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☆ 世界を凌駕して宇宙まで響け !!




  

SF小説(21)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-31 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
とても信じられない若さと美貌のゴールドを前にして、藤田は、酒が入るごとに酔いと共に、不思議な感覚に襲われていた。壁には、紙でなくピカピカ光るビニールからメニューが映し出されている。

「タコ 500円」は赤く輝き、タコのイメージを浮かべさせる。
ゴールドは、余裕しゃくしゃくとして、赤ワインをグイグイあけていた。
どうも酒には強いらしい。でも、乱れるようなことはなかったが、時折、表情に見せる知的な微笑が、魅力的に藤田を吸い込ませていく。

「ゴールド・・」
「なぁーに」
「つまみ、頼もう!・・焼き鳥、あるかなぁ?」
「なんでもあるわ・・・・セットで頼む?」
「うん、塩で・・・」

2人の姿を第三者が見た時、まるで恋人同士のようだった。

「紙が全く、ないんだね」そう言って、壁のメニューを指差した。

「そうなの、環境を大事にすることで、木の伐採は原則禁止・・・伐採には許可が必要なのね・・あのメニューは電子ビニールで出来ているの・・・・資源の有効利用ね」
「ところで、さっきの話の中で、遺伝子コンピュータと量子コンピュータの実用化で解決した、と、言ったけれど、もう少し、話してくれない?」

「そうね、一人一人が持つ遺伝子は、その人の唯一ものなの・・・それを読み取ることが
出るようになったのね・・・それと、量子コンピュータの組み合わせで、情報を瞬時に解読し、正確な判断が出来るようになったの・・・・だから、私が働いた分は、ちゃんと、二つのコンピュータが、カントしてくれて蓄積されていくの・・・」
「へぇー・・・だから、お金を払わなかったのか?・・・全ての人がそうなの?」
「そうよ・・・働いた分から、飲んだり、買い物したりした分が、自動的に差し引かれるのね・・・カードもお金も要らないのよ」

話しを聞くうちに、藤田は、文明の発達は、ある瞬間、発明、発見されたものから、急速に、飛躍的に文明を進化させるものだ、と感じていた。
それだから、半官半民と、言ったのか、と理解を深めた。そして、ゴールドの金色の目を見つめた。
見つめられたゴールドも、精悍な顔の中にどこか深みのある藤田の顔をじーっと見つめ返した・・・

ゴールドも藤田にいつしか、惹かれていった。

SF小説(20)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-30 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
藤田はJP病院にゴールド達と戻り、自室に入ったが、なんか体がぞくぞくし始めていた。興奮の連続で、自分でも分からなかったが、身体に相当の負荷を与えていたようだった。その無理が、ぞくぞくする風邪からきていることさえ分からなかった。
鼻水が出て、やっと風邪にかかっていた、ということを思い知らされた。100年後にも生き延びるインフレエンザの菌のたくましさを、独り、クスクスと思って、笑っていた。
そんな時、部屋に、ゴールドが立ち寄り、食事の誘いがあった。

「藤田さん!・・居酒屋に行きましょう」
「居酒屋なんか、あるの??」

風邪気味だったが、居酒屋の方の誘惑が競り勝った。

病院から徒歩で5分位のところに、居酒屋があった。今まで、こんな近くに居酒屋なんかあるとは、全然、知らなかった。ドーム状の造りのその店は、中に入ると、100年前の居酒屋の風情を残していた。メニューこそ、電飾でキラキラ光っていたが、つまみは変わっていない。酒は??と思いつつ、メニューを見ていると、『100年の孤独』という、懐かしい銘柄があり、すぐ、その銘柄を頼んだ。それを見ていたゴールドは、笑いながら・・・

「藤田さんらしいわ・・・100年の孤独・・ピッタリだわ」
「結構、美味しいんだよ・・・それに風邪気味だから、体内から暖めないとね」
「あら?・・風邪?・・大丈夫?」
「平気、平気・・・昔も、風邪の時は、酒で治したから」
「気をつけてね」

ゴールドは本当に心配顔になって、きれいな顔を曇らせた。
2人で、食事を兼ねながら、いろいろ会話が進んだ。

「ゴールド・・」
「何??」
「前、皆んな半官半民といったけれど、この店の人達も?」
「そうよ・・・」
「昔は、政治家や官僚、公務員達が、ひどかったんでしょう?」
「そうなんだ・・税金で喰っているのに、それを忘れて、無茶苦茶なことをやっても誰も責任を取らないんだ」
「どんなこと?」
「たとえばね、年金・・・国民が積み立てた年金を勝手に、自分達の都合のいいように、使えるようにして、大きな損失を出しても、誰も責任を取らない・・そういう法律を政治家達と官僚が一体になって作り、シラーッとしていた・・・おまけに、積み立てがなくなったから、今度は、保険料を上げて、支払う額は減らす・・・ひどいもんだよ」
「そうだったの・・・でも、今は、違うわ・・」
「えっ・・??」
「全世界の働く人達が、共同で、高齢者の人達の責任を持つの」
「どういうこと?」
「昔でいう消費税みたいなものかしら」
「・・・・」
「今晩、2人で摂った食事代金の25%が、広い意味の福祉の為に、振り向けられるの」
「それが財源??」
「そうよ・・・だから、皆んな安心しているわ・・老後のこと」
「それが、全世界の人達に??」
「勿論、そうよ・・・それも、約80年前に、遺伝子コンピュータ、量子コンピュータの実用化に同時期位に完成してから、一気に、進んだわ」
「?????」
「少し前、お寿司、食べに行ったでしょう・・あの時、料金払わなかったでしょう」
「まぁ・・変だ、と思っていたけれど」
「貨幣やそれに変わるカードもないのよ・・・何故かというと、お金の偽造やカード偽造が一時期、全世界に拡散されて、資本主義が成り立たなくなったの」
「そんなに??」
「結局、いたちごっこ、だったのね・・・どんなに精巧に紙幣やコインを造っても、それを上回る偽物が出来てしまうの」
「あぁ、それでか!!」
「そうしたいき詰まりの時に、さっきの二つのコンピュータが実用化して、問題が、解決したのね」
「ふーむ・・・」

