの善良の人々は、当然、平和を願っているのに、何故、そうならないのか?
何故なんだろう?
宗教のドグマに覆われ、平気で自分も殺し、全く関係ない人達をも殺害する・・
何故、なんだ!!
金が全て、という風潮に覆われているけれど、それで、幸せが確保される、とでも思っているのだろうか?
どうしょうもない、運命に人は直面したした時、その金で解決できるのであろうか?
・・・・
俺も、若いなぁ・・)1人、そんなことを考え、苦笑・・・
そして、更に、空想は続く・・・・・

(結局、この世は、人間の世界・・・すべて、そこから出発している・・・・・人間を離れて世界はなく、人間なくして世界はない・・紛れもない事実・・・幸福になるのも不幸になるのも、全て、人間が生命の奥底で感ずることだ・・ならば、その人間とは、一体、何なんだ??・・・おそらく古代の人達も、究極のこの問題に悩んだに違いない
戦争をするのも人間、争うのも人間、平和を希求するのも人間・・全て、人間から出ていることだ・・・・
富者、貧者、権力者、非権力者問わず、死は、平等・・・・・当たり前のことだ・・
生もまた、平等・・・・・・どんな人も生きる権利があるし、幸福になる権利がある・・
それを奪う権利なんか、どんな人間も持ち合わせない・・・・・・
でも、現実には、そうではない・・そこに、悲劇が・・そこに不幸が・・・。
だとすれば・・・・ありとあらゆるこの世の問題、世界の問題の解決は、人間の解決しか、ないのでは?
人間の解決とは?
おそらくこの『解』を見つけたならば、ノーベル賞1万個、いや、それ以上に値するだろう!!・・・・人間の抱える不幸の原因を直視しその解を示すものだからだ・・
古代だろうが超古代だろうが、これから先の何万年先であろうが、人間が存在し続ける限り、この本質的な課題に直面するだろう…)村井は沈思黙考していた。

そして、側に置いてある日本酒をグイっと飲み干す・・。

(要するに、全ての、解決、問題は、人間の持つ諸々の問題を解明して、そこから根本的な解決の糸口が見出されるに違いない)と思うに至った。

この考察が、村井は自身はまだ、気が付いていなかったが、ピラミッドの暗号解読に、大きく大きく、一歩、前進したのであった。

一体、世界の誰が、この世界の本質、人間の本質に根ざした問題解決の、入り口に、たどり着き、進めていこうとしているのか?
どこにいるのであろうか?
すでに、悟った人は必ず、居るはずだ。

古代の人達か?
現代の人達か?

村井の横顔は、ランプに照らされ、古の哲学者のようにも見えていた。
しかし、何故か、どこか淋しさ、哀愁の横顔をも漂よわせていた。
というより、この世の不幸をなんとか、解決出来ないものか?
という、苦悩にも取れた。
そして、思う。

自分等がその『解』に懸命になっいるということは、世界の誰かが、共鳴するように、必ずいるハズだ、と。と、同時に・・・。

そう考えると、体の底から、闘志がわきあがってきた。仲間がいる。

また、戦う息吹をみなぎらせていた。なぜなら、必ず、妨害するする勢力、人間、作用がが出てくるからだ。
そんなものに、負けてたまるか!!という決意に燃えていた。

平和の為に・・・・・・
人々の幸福の為に・・・

今、自分等がやろうとしていることに、偉大なる価値を見出したのであった。




小説(27)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-19 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
日中の灼熱の太陽からは、夜には、少し冷たくなるような温度差で、ここ、テント生活も過ごしやすくなってきている。
村井以下4人は、夕食後にも、それぞれ意見を言い、フィールドでの成果をお互い、持ち寄り意見交換していた。
まず、口火を切って話したのは俊輔と仲のいい大沢・・・・

