田所永世のPTAブログ

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PTA紹介シリーズその1~会員数90人の小規模PTA

2015-04-11 17:44:33 | 日記
 雑誌や新聞、テレビなどがPTA問題をとりあげることが多く、PTAに対する関心が高まってきているのを感じます。
 しかし、メディアにとりあげられるときのPTAは、かなり悪者扱いです。たしかにそのようなPTAもあるのかもしれませんが、全国3万のPTAの中には、メディアで見られるPTAとはまったく違うものもあるのではないでしょうか。
 そこで、PTAアンケート調査に答えていただいた方の中から、特徴的であると感じたPTAをいくつか選んで、順番に関係者にインタビューをしてみることにしました。最初は都内の公立小学校でPTA会長3年目のDさんです。


―Dさんが会長をつとめている小学校PTAは、会員数が約90人と非常に小規模のようですが、これは入退会が自由だから会員が少ないのでしょうか?

 いいえ、保護者には全員、会員になっていただいています(笑)。しかし、そもそもの児童数が少ないので、全員入会でもこの人数にしかならないんです。
 といっても、私たちは入学式で新入生保護者にPTAの説明をするときに、「PTAは強制ではなく任意で入会することになっております」と説明はしています。
 けれど、入学式で体育館が寂しく感じられるくらい少人数の学校ですから、たいていの保護者は「こんなに人数が少ないのなら、手伝ってあげないと!」という気持ちになるみたいです。
 私は6年前からPTAの運営にかかわっていますが、知る限りでは「退会したい」と言ってきた人はいません。「全員がやるものだ」というか、「みんなで助け合おう」という雰囲気は、確実にあると感じています。
 一学年一クラスで、なおかつ一クラスの人数が20人以下なので、お互いの距離が近くて、私たち役員がちょこちょこと動いているのを見て、自発的に手伝いに来てくれる保護者の方も多いですね。PTA会長をしていると、だいたい90人中50人くらいは顏がわかるようになります。

―そうはいっても、どの学校にも一人か二人くらいPTA嫌いな方は、いるものではないですか?

 もちろん水面下では、PTA会費を払わなかったり、会議や手伝いに来なかったりする“すっとぼけママ”とかはいます(苦笑)。
 クラスの人数が少ないので、誰がそういうことをしているのかはすぐにバレますが、みな忙しいので、糾弾に時間を使うよりは、いる人だけでさっさとやろうという感覚のほうが強いみたいです。
 さぼる人に不満を持つ人もいるでしょうが、全体としては「ま~そういう人もいるよね」くらいに受け止める人が多いようです。

―なるほど。「そもそもPTAって何をするものなのかわからない」という保護者も多いと思いますが、Dさんの学校では「保護者が集まって子どもたちを助ける」という意味で、みなさんが比較的すんなりとPTA活動に参加していただけているわけですね。

 うちは共働き率がほぼ100%です。ほとんどの保護者が働いており,かつママさんでも企業で働くキャリア系の方が多くいます。そういう意味では、PTAも「仕事」の一環として普通にやるよ、という方が多いのではないでしょうか。
 もちろん、みなさん忙しいのでガッツリとPTAにかかわることはできないのですが、「何かちょっとだけだったらやれるよ」という感覚の保護者が多いです。

―お話しをうかがっていると、かなり特殊というか、一般的ではないPTAに聞こえてきますが、どうなんでしょう?

 東京23区内には、学校選択制のある区が比較的多いのです。で、選択制になると、どうしても人気のある学校とそうでない学校とに分かれてしまいます。そういう意味では、うちは“人気のない学校”なのかもしれません(笑)。けれど、都内では小規模校も共働きも、そんなに珍しくないですよ。
 小規模校には、友だちが少ない、クラス替えができない、先生も少ない、運動会とかが寂しく感じるなどのデメリットがあります。
 逆に言えば、少人数クラスで、できない子をできるまで教えることができる、先生も指導が楽、ケンカやイジメが少ない、などのメリットもあります。
 そういうことにメリットを感じる保護者が集まるので、子育ての意思統一がみな同じ方向を向きがちで、PTAの指揮もやりやすいとは感じています。
 ただし、小規模校は学校予算があまり与えてもらえないです。給食室やエアコンとかの改修もすぐにはやってもらえず、後回しにされます。行政としては、小規模校はコストパフォーマンスが悪いので、本音では近隣の学校と統合してしまいたいのです。それに対して保護者としての意見を主張していくためにも、PTAは重要になります。