2人の会話は途切れなく、次から次へと発展していった。それは、まさに、過去と未来の対話のようだった。・・・・・

SF小説(19)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-23 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
佐々木宅に長時間居て、外に出た時には、周りはすっかり暗くなっていた。マスコミの人達も、最初の取材を終え、今は、誰もいなくなった。外で、辛抱強く待っていてくれたのは、ゴールドと、ハワイ、ブラックの3人だけだった。
藤田の体を心配してくれていたのだった。

「大分、長居してしまいました・・・・ありがとう・・・」
「藤田さん、遠慮なくいつでも、遊びに来てください・・・我が家と、思って」
「本当に、ありがとうございます・・・お言葉に甘えて、ちょくちょく、寄らせてもらいます」

小高い丘の上から市街地を見渡すと、夜のとばりが、暗い市街地をより暗くしていた。しかし、点滅する灯りは、100年前と、全然、変わっていなかった。そんな思いを察してか、武は、別れ際、「都市部の発電もすべて、太陽発電システムで電気を供給しているんです・・・個別家庭の分は、個別発電装置で、電気は自家発電です」
「・・・・・」
「そうそう、忘れるところでしたが、純一が、今週の末に、小学校の修学旅行なんです・・」
「そうですか、どちらへ??」
「宇宙空間の旅行です・・」
「えっ!!・・・子供が??」
「地球を10回ほど、宇宙船に乗り、回る旅行です・・・もし、よかったら、藤田さんも、一緒にどうですか??」
「いゃー・・私は、重力に耐えられませんよ」
「ははははは・・・子供でも宇宙船に乗って、行けます・・・訓練など必要ありません」
「そんなに!!簡単なのですか??」
「えぇ、重力を制御できる技術がありますから、大丈夫です・・あとは、許可を取れるか、どうか、だけです・・・もし、よかったら、私の方で、許可の手続きをとりましょうか??」
「やぁ・・・そうしていただければ、助かります・・・私も、楽しみにしています」

思いもよらない誘いを受けて、藤田は子供のように、目を輝かせて、佐々木宅をゴールドや他の2人と共に後をした・・・。

「本当に、大丈夫なんだろうか??・・」そんな藤田の心配顔を横に見て、ゴールドは、
「行けば分かりますが、コスモステーションから、あっと、いうまで宇宙空間に出られますよ・・・そこから見る地球の姿は、別格ですよ・・・心配なし!!あははは・・」
ゴールドの笑いに同調して、ハワイもブラックも、一緒になって、笑っていた・・・。
藤田は、キットーンとした顔で、3人の顔を交互に見比べていた。

SF小説(18)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-21 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「藤田さん、この世界に来て、大変だったでしょう?」カオリ
「えぇ・・とにかく驚くことばかりでした・・・たった、100年で世界がこんなに変わっているとは、想像すら出来ませんでした・・・」
「あははは・・・女性も、でしょう??」
「そうです・・・みんな若く、それでいて、個性的できれいですね」
「ただ、やはり、いろいろ深刻なこともあるんですよ」

何ですか?、という顔つきで、武の次の言葉を待った・・・

「現代は、遺伝子の解明のおかげで、たいていの病気は治します・・・しかし、心の病、精神の異常については、どうしょうもないんです・・人の死は、治せません、だから、人の命を奪う罪は、最も、厳しい極刑の火星送りになります・・・異常者は、平気で、最も尊い命を絶つ・・・このような人間が増えているんですよ」
「こんなに何もかも、恵まれているのにですか??」
「そうなんです・・・どうしたわけか」
「政治家先生はどう対処しょうと、しているんですか??」
「はははは・・・先生??・・・政治家??・・・現代では、政治家のことを先生なんて、呼ぶ人は誰、1人いませんよ」
「え!!??」
「私たちは、いや・・・全世界の人達は、半官半民なんです・・・政治家もそうです・・
昔は、政治家の汚職や本来の使命を忘れた、金儲け権力に走る輩が非常に多かったんです・・腐敗、堕落しきったんですね・・・公務員もそうでした・・・・しかし、それではいかん、ということで、体制を変えました・・・それは、大変でした・・・でも、断固として、我々の先輩、先人が既成権力と戦い、現代のシステムになりました・・・だから、政治家のことを【奴隷】と、言っているんです・・・先生なんて、言いません・・・国民の為に働く・・だから、【奴隷】なんです・・・」

「それじゃー高給??」
「はははは・・・我々より、ずっと、薄給ですよ・・・それでも、使命感に燃えて、一生懸命働いていますよ・・・・奴隷ですから」

藤田は、ふっ、と息を吐いて、「そんなに変わっているのか?」と、思い直した

「藤田さん、食事はなされます??」
「もし、お邪魔でなければ、ぜひ・・・」
「よかった!!・・・何にします??」
「なんでも・・・」
「純一!!・・・食事の用意して頂戴」カオリ

「えっ!?・・・純一君が?」
「そうですよ・・・順番制なんです」
「わかった・・・・カレーて゜いい??」
「純一に任せるから」

出来上がったカレーを囲みながら、藤田は、初めて、我が家に来た、という感覚になって心が落ち着いた。100年後の地球に辿りついて、2~3週間しか経っていないのに、もう100年を経過したような、目まぐるしさであった。
ホロビジョンの立体映像を見ながら、食事をしている時、武は、思いついたように、言った・・・

「藤田さん、充分、注意してくださいね・・」
「?????」
「冬眠技術の件です・・・あの中に、それを狙っているのが、必ず、いますよ」そう言って、立体映像に映し出された人々を指していた。

武の言ったことは、本当だった・・・藤田の開発した冬眠技術を使えば、90歳の人も、100年後へジャンプ・・・その時代になれば、もっと医学も発達し、寿命も延ばせる状態になっているかも知れない・・・権力を持った人間は、必ず、その技術を喉から手が出るほど、欲しがるハス゛・・・まだ、藤田は、見るもの聞くもの全てが、信じられないことばかりに出くわして、その吸収に精一杯だったので、その技術が狙われている、とは、思いもよらなかった。