「所長の言われるように、ピラミッドそのものが、時間を象徴される、とした時、彼らは、最初のピラミッドを1000年、次いで1000年、そして最後には前期の2000年を経て、3000年以降へつないでいっている訳ですね・・・・その時間の捉え方に、何で、と思うですが・・」
「余り難しく考えない方がいいのかも・・衛星を使って、宇宙へ現代でも発信しているじゃない?・・・太陽系の位置を知らせ、そこに地球の存在を示し、その惑星には、男女の人間のモチーフの絵を描いて・・プレートを衛星に搭載した・・・」ミドリ
「あぁ・・・・・例の奴ね」
「それと同じように考えて見たらどうかしら?・・・言語も3000年以上の時を経た時、どのような言語が使われているのかも分からない。ちょうど、現代人が宇宙へ発信したプレートと同じような感覚よ・・・どこか知的生命体が、我々地球人が発信したプレートを発見して、それを解読するには、絵文字、図面、現代で言えば数式、方程式を記入して、地球という惑星とそこにいる我々のことを理解してもらう・・・・・どうかしら?」ミドリ

「それも一理あるなぁ」
「黄金のプレートは単なる黄金伝説でなく、『黄金の真実』なのかも?」
「つくづく思うわ・・・・・・何故、金が腐食しない、ということを古代の人達が知っていたのかしら?」
「それは、何代か、何千年か分からないけれど、経験知を継承させていったからだ、と、思うね」
「それにしても、黄金伝説か黄金の真実か、分からないけれど、答えは、何かしら?」ミドリ
「意外と、簡単かも知れない」村井
「えっ??」みんなどうして?という顔をして
「回答ではないけれど、よく言うじゃない。真理はシンプルだって」
「俺としては、黄金伝説に関心というか、面白さを感じるね」沢村
「沢ちゃんは俗物的だね・・・はははは」大沢
「そう単細胞だから・・・あはははは」
「ははははは」みんな大笑い

灼熱と細かい注意を集中した仕事で、日中、疲れていたが、こうした日々の努力の結果について、毎晩毎晩、討議を重ねていた。
こうした討議の累積の中から、ある瞬間、本当のことが分かっていく。
努力、努力の積み重ね。
一攫千金の山師的なところなんて、微塵もなかった。
今、そこにある古代の人々のメッセージ、先哲の啓示を必死になって探し求めようとするみんなであった。
先人の労苦と命がけで残した、ある何か、に対して、生半可な姿勢での取り組みは、許されない、という真剣なものが、溢れていた。

それが『黄金伝説』か『黄金の真実』かは、まだ、霧に隠れボャーとしたものではあったが・・・。

戦争がどこかで勃発していようが、テロがあろうが、ワールドカップが始まっていようが、地震があろうが、異常気象であろうが、何があっても、時は絶え間なく過ぎ去り、止まることはない。
4人の努力もまた同じで、自分等の小さい小さい研究と実行が、何か、必ず、世界に人間の幸福の為に役に立つ時が必ず、来る、と、みんなは確信していた。
だから何があっても努力は止まらなかった。

暑さがなんだ!!
いわれなき中傷がなんだ!!
軽蔑がなんだ!!
嫉妬がなんだ!!
欲に絡んだ暴力がなんだ!!
卑劣な妨害がなんだ!!

みんなはそんなことに、眼中無く、歯牙にもかけず、力を合わせて頑張っていた。
そして、心の中で「俊輔!!ガンバレ!!」と・・・・・・・・・。

小説(26)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-18 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
美樹の引っ越したマンションにアカネも同居。
忙しさに紛れて、美樹は、住民票の移動をしてなかったが、それが幸いした。
引越し先は、母親しか知らせていないので、得たいの知れない連中からも分からない。
アカネもその為、安心していた。

当面、美樹の家で仕事をするしかなかった。
エジプトに行っている村井らには、美樹とアカネはギリギリになるまで、俊輔の失踪については知らせていなかったが、もう10日にもなり、責任者の村井には報告した。
その村井からメールが・・・・・

