ゆみちゃん

お昼の仕事の同僚、ゆみちゃん（仮名）
まだ20歳のピチピチガール
ハーフの彼女はエキゾチックな顔立ちの美人さん。
でも何故か自信なさ気にうつむいている。
もったいないなぁっていつも思う。
ホントにきれいな顔をしているんだもん。
そんな彼女と話をする機会があって、
私は彼女に言った。

「ゆみちゃんってホントにきれいな顔してるよね。」

何を言い出すの？このおばさん！って顔で、
大きく目を見開いて絶句した。

「美人だねって言ったの！自覚ない？」

彼女は大きく首を振って言った。

「私なんて、妹はもっときれいで可愛くて、
　私はブスで暗いっていつもママに言われて×××」

そこまで否定しなくてもって勢いだったが、
彼女がうつむいてるには充分な理由だった。

「あのね、ゆみちゃん。私がゆみちゃんくらい美人だったら
　男を手玉に取ってブイブイ、ブヒブヒいっちゃうよ。」

「カトゥさんブヒブヒは豚さんです」

はにかみながら彼女は笑った。
そして2年くらいまで今より20キロ太っていた事、
いじめで高校を辞めてしまった事、
性格が暗いと両親にいつも責められる事、
フリーターになった事で母親との関係がおかしくなった事、
そんな事をポツリポツリと語ってくれた。
そして「いつも明るいカトゥさんがうらやましい」と言った。

なんて事だ！
20歳の子が4×歳の婆を羨むなんて。
この子はいったい20年の人生でどれだけ苦悩しているんだろう。

「ゆみちゃん。（性格が）暗い事の何がいけないの？
　昼と夜があるように相対するものがあって世は成り立つ。
　陽気な人に悩みや影がないわけじゃない。
　一人の人間にも明と暗があるのだから、
　性格がおとなしいと責められ落ち込む事はないんだよ！」

さっきのはにかんだ微笑みが可愛かったので、
「笑った顔がかわいいよ」と言うと、

「いつも笑うのは無理です。表情筋が壊れているので…」
ナイスジョーク笑いのセンスもあるじゃない！

私は自分の高校時代の話を彼女にした。
数学が絶望的に苦手でテストで３点しか取れなかった事、
文化祭の打ち上げで泥酔し二日酔いで授業中リバースした事、
美術室のメディチ象の頭を半分割ってしまった事、
数々の悪行三昧と、自分も親とはうまくやれなかった事を告白した。
ゆみちゃんは控えめに静かに笑いながら聞いていた。

それからゆみちゃんは少しづつだけど笑うようになった。
美人に笑顔が出れば無敵だ。
近い将来、ゆみちゃんも素敵な彼を見つけて輝くだろう。