人を殺してでも、藤田の技術を手に入れようと、虎視眈々と狙っている人物、勢力が、ひたひたと迫ってきていることに、藤田は気がついていなかった・・・。





SF小説(17)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-14 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
建築家の純一の父、武は、妻・カオリを紹介した後、藤田をテーブルへ案内した。
報道陣は、入り口の外で待機の状態。

「藤田さんは、考えていた以上に、お若いんですね」カオリ
「えぇ、30才の若返りです・・・先生の話ですと、私の遺伝子が、どうも突然変異したらしいんです・・・今、その原因を解明中だそうです」
「うらやましいわ!!・・・私は、何時、その手術をしようか、まだ、迷っているんです」
「まだまだ、焦る必要ないんじゃないのかなぁ」武
「どうしてですか??」
「あ、藤田さんは知らないと思いますが、この手術は一度きりなんですよ・・1回で終わりなんです・・遺伝子が2回目を許容しないんです」
「あぁ・・・それで・・・」

「藤田さん、何か、飲み物でも??」
「そうですね・・水を」
「純一、藤田さんに水を」

テーブルに出された水を藤田は、グッと一気に飲み干した。そして、

「美味い!!・・本当に、おいしい水ですね・・・病院にいる時も、そう感じましたが」
「そうでしょう・・・藤田さん、窓の外に見えるでしょう」

そう言って武は、庭のはずれに置かれている4つのタンクを指差した。

「あのタンクに、水が??」
「そうです・・・雨水を貯蔵して、微生物で純化しているのです・・だから、水道は、現在どこの家庭にもありません」
「そうすると、電気も水も全部、自前なんですか??」
「これが、昔で言う、自給自足なんでしょうね」
「あぁ、純一、藤田さんに、ホロビジョンつけて見せてあげなさい」
「うん・・・」

純一は武に言われ、腕の機器のスイッチをいじっていた・・・すると、目の前の空間に、巨大な立体像が映し出された・・

「藤田さん、ごらんになりました??」カオリ
「いえ、ずっと病院でしたので、今回が、初めてです・・・」
「そうですか?・・これは、昔で言う、TVの進化したものです・・ほら、今、内の前のマスコミの人達が集まっているいるのが、立体的に、見えるでしょう」
「えぇ・・・・!!」
「それに、匂いも、出るのですよ・・・私なんか、匂いに敏感だから、変な臭いの場合、すぐ、切り替えてしまうの・・・ははははは」カオリ
「それに、双方向ですので、こちらの状態も、スイッチオッケーならば、相手に、映像が映し出されますよ」
「ほぉー・・・」
「これなんかも、全部、太陽の熱を高集積パネルの開発のおかげで、電源にしています」
「先ほど、自給自足、と、言っていましたが、食料は??」
「工場生産です・・・それと、世界食料バンクがありますので、食料の有効活用がなされています」
「それじゃー・・食べ物で、困っている人は??」
「ははははは・・・現在の世界では、誰1人、飢えている人はいません・・・食料バンクのおかげで・・・」
「そうですか??!!・・・食料バンクですか」
「約50年前、戦争や環境破壊が、世界中に勃発し、飢饉や疫病によって、多くの人達が亡くなりました・・・大変だったそうです・・・それから、世界の知恵のある人達が、寄り添って、『食料バンク』を創設しよう、ということで、このシステムができたのです」
「そんな、ひどい事態になったのですか??」
「でもね、食料、食べることの心配がなくなった替りに、今度は、注文がうるさいんでっすて・・・」
「はっ??」
「藤田さん!!・・・グルメですよ」
「人間の欲なんて、勝手ですよねぇ」
「はははは・・・ママなんかも、ずい分、好き嫌いが多いじゃないか」
「あら・・私だけじゃなく、あなたもよ・・・はははは」

平凡でいて、ごく普通の家庭の佐々木家であった。そして、明るかった。

SF小説(16)【2120年地球への旅】著者高 一

2006-10-12 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
藤田が意識もうろうとして、倒れていた場所は、墓地から抜け出た公園の入り口。
発見したのは、佐々木純一少年で、たまたま学校が休みの日で、早朝のジョギングの時だった。その純一少年の家は、公園から近く、山の頂にあった。
公園から山の頂きまでは、坂を登らなくてはならない。しかし、あえて純一少年は足腰を鍛える為に、ジョギングをしていた。通常は、ハッピーという電動ロボット自転車を使用する人達がほとんどであった。
足をまったく使わず、両手もただ、ハンドルを押さえているだけで、楽々、ハッピーが目的地まで運んでくれる。この為、足腰が自然と弱くなっていく。その防止のためにも、最近では、ジョギングをする人達が増えてきていた。

純一少年宅は、丸いドームで、屋根は自由に開閉が出来る構造。一般的な造りであった。
ただ、一日中、太陽光を浴びていたければ、太陽の動きに合わせて、ドームが回転する仕組みになっていた。エネルギーも全てが、太陽を熱源にしていた。
その佐々木宅に藤田が、お礼の為、今日、来ると、という・・・
両親は、今、最も時の人が自宅に来る、ということで、大騒ぎ・・・。

「お母さん、掃除は、大丈夫??」父親の武
「もう!!・・・ロボットがちゃんとやってあるから・・・大丈夫よ!!」
「そう、それならいいんだけど」
「マスコミの人達も、相当数、来るみたいだよ」
「ホント・・・100年前の人なんですからね・・・ビックリだわ・・・どんな人なのかしら??」

そうこうする内に、佐々木宅の小高い庭には、続々と、フィシュングフライに乗った、多くの人達が、空から舞い降りてきて、人で一杯になった。その数、250人以上・・・。
その中に、中心人物の藤田の顔があり、にこやかに、佐々木宅の中へ入っていった・・。

「藤田です・・・この度は、息子さんに助けていただき、本当に、ありがとうございました・・・おかげで、100年前より、元気になりました」
「そうですか・・・本当に良かったですね」
「まぁ、さぁ・・・どうぞ中へ・・」

ドームの中に案内されて、藤田は、一般の人達の生活をじかに、知ることが出来ることで、興味津々の面持ちで、促されるまま、中へと入っていった・・・。

SF小説(15)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-10 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「藤田さん、ホントによかったわ!!」そう言って、皆んなで、祝ってくれた。そして、
「ビールの味はどう?」
「お酒は、その地域で飲むのが、一番、美味いというけれど、それは本当だね」
「そう、よかったわ」そう言いながら、3人は、タバコを取り出し、吸い出した・・