「俊輔のその後の状況は?」
「まだ、消息はわかりません。心配しないで・・・・・」
「君たちも充分、注意して・・何かあったら、すぐ、報告を」

ミドリからもメールが・・・

「大変ね・・何があったのかしら?・・みんなも用心してね・・こっちの方は、沢村君、大沢君も、すごーく心配しながら、頑張っているわ・・またね」

村井は懸念していたことが、現実になり始めて、心労を重ねていた。
学術的な純粋な取り組みをしているものの、そのような人間ばかりではない。
中には欲に狂い、黄金伝説に惑わされて、何を企んだり実行に移すか、分からない人間も多い。
おそらく俊輔は、そうした連中の中の誰かに、巻き込まれたに違いない。
事件にならなければいいが・・・・・・・・・・。

ここはテロで吹き飛ばされた、歌舞伎町から、左程、遠くない場所のマンション一室。
中には、6人の男等がいた。
1人を除き、5人はショボ暮れていた。
リーダ核の男が怒鳴りつけている。

「お前等5人が総がかりで、なんて様なんだ!!・・・・・最初で、2人やられて今度は、3人が逃した!!??
おまけに、撃ったって!!??
バカ野郎!!
あれだけ、目立たないように行動して、狙いは、情報を掴むことなのに、撃った。
話にもならん・・・・・・・。
お前等は、雁首そろえて子供の使いか?
初めてのお使いじゃないんだぞ!!」怒られていた5人は、最初は、おとなしく聞いてたが、『初めてのお使い』と聞き、何かを思い出し、クッスと笑う

その笑いを見て、ますます怒りを増す

「なんだ!!・・・何が、可笑しい!!」

まぁ、言う方も言う方だが、この6人組は、ちっと間抜けな連中でもあった。
実行部隊だが、いずれお払い箱になるに違いない。

「いいか!!・・・今度は女2人を狙え・・分かったか!!」
「ヘイ・・」
「ヘイ」
「声が聞こえん!!」
「ヘイ!!」

「ヘイ」としかどうも言えないらしい。頭のどこかが、ちっと変?
普通、実行部隊ともなれば、機敏さとか感の良さを買われるものだが、どうも違う。
要するに、バカなんだ。
古の賢人は、本当かどうか分からないが、こう言ったらしい?

「バカは死んでも直らない」と。

この6人組はどうもそれに近い。
美樹やアカネにとっては、幸いだった。
しかし、バカはバカなりに、執拗なところがあり、これもまた、困ったものだった。

「お前ら!!・・・グズグズしないで、行って来い!!」
「ヘイ!!!」

「ヘイ」の5人組は、威勢よく外に出たが、まだ、俊輔に蹴られた足が良くなっていなかったのか、その内の1人が、小石につまづいて、ど、たっと、顔からコケて倒れる。

「おい・・バカ!!・・しっかりしろ!!」

ハッ??・・どこかで聞いたセリフだ。








小説(25)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-17 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
アカネと美樹は心配になり、すぐに新宿警察に失踪として、被害届けを出した。
やることが早い。
女性特有の鋭敏な感覚で、今、そこに迫っている危機を危機として感じて出来ることから対処したのだった。
鈍感では出来ない。
この機敏な手を打つことで、その後、1人の友人や仲間を助けることにつながっていく。
口先で、仲間、友達というのとは、全然、違っていた。
本当に心配していたのだ。それをすぐ、行動に移す。
これは男とか女とは関係ない。相手を思う心情から発する、人間としての質の問題だった。
人とは、何か、事があって初めて、その人の本性が現われてくるものなのか。
普段、何事もない時には、分からない。

「しばらく、様子をみましょう」美樹
「うん・・・」
「アカネ・・私のところ、来る?」
「えっ?・・だって・・・」
「私、引越ししたばかりだし、誰にも気兼ね必要にないから・・大丈夫よ」
「そう?」
「それと、なんか、不安なの・・・・・・」美樹は得体の知れない不安そうな表情で
「・・・分かったわ」アカネもそれは同感だった