―なるほど。少人数だから保護者も顔見知りになりやすいし、小規模校なりの問題もあるから意見を発信していく必要もある。だからPTAが一つにまとまりやすいわけですね。なんとなく、PTAの問題は人数で解決できるような気もしてきました。

 PTAに関心のある保護者って、どの学校でも70人くらいがせいぜいではないか、と思っています。ということは、100人保護者がいる学校では70人がPTAに理解がある。とすると、関心が無い人は30人です。7割が理解あるということは、大勢が手伝って当たりまえとうけとめてくれるので、業務がある程度滞りなくできます。
 逆に400人くらいの大規模校の場合、70人くらいが理解ある保護者だとすると,330人くらいは「PTAやらずに済むならやりたくない」と思うのではないでしょうか。400人くらいの規模だと業務の量も半端ないですよね。そうすると人手がいる。でも、やりたくない人のほうが比率では多い。となると、いきおい抽選とかクジとかで係きめになっちゃって、不満が高まるのではないでしょうか。
 だとすると、70人くらいで回せるボリュームにダウンサイジングするか。 あるいは、そもそものボリュームは減らさずに、ファンドみたいに「この事業をやるには○○円必要です。ご自身がお手伝い出来ない方はお一人○○円をPTAに寄付してください」みたいにやるのか。
 PTA会費という考え方をそもそも辞めてしまい、1プロジェクトごとに協力者を募る、寄付を募る、集まらないプロジェクトは廃止する、とか柔軟な発想をしていかないと、いずれ行き詰まってしまうような気がします。

―学校や人数に関係なく一定数ですか。私はどちらかというと、一定の割合であると考えています。いずれにしろ、人数が多くなると、不満を持つ人の絶対数が多くなるとは言えそうですね。Dさんは、比較的リベラルというか、PTA組織に対して柔軟な考えをお持ちのようですが、伝統を守ることには興味はないのですか?

 PTAがやっていることはたいへん意義のあることだとは思います。会長をやる前と今を比較すると、けっこう意識は変わりました。たとえば,自分のの子以外の子どものことも心配になってくるとか。
 ただし、学校や地域のお手伝いみたいな仕事って、別にPTAという組織でやらなくてもいいのではないかと思うことはあります。保護者の「仕事」の第一は子育てなので、実感としては,PTAはもっと子どもに関わることを中心にやるべきだと思います。
 たとえば,学校の授業でどんなことを教わっているかを調べるとか、先生の授業の質、食べ物の質、子ども同士のつきあいなどを知るとか。
 ですが,一部の学校のPTA幹部には「PTAは子どもの成長を見守る組織ではない」と言っている方もいてびっくりします。PTAは保護者と教師との連携,あるいはPTAとPTA同士の交流の場であって、教育そのものを論じあう場でない、と信じている人が少なからずいるんです。そういう人は、子どもの面倒をみるのをうとましく思っているのかなとちょっと疑念にかられます。
 PTAって年間行事が先に決まっちゃっていて、お祭りとかイベントが多いじゃないですか。それって、やりたい人が自主的にやればいいと思うんです。わざわざPTA本部が仕切る必要はないんじゃないかと。PTA=イベント興業主,みたいな構図に、自分は違和感があります。
 地域のイベントの手伝いもやり始めると面白いのですが、それで疲れてしまって、本来のPTA活動や、自分の子どもの世話がおろそかになるときもあります。なので、地域と合体したPTCとかPTCAに対しては、ちょっと懐疑的です。PTAは地域住民である前に、保護者であると思うので。

―今のお話しにつながるのですが、現在のPTAの問題は、業務負担の問題がほとんどであるととらえられることが多いようです。では、負担を少なくしていった場合に、それでも最後まで残さなければいけないものって何でしょうか?

 PTA問題と言われているものは、一般保護者が負担と思うものを削ってあげればいいだけの議論が多いです。うちはほとんど削って、P連も脱退して、地区の手伝いも校長からの頼みも無理なものは断わっていて、それでうまくいっている面はあります。
 ただし、PTA自体が無くなると、途端に行政側が保護者を舐めてくる可能性があります。PTAが存在することが、保護者を守るための抑止力や武器になることは忘れないでいてほしいです。

―「行政側が保護者を舐めてくる」とは、具体的にどのようなことでしょうか?