藤田は「あの??・・タバコ・・・」
「大丈夫よ・・・みんな吸っているわ・・・」
「・・・・・」
「ここではね、・・・というより、現代では、タバコを吸って、ガンの心配より、むしろ
吸わないで、ストレスを溜め込む方に、気を使っているのよ・・・」
「・・・・・・」
「ガンでは、死なないわ!!・・・だから、安心して、タバコを吸いたい時に、吸うの」
「へぇー!!」

藤田は100年前の常識が、100年後は非常識になっていることを改めて、知らされた。

「ただね・・・ちょっと、お肌には、影響するみたい!!??」ブラックはそう言って笑った

「ところで、みなさんは、JP病院の看護婦さんでしょう??」突飛に藤田は聞いた
「はははは・・・そう見える??・・それは誤解・・・ユキやミカも私も、全員、医師よ」
ゴールド
「他の3人居た男性は??」
「看護士」
「世界アカデミィー会議の議長も女性だったけれど??」
「100年前はどうだったか、知りませんが、現代の世界では、ほぼ、主要な地位にいる人達は、女性ですよ・・」
「・・・はぁ・・女性上位ですか??」
「あはははは・・・不思議かしら??」
「いや、余りにも、昔と違っているので・・・」

そんな話をしている時に、藤田の足元に、仔犬が近寄り、じゃれ始めてきた・・レストランなのに、ペット、オッケーなのか??
藤田は、仔犬の頭をなぜると、嬉しそうに尻尾を振り、しばらく足にまとわりつき、そして、飼い主の方へ、戻っていった。

「ペット、大丈夫なんだね??」
「はははは・・・そうよ、あれは、ロボットだから」
「えっ!!」
「エサもいらないし、癒しと、いうことで、最近の人達の半分以上は、ペットロボットに替えているわ」
「本当に、あれがロボット???」藤田は目を丸くした・・・本物そっくりだったから・・

「さぁ・・・そろそろ行きましょうか?・・満腹だし」ゴールドがそう言って、席を立ち
出口の方へと向かって歩きだした。出口でも、入り口と同じように、青い光線の中をくぐり、フラッシュを4人は、浴びて出た・・・料金の精算らしきことは、一切、しなかった。

帰りがけ、藤田は「精算は??」と、聞くと、3人はクスクス笑って、「終わったわ」
「どうやって??」
「現代には、貨幣がないのよ・・・カードもないし、紙幣、硬貨もないのよ・・」
「・・・・」
「すべて、私たちの認証をベースにして、そこから、対価を割り出しているのよ」
「・・・どいうこと??」
「私達が医師の仕事を一日終了した時、その仕事の結果が、すべて、一人一人、遺伝子コンピュータに記憶され、報酬額が累積されていく仕組みなの・・・だから、使った分も、累積されたものから、引かれるのよ」
「あぁ・・それで、あの光の洗礼を受けたんだ・・」
「おわかり??」
「藤田さんの場合は例外よ」

4人はすでに、暗くなった外に出て、フイッシュングフライに乗り込み、煌々と輝く月へ向かって、飛行し始めていた・・・
船内でボンヤリ外を見ながら思っていた。「凄い変化だなぁ」と。 
今までも、驚きの連続だったが、これから藤田を待ち構えることに比べれば、まだ、ほんの序の口であることは、藤田は知らなかった・・・・。



SF小説(14)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-09 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
ブラックが藤田に話しかけた。

「さっき、エミリィが声をかけたボビーは、宇宙空間の輸送操縦の仕事しているの・・
でも、絵も描いているわ・・どっちが本業か、わからないわ」
「それじゃー、仕事を二つ??」
「そうよ・・皆んな、二つ位は持っているわ」
「それじゃー、収入も二箇所から??」
「そうね・・人それぞれかしら・・」
「ミカなんか、モデルもやっているわよ」ハワイ(ユキ)が話しに入ってきた
「そういえば、みんな、本当に綺麗ですね・・・なんか、個性的で・・」
「はははは・・・・藤田さん!!・・お世辞が上手いんだから・・・100年前からそうだったの??」
「いや、心底、そう思っているんですよ・・100年前の女性もすばらしかったけれど、なにか、美しさにセンスと時代を感じさせますね・・女性はどんどん進んでいますよ」

ゴールド、ハワイ、ブラックはお互い、顔を見合わせて、藤田の話しを微笑みかけながらうなずいていた。藤田は、さらに質問し始めた・・・

「みなさんは、結婚しているのですか??」

3人はお互いを見て、そして、藤田に逆に質問した

「結婚していると、思います??」
「正直、そう見えません・・・だって、余りにも、若いし・・」
「はははは・・・・私たち、今、青春の真っ最中よ・・・それに、いい男がなかなか、いないのよ」ゴールド
「そうそう、なんか、ひ弱な男達が多くて」ハワイ
「結婚の対象にならないわ・・・その点、藤田さんは、今、世界中で一番注目を浴びている男の人よ」ブラック
「そう!!・・『奇跡の人』とか『ゾンビの復活』とか『過去から未来の架け橋』とか、スポーツ紙やマスコミが大騒ぎしていますよ・・」
「へー??・・・全然、知らなかった」それもそのハズで、JP病院から一歩も出ていなかったので、外の世界のことが、皆目、分からなかった。

「この間、ボビーから聞いたんだけど、来週、また、長期出張なんですって・・」ゴールド
「どこへ??」
「火星・・・400人位らしいの」
「400人??」ブラックは、そう聞いて、顔を曇らせた・・・

みんな一時のはしゃいだ会話から、一転して、黙りこんでしまった。
藤田は不思議な面持ちで、聞いた・・・

「火星がどうしたの??」

「・・・・・」
「・・・・・」

ゴールドが沈黙を破るように話始めた・・・

「現代の地球は、生命を最も大事にする時代なんです・・・遺伝子の研究が進み、若返りや様々な病気、身体の不自由な問題も、ある程度、解決できるようになりました・・・それも、命があって、初めて可能なことなんです・・・火星へ行く人は、いえ、送られる人達は、その命を奪った人達が収容される処なんです」