その頃、当の俊輔も自分が居る場所が分からない。
古い小屋に閉じ込められ、身体の節々が痛かった。空手で身体は鍛えていたが、その俊輔さえも、相当やられた。
記憶を辿り、思い出していた。自宅のマンションを出た時、ワゴンに乗った、5人組にいきなり襲われた。今度の相手は、格闘技のプロらだった。
俊輔も機敏に戦ったが、相手は、鉄の防具を使い襲ってきたのだ。
何人かに、鉄槌を加えたが多勢に一人では勝てなかった。
骨が折れるほど、やられた。
あとは記憶にない。

(何の為に?・・・仕返しか?・・・あいつらは一体、誰だ?)俊輔は自問自答する

腕は後ろ手にされ、縛り上げられていた。

(とにかく、ここから逃げ出そう・・・全ては、それからだ・・・でも、アカネや美樹らは大丈夫かなぁ?)俊輔は自分のことより、美樹、アカネのことを心配していた。

(ここはどこだ?・・・)そんなことを考えていると・・・・山小屋の古びた扉が

ギーギー音を立てながら、開いた。
入ってきたのは、見たこともない男等だ。
厳つい3人の男らの1人が、気が付いた俊輔の前に立ち、

「どうやら気が付いたらしいな!!・・・」
「・・・・・・・・・・」
「貴様!!・・・何とか、言え!!」もう1人の痩せた男
「水をくれ・・」
「偉そうに、水をくれ、だと」
「そうさ!!・・・何とか、言えと、言うから話したまでさ」
「この野郎!!・・・」殴りそうになって痩せた男

相手が弱って弱者と見るや居丈高となって、見下し偉ぶる犬、畜生のような男だった。

「まぁまぁ・・・待て!!」もう1人の氷のような冷たさの男が、止めて

「おい!!・・・知っていること、話したらどうだ」
「・・・・・・・・何を?」
「・・知らばっくれて・・」痩せた男
「・・・何のことか?」
「何!!・・・」
「まぁまぁ・・・そのままじゃ、話も出来まい・・・おい、水を持って来い」

痩せた男が、ミネラルウォータを取りに行き、戻ってくる。
男達が、水を飲ます為に、俊輔の結いていた縄を解いた、瞬間・・・
俊輔は、前足で、痩せた男を払いのけ、倒す。
一瞬の出来事だった。
弱っていると油断した相手のスキを狙っていたのだ。

戦いで身に付けた感だ。

そして、氷の男を一撃で仰向けに倒す。
厳つい男は、格闘技の習いがあるのか、身構えるが、俊輔には敵わない。
急所を一蹴りされ、厳つい顔の割には・・・・・

キャーと女のような人声、叫び、うずくってしまう。

開いている山小屋の出口に走り、必死に飛び出した俊輔は、ホっとした瞬間、背中に鋭く鈍い鈍痛を受けて、そのまま、倒れ込んでしまった。

氷の男が、放った弾丸が当たったのだ。
こいつらは、チャカを持っているということは、普通ではない。
おびただしい血を流し、ピクリとも動かない。
氷の男が、痩せた男と厳つい顔の男を連れて、どこかへ・・・消えていく

人一人いない山中に、撃たれて意識不明、瀕死の状態の俊輔。

何故?
???

小説(24)【ピラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-15 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「なんか、秘密結社っておっかなそう」アカネ
「いろいろな説があるらしいんだけれど、白人系のメーソンは【ヤフェトメーソン】
黒人系メーソンは【ハムメーソン】で、黄色人系は【セムメーソン】というがあるのよ」
「へえ・・詳しいのね」
「それが、結局、エジプトとかピラミッドとどう、関係するの?」
「まだ、解らないわ・・・でも、ピラミッドアイが、一ドル紙幣の裏のシンボルマークということは、メーソンと何か、関係があるわ」
「やぁ!!どんどん複雑になるなぁ・・・メーソンね」俊輔は頭を掻く
「そうそう・・夕食兼ねて飲まない?」美樹
「そうね。久し振りだから・・」
「そう、4日ぶりね・・・・はははは」

