劇団わらび座の作品は初めて観た。
手塚治虫原作らしいが、読んだことはなく、内容にも興味がなかった。
発端は、いつものごとく今井清隆さんが出演するからだ。
きっと、またブッダのパパ役なんだろうなと思っていた。
すっかりパパ役が板に付いた感のある今井さんである。
場所は大阪のシアターBLAVA!
方向音痴の私でも出口さえ間違えなければ順調にたどりつける、なかなかいい劇場だ。
そんなことで劇場の良し悪しを決める自分が情けないが、方向音痴の本音である。
したがって、東京で好きなのは、銀河劇場とパルコ劇場と帝劇である。博品館もタクシー以外でたどりつけた例が無い。何とかホールとかになるともう最初からタクシー頼みである。)
さて、今回、何が一番驚いたかというと、パンフレットの分厚さである。
雑誌なみなのである。
山積みになっているそれを見て、「手塚治虫の漫画雑誌が売っているんだなあ。熱心なファンが多いんだろう。」
そう思いながら「パンフレットください。」と言ったら何とその雑誌を渡されるではないか!
「え、これがパンフレットなんですか!?」
スタッフさんは、「そうですよ。後ろには漫画が載ってるんです。」とパラパラとめくって見せてくれた。
「はぁ・・・」と絶句した。
だって、A5判厚さ1~1.5㎝もある漫画つきのパンフレットなんて初めて見たんだもの。
表紙は手塚治虫の絵だし。
「最初の方のページにはキャストコメントも載っていますよ。」
はっ、今井さんを忘れるところだった!
今井さんのコメント見たさに、つい「ください。」と言ってしまった。
スタッフさんは「ありがとうございます!ビニール袋にお入れしますね!」と言って、20ℓはゴミが入れられそうなただの、本当に普通のビニール袋に入れてくれた。
これ、入れてもらっても、持ち手も何にもついてないし、丸めてまとめるしかないじゃないか。
ご厚意はありがたかったが、もし大きめの鞄で出かけなかったら、ビニールにくるまれた『わらび座の手塚治虫マガジン』なるパンフレットを手に持って帰って来なければならなかったんだと思うと、その日に限って通勤かばんででかけた自分をほめた。
パンフレットがあまりにも強烈だったので、ストーリーがすっ飛んでしまった。
一応観た日はちゃんと理解して、家に帰ってパンフレットの漫画を読んだら、公演内容の章が全部載っていた。 何と親切なわらび座。
簡単に書くと、物語はブッダの前半生、シャカ族の王子でありながら出家して旅を続け、最後に悟りをひらくところまで。
そこに、オオカミの地をひくタッタ、女盗賊ミゲーラとの出会い、荒行をする僧侶たちとの対立、強大な隣国コーサラ国との争いなどが展開されていく。
ブッダはまだ修行中の身なので、当然迷い、悩み、苦しみ、自分の無力を責める。
そのブッダを敵視するコーサラ国のルリ王子。
ルリ王子も大国の王子である重圧に悩み、迷える人間である。
自分の母が奴隷階級出身と知り、怒り狂って母親を奴隷部屋へ追いやってしまう。
そんな不幸な母をやさしく面倒みるのが、父親の薬によって巨人(というより怪物)になってしまったヤタラ。
主な登場人物はこれくらいであるが、まわりには常に奴隷階級の人々が苦しみもがいている。
面白かったのは、開演5分前になると、鼓のような太鼓を叩く男性(おそらく身分は最下層)と女奴隷たちとが登場して、太鼓の演奏をはじめ、ゆかを這うようにしてふきはじめるのである。
ゆっくりした音楽と、無言でゆっくりと床をふく女性達。
目はどこか遠くを見ており、焦点が定まっていない。
ゆったりとした流れの中で、物語が始まる。
自然にブッダの世界に入って行けるいい演出だと思った。
シャカ国の滅亡、ルリ王子との対立、奴隷階級の人々の苦しみ、それらがすべてブッダに問いかける。
「助けてくれ!」
「この苦しみから救ってくれ!」
「おっかさん死んだ!」
「熱い!助けて!」
ブッダはじっと座し、静かにひたすら考え続ける。
そして悟る―受け入れよう、すべてを―
物語はそこで終わる。
さて、お目当ての今井さんは、第1幕でコーサラ国王として最期に登場する。
威厳たっぷりにあのお腹にひびくバリトンで堂々と悪役を演じていた。
第2幕では、なんとヤタラで登場した。
巨人の役なので着ぐるみを着て、顔も今井さんとはわからないほどのメイクが施されている。
このヤタラの存在が、重々しいテーマの物語でほっとできるいいアクセントになっている。
気は優しくて力持ち、重厚なバリトン、優しさと温かさ。
いかにも今井さんらしい。
最近の今井さんは、語り部的な役やパパ役、悪役が多くなってきたが、私は、こんなヤタラのような今井さんの優しさがあふれる役が好きだ。(もちろん悪役もカッコいいけれど。要するに全部好きということか。)
わらび座のミュージカルの実力は、まあまあかな・・・と思った。
全員同レベルで安心して観ていられる。
主役の戎本みろさんは、外見も演技もブッダそのものという感じだった。
他の配役の人たちも皆上手く、帝劇や四季で時々見かける「何でおたくがここにいるの???」というほど飛びぬけて下手な人はいなかった。
終演後、短いトークショーがあり、戎本さん、遠野あすかさん、今井さん、司会の方(名前失念。長翔さんか岡村さんだったかな。)が出てきた。
ブッダと3人の弟子たちみたいに見えて面白かった。
今井さんはヤタラの扮装のままだったので、椅子に浅くしか腰掛けられず、ペットボトルのふたも開けにくそうで、その姿一つ一つが本当に可愛らしかった。
この公演の後は、7月末の『二都物語』まで今井さんとは会えないのが残念だが、また素晴らしい歌と演技をしてくださることを期待している。
手塚治虫原作らしいが、読んだことはなく、内容にも興味がなかった。
発端は、いつものごとく今井清隆さんが出演するからだ。
きっと、またブッダのパパ役なんだろうなと思っていた。
すっかりパパ役が板に付いた感のある今井さんである。
場所は大阪のシアターBLAVA!