「えっ!!・・・それは、牢獄??」
「そうです・・・2度と、地球へは戻れません」

しばらく、長い沈黙が続いていた・・・・。
その話題を変えるように、また、ゴールドが、明るい声で、話し始めた

「藤田さん!!・・朗報ですよ・・・」
「なんですか??」驚くことばかりで、最近は、驚き疲れた藤田が、聞き返した
「プラス20だそうです」
「はっ???」

プラス20ということを、ゴールドの口から聞いた、ブラックとハワイは、羨望の目で藤田を見た・・・。

「最初の検査の時、遺伝子が予想以上に痛んでいる、と、聞いたと思いますが・・・」
「えぇ・・それが???」
「生命の不思議なんでしょうか?・・藤田さんの遺伝子に予想外の結果がその後、判明したんですよ・・・現代では、若返りの限界が20年ですが、藤田さんの場合、30年だそうです・・」
「わー・・・うらやましい!!」
「藤田さん・・・いいわねぇ」

藤田は、何がなんだか???

「まだ、納得していないみたいですね・・・・あと、20才、若返ること!!」

それで、藤田は、初めて納得した。そうすると、65歳から30を引くと、35才か?

藤田の顔にパッと、明るさが戻った・・・女性3人は、複雑な顔でお互いの顔を見合わせていた・・・・。


SF小説(13)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-08 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
「コンコン」誰か、ドァーを叩く音がした・・・
藤田博士は、習い覚えた腕につけている装置で、ソファーに座りながら、内側からドァーの外側にいる人の認証を行なった・・・「あっ、・・・ゴールドだ」と・・・。

「藤田さん!・・今日は外出しましょう・・まだ、退院祝いもしていませんからね」
「外に出られるのですか?」
「そうです・・私と、あと2人がご案内します・・・お寿司はいかが??」
「えっ・・・寿司ですか?・・寿司なんか、100年振りです・・・楽しいなぁ」
「それじゃー夕方、6時に迎えに来ます」

JP病院から、あの円盤に乗り込こむと、すでに中には、ハワイとブラックが待っていた。美女3人に囲まれた、フライトが、今日で、2回目。

「藤田さん・・こんにちは!!」
「お元気そうで・・」
「ありがとう!!」
「さぁ・・・行くわよ」ゴールドも張り切っていた

そういう間もなく、円盤は静かに上空に滑るように上がり、機体を安定させるや、超高速でフライトし始めた・・・

「この円盤は何??」
「あぁ・・これは、フィシングフライというのですよ」
「フィシング??」
「そう、変なネーミングでしょう?・・・付けた人は、相当、冗談が好きな人なんでしょうね・・・はははは」

そんな会話をしている間に、目的地に到着・・・・時間にして約10分。周りは、海に囲まれた島で、潮さいの匂いが、プーンと感じられる・・・海も真っ青で、何故か、懐かしい
100年振りの海・・・藤田にとっては、すべてが100年振りに・・・。
そして、岸壁に建つ丸いドームの中へ、4人は入っていった・・・
入り口には、青い光線が時折、パッ、パッと4人を照射していた。
藤田はキックをつけながら、3人の後についていった。

「ブラックさん・・・あの青い光は何??」
「あぁ、あれは、4人を認証しているんです・・」
「えっ・・??」
「あとで分かりますが、料金のカウントを出る時、行なう為です」
「・・・・」

ドームの中は、人で溢れていた。外から見たドームの大きさより中へ入った時の方がより一層広く感じられた。人種も様々。アジア、アフリカ、白人それこそ、国際色豊かなお客で、各国の言語で話していたが、藤田は、腕につけいている装置のおかげで、話していることが、雑音を通して、聞き取れた。
テーブルについたが、正面には、大きな滝が流れ、その滝の流れに会わせるように光の饗宴が交互に飛び、色彩を幻想的にしていた。そして、音楽も、うるさいものでなく、食事を楽しめるように、流されていた。

「藤田さん!!・・・退院、おめでとうございまーす」ゴールド
「よかったわ!!」
「ホント」

10代後半か、20代初めのとびきり美人にそう祝福され、藤田は、満面の笑みを浮かべていた。そして、聞いた・・・

「ビールはありますか??」
「えぇ、ビールは100年前の味と、どの位違うか、分かりませんが、あります」
「それじゃー、とりあえず、ビールを」

その内に、寿司が運ばれてきた。トロも山盛りに・・・・

「藤田さん、現代では、まぐろの養殖が盛んで、この寿司ネタのマグロも養殖なんですよ
さぁ、食べてみたら?」
「養殖??・・まぐろの養殖??」
「そうです・・・大分、前ですが、まぐろの乱獲で生態系の危機が叫ばれて、これじゃーダメということで・・・日本が、世界で初めて、まぐろの養殖に成功したんですよ」

まぐろを口にした藤田「・・・うまーい!!」思わず、叫んでしまった。とても、養殖ものとは、思えなかった。

「ハーイ!!」ゴールドが手を上げて挨拶した。手を上げた先には、白人の男性。

ブラックが、藤田に「ボビーよ・・・今、ニューヨークで仕事しているのよ・・30分位でここにこれるから、結構、ひんぱんに、出入りしているのよ・・この店に」
「・・国境は??」
「はははは・・・・そんなもの、ずっと前の昔になくなっているわ!!」
「国境がないのか??・・・」ハワイが、藤田の顔を見て・・・・
「国境の意味がなくなっているのよ・・・・」
「・・・・・」


SF小説(12)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-07 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
時間が経過することによって、藤田博士にも余裕が出てきた。
ずーらっと居並ぶ人達の約半分の女性等は、皆んな若い。最高で30才位。
藤田は、内心、見た目の年齢に20才を足して、おおよその実際の年齢を推察できるほど、心に、ゆとりが出来ていた。それにしても、若い「でも、女性は100年後でも変わらない」と、思って、クスリと、1人笑った・・・限界ギリギリの手術で、若返りをしていたことで・・・・
その中の黒人の女性が、話し始めた・・髪の形はターバンのように巻き、色がそれぞれ、白、黄色、赤に染められている。ド派手な印象。でも、どうもこの髪型は流行っているらしい。