3人はテロ現場から近い新宿の『小便横丁』へ行った。美樹やアカリなんかはオヤジ臭いこういうところが、好きだった。すすんでいるのか、変わっているのか、わからない。

俊輔の馴染みの店に入り、カンターでビールと軽い夕食を食べて、外に出る。
まだ、ムッとする暑さが続く。ガード下の角のペットショップのところで、アカネが

「ネェ・・後ろの3人、変よ」言われた俊輔と美樹が何気なく、振り返る

確かに、3人が足を止めると、向こうも、ピタっと止める。
俊輔は機敏。

「何か?」
「・・・・」
「何か、用ですか?」
「・・・・」逃げようとする男達

そこを俊輔が捕まえる。その瞬間、3人の屈強な男達が、俊輔に襲い掛かる。
しかし、出来事は、あっという間だった。
崩れ去っていったのは、3人だった。
何が起きたのか、通りかかった人達にも分からない。

「行こう!!・・・」そう言って美樹とアカネをその場から、連れ去っていく俊輔

「秘密結社?」美樹
「はははははは・・・違うと思うよ」
「何か、おかしいわね・・でも、俊輔、強いのね!!」アカネ

飲みなおしを軽くして、3人は、お互い、充分、注意しょう、と言い合い別れて行った。

翌朝。

美樹とアカネはうかぬ顔をしていた。もう時間は10時を廻っていたのに、俊輔と連絡が取れない。2人が交代で携帯に連絡したが、全く、連絡がとれない。
俊輔が、こんなに理由もなく遅れたことは一度もないからだし、さらに昨晩のことがあったから尚更。

「どう?」美樹
「・・・・」首をふってアカネが心配そう

2人共、ただ待つしかなく、仕事も手がつかないまま、時間が過ぎていく・・・。
もう、夕方になった。
連絡がないまま。それも取れない。

「美樹、どうする?」
「実家へ電話入れたけれど、分からないって・・・・心配かけたくないから、電話きったけれど・・・」
「明日、きっと・・悪い悪いって、くるわよ」
「そうね、それを期待して・・・」

翌々朝。

時計が9時33分を指す・・・・・。
俊輔は来ない。

「アカネ・・自宅に行こう」
「うん・・・・・」

2人は京王線芦花公園の俊輔のマンションへ・・・。
いくらベルを押しても、誰も出てこない。
1階の管理人に事情を言い、立会いのもとで俊輔の居る部屋へ・・・
ワンルームの綺麗に掃除されている部屋には、誰もいない。

「????」
「?・・・俊輔!!」
「・・・・」
「居ませんなぁ」管理人

念のため、クローゼットもトイレもバスも全部、見たが俊輔の姿は見つからない。

「いいですか?」
「ハイ・・ありがとうございます」
「すいません」

2人は、京王線芦花公園駅の方へ、成果なく不安な面持ちで、力なく戻っていく。

(何が、あったのかしら?)
(どうしたのかしら?)

居なければ居ないほど、不安が高まり、理由が分からない為、それは輪をかけて膨らんでいく・・・・・・・・。

小説(23)【ビラミッドの暗号】著者 高 一

2007-08-15 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「どう?」美樹が途中、聞く

続きが・・

『彼は入社的秘密結社としてエジプトの密儀宗教、ギリシアのディオニュソス信仰、オルフェウス教団、ピュタゴラス教団、グノーシス派、テンプル騎士団、カバラ派、薔薇十字団、そしてフリーメイソンを挙げている。とはいえ、平均的なアメリカ人の持つフリーメイソン像は“秘密結社”というよりむしろ、病院や福祉施設へ多額の寄付をする“慈善団体”、会員が相互に親睦を深める“相互扶助団体”というものが大勢を占めるだろう。フリーメイソンは、すでに18世紀の末に病気や事故などで困窮する会員の子女のための教育施設を設立しており、現在でも孤児や老人、未亡人などを扶助するための福祉施設、あるいは身体障害を持つ子供のための教育施設・病院施設などを会員の自発的な寄付によって運営しているのだ。