 たとえば、うちの小学校の給食で、おかずの中に異物が混入して多くの子どもが誤って食べてしまった事故がありました。
 給食に誤って異物が混入するのは、正直仕方ないと思います。事故がゼロってわけにはいきませんから。
 しかし、学校は事故を教育委員会にはすぐに報告したのに,保護者には詳細な説明をなかなかしてくれませんでした。原因や健康への影響や再発防止策などについては、自分で調べて、ようやくわかったのです。
 学校にとっての上司は教育委員会なので、教師も校長も「上」を見て仕事せざるを得ないのでしょう。彼らが、保護者や児童よりも教育委員会を恐れていることが、よく分かりました。
 この事故のときに、責任の所在をあいまいにする行為が見て取れたので、私たちも理論武装とか、どこにどうやって戦いを挑むべきかとか、いろいろ考えました。
 結果として、一個人として戦っても相手は舐めてかかってくるので、まずはPTAの組織を盤石にしておかねばと感じた次第です。
 それ以外にも、学校の統廃合問題や、地域の再開発問題、教師の質の問題、一人親家庭や外国籍家庭のサポートなど、PTAとしてまとまって向かい合わねばならない問題はいくらでもあります。

―今のPTAの議論で忘れられがちな視点ですね。では、保護者の負担はどの程度なのか、具体的にうかがってもよろしいでしょうか?

 一学年一クラスで、一クラスの人数が20人以下という話をしましたが、基本的には1つの係に、各学年から1名以上出していただくことになっています。共稼ぎが多くて、一人では無理なので、実際は2名以上になることが多いです。そして毎年、何らかの係を全員が少しずつ担当する、というやり方です。
 ですから、結果的には毎年全員にPTA活動に参加していただくことになるので、そこだけを見れば負担が少ないとは言えないかもしれませんが、係によっては1年に1回しか手伝いがないよ、というケースもありますし、一人ひとりの仕事の量は格段に少ないと思います。もしも全員に割り振ることをやめると、その年の係になった人の仕事量が増えてしまって悲鳴があがるでしょう。
 とはいえ、毎年必ずPTA参加というのもきついので、6年間のうち1年は「PTAお休み」という年を設けて、適宜休んでもらっています。休みの割り振り方は、それぞれの学年に任せています。

―もう一つ、現在のPTAの議論では、任意入退会(PTAへの入会、退会を自由にさせてほしい)がよく取り沙汰されていますが、そちらについてはどのようにお考えですか?

 PTAの入会書・退会書フォーマットを作ることは私も考えました。けれど、結局とりやめた理由は、実際に作ってほしいとの要望が出ていなかったのと、「入会書出したんだから、がっつり働いてください!」みたいな強引な組織を生む温床になることを懸念したからです。
 入会届とか退会届っていうのは、ある意味、人々に縛りをかけるようなものです。特に大規模校になりますと、PTAが抱える手伝いや作業量が半端ない量の学校もあります。いきおい、入会届を出した方に大きな作業量の負荷がかかり「やっぱり来年は退会したい!」とか、そういったネガティブな気持ちをうんでしまうかもとの心配があります。
 結局、会長3年目の今年も入会届や退会届は配りませんでした。「配ってくれ」とも頼まれませんでした。200人くらいの規模になったら、あらためて考えなければならないとは思っています。

―なるほど、難しいですね。たしかに、少人数の組織で全員の顏が見えていて「退会します」と自由に言えるような空気があるなら、形式的な入会届・退会届はいらないかもしれません。社会人の登山サークルやスキーサークルに、入会届や退会届はないですからね。「入会届を書いてくれ」と言われたら、逆に身構えてしまうかも(笑)。でも90名規模なら、あってもいいという気はします。
 私見ですが、PTAを「退会したい」と言う方は、比較的、PTA活動に積極的にかかわった結果、「嫌な思い」をして「退会」を口にするようになるのではないかと考えています。結婚がなければ離婚もないようなもので、つかず離れずで適当にPTAとつきあっている方は「任意入退会」には関心がないというか、そこまでPTAそのものに関心がないというか。
 そこで、最後におうかがいしたいのは、PTA内部での軋轢です。たとえばP連を脱退したとおっしゃいましたが、それについても、やっぱり反対する方はいたと思うのです。どのようにして対立を乗り切ったのでしょうか?