「藤田さん、まだ、お疲れのようですが、可能な限り、100年前の地球のことから、藤田さんの冬眠技術のことを少しずつでも構いませんから、お話しいただけないでしょうか?」

藤田はそれを受けて、素直に、話し始めた。

「私は、ガンを治して戴き、本当に感謝しております・・・私が開発した『冬眠技術』が、現代の地球の人達に生かされるなら、喜んで、ご提供いたします・・・」

そう言うと、会場内からホーッというどよめきが、広がった・・・・100年後の地球でも、藤田に勝る冬眠技術が完成していなかったからだ。ところが、現実に目の前に、その技術を使って、100前から甦っている藤田から、どうしても、話しを皆んな聞きたがっていた。
宇宙開発で、長期間の惑星飛行に、冬眠技術が欠かせない、と、科学者等は感じ始めていたところだった。・・・・・。
しかし、藤田が話し始めようとした時、議長が制止した。

「今日は、藤田博士の実際の姿を皆さんにお目にかけるのが、趣旨です・・・それに、まだ、体調も完全ではありません・・・また、折を見て、その件は、博士から、お話しいただきたい、と、思っています」

会場にいた皆んなからは、どよめき声が溢れ出てきた・・・。もっと、生々しい話が聞けることを・・・期待してきたからだ。・・・だが、議長のこの判断は正解だったことが、あとから分かった。
100年前の地球と同じく、藤田の技術を盗み、莫大な利益をむさぼろう、とする勢力が100年後の地球にも
存在し、現に、この集まったメンバーの中にも数人、その勢力の一派がまぎれ込んでいた。
ゴールドと一緒に、会場を出ようとした時、屈強な男性5~6人が、スーパーガード言われる武器らしきものを携えて、藤田をエスコートし始めた。厳重な警備体制を敷いていた。
そういえば、JP病院でも、いたるところに、警備の人達がいたことを、藤田は思いだした。

藤田は内心「これは、自分の技術をうっかり、ペラペラと話すものではない」と、思いはじめていた。
それほど、応用範囲の広い、藤田の技術だった。

SF小説(11)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-07 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
円盤の中にいると、スピード感が全くないけれど、大きく取り付けてあるガラス見たいな透明感のあるものから外を見ると、雲が、ちぎれるように遠くへ、瞬時に過ぎ去っていく、ことから、そのスピードは、すさまじいものだった。ゴールドは、乗り込む時には、計器ににタッチしていたが、それ以外は、一切、
操縦らしきことは、していなかった。でも、目的地へと、間違いなく超高速で飛行していた。
すると、目の前に、あの富士山がその威容を現していた。


あ!!ぶつかる、と、一瞬、肝を冷やした藤田だったが、ゴールトは顔色一つ変えずに、ゆったりと、操縦席に座っていた。・・・・さぁ・・・藤田さん、着きましたよ!!!・・そうゴールドに言われて、藤田は、降りる用意をした。円盤の着いた処は、地上1000メートルにも達しようとしている高さのビルだった。
ビルというより、もう、これは、人工の山だった。目の前には、富士山がそびえ立っている。
まだ、キックを装着しながらだが、藤田の足取りは、キックのおかげで、しっかりしたものだった。
すべてが、目を見はる出来事だった。JP病院から、ここまで10分もかからず、着いた。

「ゴールドさん、どこへ??」その藤田の問には答えず、微笑み・・・
「地球アカデミーの方々が、世界中から集まり、お待ちしています・・・」
「アカデミー??」
「行けば、分かります」

ゴールドに案内され、扉を開けて中に入ると、そこには、約200人位の、人種の違う人達が待ち受けていた。女性半分、男性半分、と、いった割合。ゴールドが、藤田を招き寄せ、集まった全員に紹介した。
その前に、集まったメンバーは、ゴールドが話す前に、腕に装着してある、腕時計より少し大きいものをいじり、何か?、操作していた・・・
これは、量子コンピュータが内臓された、機器。世界中のどの言語も一瞬にして、翻訳していまう、機能を備えていた・・・耳に、イヤホンなどもつける様子はない・・・
話したこと、聞いたことを即座に、変換して、相手に、伝えることが出来るもの。これの開発のおかげで、語学を学ぶ必要がなくなっていた。
語学は、趣味で好きな人だけが、取り組むものになっていた・・・・。

アカデミーの議長が藤田に、話しかけてきた・・・女性で、それもブルーの目をした金髪。24~6才。

「藤田さん、ようこそ!!・・・私たちは、病院から報告を受けて、その話が、最初は、ウソと思いました
でも、細胞、遺伝子を検証するうちに、それが、本当らしい、いうことに導かれ、今回、大変だと、思いますが、お招きして、お話を窺うということです・・・宜しく、お願いします」美人の女性に頭を下げられ、藤田は、面食らっていた・・・・。それも、こんなに大勢で・・・・。

「藤田さんに、お話を窺う前に、ここに居る方々の簡単な、ご紹介をしておきます・・・皆さんは、科学、物理、生命、宇宙、生体、環境他、一級の専門家の人達です・・・・この内の、半分位が、月、火星で仕事をしておられます・・・残りの半分の方も、宇宙空間で、仕事をしておられます・・」

「はぁ」藤田には、それを言うのが、精一杯だった・・・。

見るもの聞くもの、全てが、驚愕することばかりだったので、無理もなかった。


SF小説(10)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-07 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
ゴールドの後を藤田は、キックをつけたまま、ついて行った。どこに行くのだろうか?
キックのおかげで、藤田博士は、まったく歩行に関しては、苦なく、歩けた。
JP病院を出ると、そこには、円盤らしい物体が、静かにたたずんでいた。
藤田はそのたたずんでいる、物体を目にして、驚き、ただ、じっと見ているしか、なかった。
それもそうだ。100年前の人間が、眠りから醒めて、初めて目にすることだらけで、それも、想像がつかないものばかりに、遭遇する。昔、見た映画の「未知との遭遇」そのものだった。
ゴールドは慣れたもので、当たり前のように、その円盤に近ずき、やはり同じように、腕を掲げた。
すると、円盤は、するすると、入り口が見え、ゴールドやハワイ、ブラック、藤田の4人を迎え入れた。