 中略
 
フリーメイソンの親縁団体イースタン・スターには、メイソンの家族の女性たちが入会している。メイソン志願者の資格としてもう一つ重要なのは、その者がなんらかの宗教的信仰を有していることである。即ち、無神論者はフリーメイソンとなることはできないのだ。それでは、フリーメイソンは宗教団体なのかと言えばそうではない。メイソン自身、組織が宗教団体であることを否定しており、あるいはいかなる宗教から派生したものでもないことを強調している。フリーメイソンはいっさいの宗教的教義を持たないことを原則とし、ユダヤ・キリスト教、あるいはヒンドゥー教や仏教であれ、会員は各々が信奉する宗教的信条に従い、自らが信仰する神のみを崇めることができる。後に述べるが、フリーメイソンにとっていかなる宗教の神も同一の存在であり、突き詰めれば宇宙を創造した偉大なる建築者に行きつくのである。

◆フリーメイソンの起源

 近代フリーメイソンの歴史は1717年に始まる。その年の6月24日(聖ヨハネの日)、ロンドンにあった四つのロッジ――『アップル・トゥリー』『クラウン』『ラマー・アンド・グレイプス』『グース・アンド・グリドアイアン』――が『グース・アンド・グリドアイアン』に集まり、初めて『グランド・ロッジ』を結成した。グランド・ロッジとは、ロッジを統轄するロッジの意。ロッジ運営の中心となる役職『グランド・マスター』が配置され、新しいロッジを承認する権限が与えられている。日本のフリーメイソンはフィリピンから承認され、フィリピンのフリーメイソンはアメリカから承認され、アメリカのフリーメイソンはイギリスから承認された。フランス、ドイツ、韓国、台湾……近代フリーメイソンのすべては、1717年に発足したイギリスのグランド・ロッジに端を発する。・・・・略

 むろん、個々のロッジはグランド・ロッジ成立以前から存在していた。1599年にスコットランド最古のロッジがあったという記録もある。また、先述した『古代憲章』と呼ばれる憲章には、1388年にはすでに、イングランドおよびスコットランドにフリーメイソンが存在していた、と述べられている。ちなみに『ロッジ』という言葉は13世紀頃に登場し、『フリーメイソン』という言葉は14世紀頃から使われるようになった。しかし、それ以前の歴史――フリーメイソンのロッジがどのように誕生し、発展し、その形態を整えていったのかとなると多くは謎に包まれており、諸説入り乱れている。当のメイソンはフリーメイソン憲章の第一部「歴史編」において、天地創造を紀元前4004年の出来事と定め、メイソンの歴史は「宇宙の偉大な建築者である神の形に似せて造られた最初の父アダム」にまで遡ると主張している。

 フリーメイソンの相互扶助の精神は人間の社会が成立すると同時に、即ち始祖アダムとエヴァの時代から当然に存在したはずであり、近代のフリーメイソンへと連綿と受け継がれてきたのだという。同じく、フリーメイソンが内部で説く伝説的起源には、その象徴的階位や入社儀礼は紀元前十世紀頃に存在したソロモン神殿において誕生したとするものもある。ソロモン神殿とは古代ユダヤ民族が唯一神『ヤハウェ』の恒久の住いとして聖地エルサレムに7年半を費やし建設したという神殿のこと。ソロモン神殿は神が設計した完全なる建築物とされ、フリーメイソンの重要なシンボルとなっている。旧約聖書によれば、ソロモン王は神殿建築にあたって、同盟国であり父王ダビデの時代から親睦を深めていたツロの王ヒラムに助力を求めた。ヒラムの支配下にあったティルスやシドン(古代フェニキアの海港都市)の人々は当時最高の建築技術と卓越した彫刻・装飾技術を持っていることで知られており、小アジアにおいては建築の仕事を独占していたからだ。