 たしかに、うちのPTAは「小P連」を脱退するかどうかで揉めておりました。前会長が「脱退推進派」だったのですが、なかなかまとまりきらなかったのです。前会長と親しくしていた私は、会長交代のときに「脱退推進派」からの会長候補という形で推薦されました。
 本当は、私よりも適任と思われていた方がいたのですが、その方は会長就任を固辞されて、土壇場で私に会長役が回ってきました。当時は仕事が忙しかったのですが、とりあえず私が「はい」と言わないと何も動き出さないと思われたので、観念して引き受けました。
 一方、「P連維持派」は会長候補者を出すことができませんでした。その時点で勝負ありですね。「脱退推進派」が勝利という形となり、私の代で脱退を決定することができました。
 誤解してほしくないのですが、小P連は,各学校の単PTAをとりまとめて連携を図るという意味で、大変有意義な組織だと思います。
 しかし、それぞれの学校はそれぞれ抱える問題が違います。それら各校の固有の問題を、P連に加盟することによって解決できるかと言えば、そうでもありません。多くのP連は,年間行事(研修会,スポーツ大会,一斉パトロール,歓送迎会など)を遂行することがメインの任務になっています。要するに、各校への動員要請をする元締めみたいな存在なのです。
 それが当たり前と思っている幹部もいるようですが,近年は疑問に感じる単P会長もぽつぽつ出てきているようです。そこで、私たちのように脱退をすることで意思表示をする会長もいれば、内部からの改革を目指そうと何人かで集まって改革プロジェクトを起こそうとしている会長などもいます。これは単位PTAを内部から改革しようというのと同じですね。
 私は、PTAは任意入会なのだし、P連も任意入会でよいのではないかと思っています。

―いろいろ、興味深いお話しをありがとうございます。PTA会長といっても、地域が大好きな方もいれば、それほどでもない方もいるのですね。最後に、Dさんの考えるPTAの目的について聞かせてください。

私の個人的な思いで、所属する組織とは無関係ですが(笑)、
一番は、子どもたちの成長を見守ること(たとえば、目立たない子のケアをするとか)
二番は、保護者と先生との交流の円滑(それに地域が加わればもっとよいでしょう)
三番は、世の中の不条理への対抗、ですかね(苦笑)


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3 コメント

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PTAが舐められたのでは? (砂子)
2015-11-24 23:11:45
田所さん、こんばんは。
このインタビュー、タイトルに「会員数90人」とありますが、アンケート調査結果の一覧表には「会員家庭数」となっているので、整合させるほうがいいと思われます。
また、インタビュイーが「PTA自体が無くなると、途端に行政側が保護者を舐めてくる可能性があります」と発言した後の発言は、学校給食に異物が混入した事故を例に出して「PTAがあっても舐められた」という内容となっているように読めます。
実際にPTAが舐められたのではないでしょうか?
 >保護者には詳細な説明をなかなかしてくれませんでした。
 >原因や健康への影響や再発防止策などについては、自分で調べて、ようやくわかったのです。
「自分で調べて」とは、インタビュイーがPTA会長の肩書きを活用して「一人で調べた」ということなのでしょうか?
事故の原因、責任の所在、児童の健康被害の有無、再発防止策等の教訓などは、PTAの名が無くても、保護者または教職員が個人の立場で追及して調べることができます。
なお、行政は一般にシステムとしてPTAを学校経営に巻き込みます。たとえば、PTA会長にはボーナスポストとして学校評議員や学校給食運営協議会委員などがあてがわれます。この事故の場合も、学校給食運営協議会の場で校長や教育委員会の事務担当者から説明、謝罪等があったと推測されます。その内容がPTA会員に報告されなかったのなら、PTA会長がPTA会員を舐めたことになります。
実際はどうだったのか、ご存じの範囲で教えていただければ幸いです。
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Unknown (田所永世)
2015-11-25 04:16:08
いつもコメント、ありがとうございます。
私はそこまでの詳細はわかりませんので、Dさんのコメントをお待ちください。
タイトルについては語呂とキレを優先させて現状のままにしたいと思います。
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語呂・キレと合わせて (砂子)
2015-11-26 18:37:21
田所さん、こんばんは。早々のお返事コメントをありがとうございました。
語呂とキレのほかにコク(真実味や事実性)の大切さを考え合わせますと、「会員数90」(「人」を省く)がベストのように思われます。
しかし、世に「嘘も方便」ということわざがあり、PTAは確かに目的(学校と地域と家庭の融和)のためなら手段(任意性を曖昧にしたり会員の定義を曖昧にするなど)を選ばない点に特色がありますから、タイトルは現状のままでかまわないと思います。
私の先のコメントについては、田所さんの書かれたとおりDさんのコメントをお待ちしたく存じます。お手数の労を多といたします。
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