「ゴールドに促され、藤田は、円盤に乗り込む。ブラックとは、藤田がかってにつけた、目の黒い女性のことだ。皆んな10代の女性に(藤田にはそう見えた)に囲まれ、藤田は、悪い気持ちはしなかった。
典型的な、100年前のスケベオヤジそのものだった。

円盤はそんな藤田の気持ちなど、無視して、スーッと、浮かび、振動らしき揺れもなく、上空10メートル位に上がり、滑り出した。好奇心旺盛な藤田は、ゴールドに聞いた。

「どこに行くの?」
「世界の科学者が、待っています・・・そこに、これから向かいます・・」
「世界の科学者?・・・でも、この円盤らしいものは、何?」
「はははは・・・昔でいうタクシーね・・・でも、運転手は居ないけれど」

確かに、4人以外、運転する者は誰もいない。自動的に、上空10メートル近い空を誰も操縦することなく、
滑るように飛んでいる。・・・「ゴールド、大丈夫??」藤田は、不安そうに、聞いた。
それを聞いた、3人は、「あははは・・・・ハハハハ」と腹を抱えて笑い出した・・・。

「藤田さん、心配しないで!!・・・空中事故は一切、ありません・・・空中規制がされていますから」と、ブラック。「それと、すべて、事故などないように、スーパーセンサーで、管理されていますから」
と、付加えた。・・・どうも、話しを聞く範囲では、円盤(タクシーか?)と、円盤同士の衝突など、ないら
しい。・・・そういわれて、下を見ると、不思議な間隔を置いて、それぞれの円盤は、ぶつかることなく、空中を飛びまわっている。・・これが、スーパーセンサーなのか??

「藤田さん、ここでは、空中で、お互いに、ぶつかることは、一切、ありません・・・だから、安心して下さい・・・」ゴールドだ。そう言う、ゴールドの手元を見ていても、何も、機器らしいものに触っていない。それでも、どこか、決められた目的地に向かって、円盤は、自動飛行していた。

「地球科学者会議に行きます・・・藤田さんのことを皆んなが、心待ち、しています」ゴールド
「それ??・・なんですか??」
「お笑いの世界!!」ゴールドが、冗談に言った、ことで、他の、ブルーやブラックは、腹を抱えて、笑い出した・・・・
藤田は、オチョコられているようで、ムッスとした、表情。

外は、雲が、流れるような勢いで、過ぎ去っていく・・・凄いスピードで飛行しているらしい。

「藤田さん!!・・・もうすぐですょ」ブルー

時間にして、10分位だろうか?・・・藤田は、どうも目的地着いたらしく、ゴールドに促されて、円盤の外に出て、「ヘーェ」という、言葉もない、吐息を吐いた・・・・。


SF小説(9)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-07 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
心なしか、濃度が薄まったような感じがしていた。藤田が居るクリーンな部屋の状態だ。
壁面の丸い突起物から、絶え間なく放出されていた、酸素が、そう藤田に感じさせていた。
そして、今日が待ちに待った、退院の日だった。

「藤田さん・・・お元気ですか?」・・あぁ、ゴールドアイだ・・・。藤田はその声を聞いて、内心クスリと、笑った。「元気ですよ!」と、言いかたったが、笑いをかみ殺して、わざと、「そうでもない」と、返した。その返事で、ゴールドは、心配顔になって、藤田の顔をまじまじ、と、のぞきこんだ・・・

「冗談!!」そう言って、ニコっと笑った・・・・・
「まぁー、藤田さん、ジョークが好きねぇー」
「ゴールドさんに会えるのが楽しみで・・・」
「藤田さん、いい加減に、ゴールドはヤメテ!!」
「じゃーピンクにする??」
「私、ピンク、似合ないんです・・・」チョッと、怒った振りをして、笑いながら言った。
「失礼・・・」
「藤田さん、こちらに来て下さい」そう言って、別室に藤田を案内した。

その部屋には、円形の筒が上下につながり、青色や黄色、赤色の光線が、筒の中に交互に照らし、時々、
パッと、強い光が筒を貫いていた。その筒の前に、ゴールドは、藤田を導き、ゴールドが腕ついている装置をいじると、筒が、音も無く開いた。さぁ、・・と、言って、藤田をその中に入れた。
時間にして、約10分位だろうか、藤田は、筒から解放されて、出てきた。

「ゴールドさん、これは何んですか?」
「これは、藤田さんを認識する処置なんです・・・認識機構から、承認が得られ、初めて、藤田さんの認証が決まりました」
「えっ!!・・認証??」
「そうです・・・この世界の中で、以前、言いましたよね・・・藤田さんだけが、無認証な人間、ということを・・・」
「はっ??」
「遺伝子の情報を認証させて、初めて、存在するのです」
「・・・・・」
「その内に、事情がわかりますから、安心して下さい」
「・・・??????」
「さぁ、退院の前に、『歯』の調整をしましょう・・・それと、カッターが必要ね」
「カッターって??」
「ははははは・・・髪の毛!!」
「あぁ、床屋のこと??」
「そうです・・・これをかぶって」と、言って、丸いヘルメットのような物をかぶせられた。
「2~3分で終わりますから」

ヘルメットをかぶりしばらくすると、中から、猛烈な勢いで、水らしいものが、一斉に、出始めた。
藤田は、あわてて、目をつぶると、頭の中をその液体が自在に動き始め、すぐ、液体がなくなった。
一瞬の出来事のようだった。
ゴールドが笑いながら、ヘルメットをはずし、藤田を見て・・・

「良い男!!」と言った・・・。

どうも、これが自動床屋の装置だったらしい。「カッターか?」本当に、きれいに、髪がカットされていた。カットされた髪はどこへ?

呆然としている藤田のところに、ゴールドが、側に寄り「最終、チェックは全て、終わりました・・・
これで、晴れて、藤田さんは、地球人になれました・・・おめでとうございます」と、言って、微笑ん
だ。・・・・何が、なんだか、わかりーませーん????