略・・
 ツロの王ヒラムはソロモン王の要請に快く応じ、ティルスから3306人もの労働者を送り、神殿建設に不可欠な材木と石を遣わした。このとき神殿建設の中心的役割を果たしたのが「ヒラム・アビフ」(ヒラム王とは別人)なる人物である。近代フリーメイソンはこのヒラム・アビフを「ソロモンの神殿」とともに重要な象徴としている。旧約聖書には、ヒラム・アビフはナフタリ族(イスラエルの1支族)の未亡人の息子で、父親はティルス出身の真鍮職人だったとある。傑出した知識と技術を持っていたヒラムは、神殿建設の最高責任者として建築全般の管理を任された。彼自身、すべての建築的装飾や神殿内部の装飾を手がけた。彼は職人たちを『親方』と『職人』からなる小集団に組織化し、合言葉や符牒の使用させるなどの工夫によって見事に神殿を完成させることに成功した。

 さらに1756年版『フリーメイソン憲章』の伝える伝説によれば、ソロモン神殿の建設に際しフリーメイソンの伝統に従って、ツロの王ヒラムとソロモン王との間でグランド・マスターの最高会議がつくられ、賃金大系や労働条件について規定する唯一マスター・ロッジが設置されたという。ソロモン王が不在の場合は神殿建設の最高責任者であるヒラム・アビフを代理グランド・マスターに指名し、不在でなくとも首席大首長として、二人の王と同等の権力と尊敬を付与された(ヒラム伝説については後にも述べる)。以上はあくまでもフリーメイソンの内部から伝わり来るその伝説的起源と歴史だが、フリーメイソン史家の大部分はこうした物語を史的事実とは考えず、メイソン特有の暗喩・象徴として解釈している。伝説ではなく歴史的な意味で、フリーメイソンの起源に関し現在もっとも有力視され、かつフリーメイソン自身も支持しているのが、中世の石工職人組合『ギルド』に端を発するという説である。

 先にもいったが、元来フリーメイソンは『自由な石工』、即ち大工さんたちの職業組合のようなものだった。といっても当時の建築者を現代のそれと同等に考えてはいけない。中世において、キリスト教の大聖堂、修道院、宮殿などの建築、増築、修復などのプロジェクトは数十年、あるいは数百年もの年月要することも珍しくなかった。職人たちは自分たちの仕事の権利を守るため、仕事の方法を秘密にし、詐欺師に欺かれないように仲間内で握手の方法や独自の用語などの暗号を考案していった。やがて仲間内の結束を強めるため、ギルドが構成され、『親方』と呼ばれる人物の指揮のもとに作業が進められていった。ギルドは職業上の秘密を伝達する集会所として『ロッジ』を作り、内部で親睦を深めるとともに相互扶助の精神を発達させていった。こうした石工職人組合の精神は現代のメイソンにも受け継がれているのである。

◆フリーメイソンと神秘主義

 フリーメイソンの起源が石工職人組合であるなどというと少々疑問に思われる方もいるかもしれない。近代フリーメイソンは大工の集団などではないし、建築作業にもまったく携わっていないからだ。実はフリーメイソンリーにも大きく分けて二つのタイプがあり、中世石工職人組合以来のメイソンを『オペラティヴ(実践的)フリーメイソン』、実践的な建築術と無関係なメイソンを『スペキュラティヴ(思弁的)フリーメイソン』と呼ぶ。十七世紀も後半となると、石工中心の建築の仕事が減少し、当時のロッジは存続の危機にさらされていた。そこで会員の財産を保護するために、建築者以外にも影響力をもった貴族の入会を積極的に勧めることになった。近代に入ると、思弁的メイソンの数はますます増加したが、それとは対照的に実践的メイソンの数は象徴主義を置き土産にして減少していくのである。・・略