SF小説(8)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-07 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
藤田博士は嬉しくてしょうがなかった。ガンが治ったことも嬉しいが、それ以上に、100年後の地球や世界がどのように変わったのか?

それを一日でも早く知りたかった。好奇心に燃えて、子供のように目を輝かせていた。テロや戦争に明け暮れ、民族同士の殺し合い、貧困、飢餓、貧富の格差、地球環境の汚染等々で行き詰まりを見せていた、100年前から、どれだけ、世界が変化したのか?良い方向へ変わったのだろうか?それとも、もっと悪化したのだろうか?人類の英知の進捗状況は?人間の進歩は、どうなったのか?地球環境は?戦争は?・・・・いろいろ見たいし聞きたいことが、山ほどあった。キックを履きながら、狭い空間を歩き回り落ちた腕や身体全体の筋肉を回復させる機器を使いながら、博士は退院出来る日を心待ちしていた。その日は、あと1日。「藤田さん!、お客さんですよ」ブルーハワイだ。

「私に??」知り合いなど1人もいないのに??不思議な面持ちで、円形のイスに座り、来客を待った。
「佐々木純一です」そう言って、手を差し出したのは、10才位の男の子だった。
藤田は、見覚えは勿論、ない。10才位だから、プラス20として、実際は30才なのだろうか?
疑問を察したのか?ハワイは、「藤田さん、この子が、最初に、藤田さんを発見して、ここへ知らせたのです」と、言ったので、初めて、納得がいった。藤田の、命の恩人だ。

「おぉ!!・・君が、私のことを・・・・ありがとう!!・・ありがとう!!」そう言いながら、純一の手を握り締めた。
「いいんです・・・当然のことをしたまでです・・それよりも、お体の方は大丈夫ですか?」
「うむ・・・君のおかげと、ここにいる皆んなの努力で、ピンピンしているよ」
「よかったでね・・・今日は、時間があいたものですから、ちょっと、お邪魔しただけです」
「私は、明日、退院できそうだ・・・君が、よかったら、いろいろ教えて、くれますか?」
「はい、僕で分かることでしたら、どうぞ、遠慮なく言ってください・・お疲れのようですので、これで失礼します・・・」
「あっ、連絡先は?」

「ここの方が知っていますので、のちほど、そちらで、聞いて下さい」

10才にしては、しっかりしている。ハワイに「30才?」と、聞くと「いいえ、11才です」と、返事が返ってきた。ハワイが何故、即座に、年齢の正確な返答があったのも、不思議だった。

「藤田さん、本当に、何も知らないんですね・・・」そう言いながら、首をかしげて、ハワイは、出て行った。いよいよ、明日が、退院。目の前に広がる世界はどんな姿を見せてくれるのだろうか?


SF小説(7)【2120年地球への旅】著者 高 一

2006-10-07 | 投資、スポーツ、未知の世界、就職
どの位時間が経過したのだろうか?
うとうと、していると、聞き覚えのある女性の声で、起こされた。
ゴールドアイの声だ。

「藤田さん、お元気ですか??」どうも、お元気ですか、というのが口癖のようだ。
「ハイ!!・・・生きてます」と、冗談で返事を返した。
「ハハハハ・・・・息をしてますね」と、ゴールドアイも冗談で返した。
「先生、今日は何色??」
「はっ??」・・・下着の色と勘違いしたのかも知れなかった。しばらく間を置いて・・
「目の色ですよ」と、補足すると・・
「そ・・そうですね、色はかわりません」
「もう、ここから出られるのですか??」
「そうです・・・藤田さんのハンサムな顔を見れますね・・・ハハハハ」

楕円形のカプセルは静かに、宙を浮き、そのまま別室へ移動し始めた。カプセルが着いた所は、
10畳ぐらいのスペースのきれいな、所だった。ただ、壁面一杯に、スピーカーのような丸い
突起の装置がいくつも配置されていて、そこから、やはり濃度の濃い酸素が放出されていた。
ゴールドアイ、ハワイ、黒の目、そして、男性医師らしき人間が3人、待ち受けていた。

楕円形のカプセルが、音も無く、開き、彼等が藤田のところに近ずき、藤田に微笑みかけた。

「さぁ・・・カプセルから出られますょ」そう、ゴールドアイが言いながら、銀色のブーツらしきものを藤田の足に装着し始めた。「これが、キックか?」そう思いながら、されるがままになっていた。

「これで、藤田さんは、歩けますよ・・・歩行速度や筋肉回復機能は全て、調整してあります」
「・・・・?????」
「ちょっと、歩いてみたら?」

藤田は、おそるおそる、床に立ち、歩き始めた。100年間、筋肉をほとんど使わなかったのだから、不安
な面持ちで、一歩を踏み出した。ところが、藤田の心配は、すぐ、吹き飛んでしまった。
軽いブーツがロボットの役目を果たし、藤田の全体重を支え、歩行も難なく、出来た。
それを見ていた、全員がパチパチパ、拍手をして、復調を喜んでくれた・・・。

「藤田さん、どうですか?」
「えっ・・・凄い・・です」
「ずいぶん、お若くなりましたね・・・ハンサムですよ!!」ゴールドアイだ。
「この部屋で、しばらく様子を見ます・・・ガンの方は、全然、心配ありませんから、・・」
「・・・ありがとう、ございます」
「細胞の定着には、もう少し時間がかかります・・・それが済みましたら、本当の退院です」
「その後になりますが、今度は、私どもからのお願いがあります」
「なんでしょうか??」
「藤田さんは、現在、世界中でただ1人、登録の認証ができない人なんです・・その辺の理由も、詳しく知りたいものですから・・」
「認証??・・・それは??」
「全世界の一人一人の遺伝子を全部、管理しています・・・その中に含まれていません」

それもそのハズだ。藤田は100年前の人間だから・・・・。

「えぇ・・・私も、皆さんに聞きたいことが、山ほどあります」
「状態が良くなりましたら、世界中の科学者が、お待ちしていますので、宜しく、お願いしますね・・・
ハンサムさん!!」ゴールドアイは、お茶目にニッコリ笑って、みんなと共に、部屋を出て行った。