 思弁的メイソンがフリーメイソンに入会したのは、組織内部の秘密の知恵に近づきたいという欲求や、中世建築と古代世界への素朴な関心のためであった。彼らはまた、当時ヨーロッパ知識人の間で大きな関心の的であった神秘思想――カバラやヘルメス主義、錬金術、薔薇十字思想などを持ちこみ、フリーメイソンの象徴主義に新たな要素を加味することになった。ギルド以来の建築道具や方法もまた、実践的な用途を超え、倫理的な意味において重要性を持つようになった。フリーメイソンの代表的な象徴である“コンパス”と“直角定規”はその典型である。メイソンはコンパスと直角定規を重ねたシンボルを自らの符丁としている。フリーメイソンにとって建築道具は道具であってただの道具にあらず。コンパスと直角定規は一対の象徴であり、コンパスは「道徳」を表し、直角定規は「真理」を表す。


上向き三角形(コンパス)と下向き三角形(直角定規)の結合はダビデの星を形成し、
男と女、陽と陰、天と地、精神と物質など世界のニ元性の融和を表現している。
個々の建築道具は人間の美徳と対応し、コンパスは真理、直角定規は道徳、
鏝(こて)は結束と友愛、槌は知識や知恵を象徴している。

 コンパスと直角定規を重ねたメイソンのシンボルは道徳と真理の調和を表している。なぜか?ヒントはソロモンの神殿である。実践的な建築技術を持たない思弁的フリーメイソンにとって、完成を志向するものはいわゆる物理的な建造物ではない。彼らが建設するのは神の宿る霊的な神殿としての自己である。中でも神の設計によるソロモンの神殿は完全なる人間を表象するものであり、人間の精神的発展の暗喩であるとする認識が形成された。フリーメイソンが何よりも尊重するのは“道徳法”の遵守と、他者への“寛容”である。それは彼らの最終目的が――喩えて言えばイエス・キリストのような“真実で善良なる人間”へと変容することだからだ。人間の美徳はコンパスや定規などの建築道具によって暗喩され、すべてのメイソンはそれらの道具を用いることにより自らが完全なる人間(ソロモンの神殿)となれることを暗示しているのだ。・・・略

 ライオンの握手法 カバラの図像

 ハサミのように開かれた指が意味するもの――それはフリーメイソンの重要な象徴である直角定規もしくは開かれたコンパスである。さらに、その手の型で握手をすることは、直角定規とコンパスを交差させることを意味し、メイソンが信条とする“道徳”と“真理”の調和を表現している(直角定規とはいえ、実際には直角ではない図像がメイソンにおいてしばしば用いられることにも注意)。このようにフリーメイソンが用いる数々のシンボリズムは決して無意味なものではない。そこにはすべて深遠な意味が隠されている。先にも述べた『フリーメイソンの基礎法』には次のようにある。科学思想、宗教、倫理思想を知るために用語を象徴的に使うことは重要である。ソロモンの神殿は、象徴的存在であり、この神殿を築いたメイソン、建設のための道具、材料を知ることは、フリーメイソンの本質を知ることになる。(第24条)

略・・・

 あらゆる神秘思想体系あるいは古代密儀宗教において、人間の精神的・霊的な進化の過程は三つの階梯により表現されている。ユダヤ教神秘主義カバラでは『志高世界』『中高世界』『下層世界』(あるいは神的、霊的、物的世界)の三つの世界を想定し、グノーシス派の教義では人間には『霊的世界』『心魂的世界』『肉的世界』の三つの世界が用意されているとする。同様に、新約聖書の多くの書簡を書いた伝道者パウロは、神から与えられる栄光には『太陽の栄光』『月の栄光』『星の栄光』の三つが存在するとし、人は栄光から栄光へと神と同じ姿に作り変えられていくと説いている。フリーメイソンにおける『徒弟』『職人』『親方』の位階制度も象徴的な階位として人間の霊的進化の過程を表し、徐々に彼らの志向する“完全なる人間”へと近づくことを示しているのだ。』

「古代エジプトの記述があるでしょう・・何かの参考にと」美樹・・・・・・・。