方向音痴の私でも出口さえ間違えなければ順調にたどりつける、なかなかいい劇場だ。
そんなことで劇場の良し悪しを決める自分が情けないが、方向音痴の本音である。
したがって、東京で好きなのは、銀河劇場とパルコ劇場と帝劇である。博品館もタクシー以外でたどりつけた例が無い。何とかホールとかになるともう最初からタクシー頼みである。)
さて、今回、何が一番驚いたかというと、パンフレットの分厚さである。
雑誌なみなのである。
山積みになっているそれを見て、「手塚治虫の漫画雑誌が売っているんだなあ。熱心なファンが多いんだろう。」
そう思いながら「パンフレットください。」と言ったら何とその雑誌を渡されるではないか!
「え、これがパンフレットなんですか!?」
スタッフさんは、「そうですよ。後ろには漫画が載ってるんです。」とパラパラとめくって見せてくれた。
「はぁ・・・」と絶句した。
だって、A5判厚さ1~1.5㎝もある漫画つきのパンフレットなんて初めて見たんだもの。
表紙は手塚治虫の絵だし。
「最初の方のページにはキャストコメントも載っていますよ。」
はっ、今井さんを忘れるところだった!
今井さんのコメント見たさに、つい「ください。」と言ってしまった。
スタッフさんは「ありがとうございます!ビニール袋にお入れしますね!」と言って、20ℓはゴミが入れられそうなただの、本当に普通のビニール袋に入れてくれた。
これ、入れてもらっても、持ち手も何にもついてないし、丸めてまとめるしかないじゃないか。
ご厚意はありがたかったが、もし大きめの鞄で出かけなかったら、ビニールにくるまれた『わらび座の手塚治虫マガジン』なるパンフレットを手に持って帰って来なければならなかったんだと思うと、その日に限って通勤かばんででかけた自分をほめた。
パンフレットがあまりにも強烈だったので、ストーリーがすっ飛んでしまった。
一応観た日はちゃんと理解して、家に帰ってパンフレットの漫画を読んだら、公演内容の章が全部載っていた。 何と親切なわらび座。
簡単に書くと、物語はブッダの前半生、シャカ族の王子でありながら出家して旅を続け、最後に悟りをひらくところまで。
そこに、オオカミの地をひくタッタ、女盗賊ミゲーラとの出会い、荒行をする僧侶たちとの対立、強大な隣国コーサラ国との争いなどが展開されていく。
ブッダはまだ修行中の身なので、当然迷い、悩み、苦しみ、自分の無力を責める。
そのブッダを敵視するコーサラ国のルリ王子。
ルリ王子も大国の王子である重圧に悩み、迷える人間である。
自分の母が奴隷階級出身と知り、怒り狂って母親を奴隷部屋へ追いやってしまう。
そんな不幸な母をやさしく面倒みるのが、父親の薬によって巨人(というより怪物)になってしまったヤタラ。
主な登場人物はこれくらいであるが、まわりには常に奴隷階級の人々が苦しみもがいている。
面白かったのは、開演5分前になると、鼓のような太鼓を叩く男性(おそらく身分は最下層)と女奴隷たちとが登場して、太鼓の演奏をはじめ、ゆかを這うようにしてふきはじめるのである。
ゆっくりした音楽と、無言でゆっくりと床をふく女性達。
目はどこか遠くを見ており、焦点が定まっていない。
ゆったりとした流れの中で、物語が始まる。
自然にブッダの世界に入って行けるいい演出だと思った。
シャカ国の滅亡、ルリ王子との対立、奴隷階級の人々の苦しみ、それらがすべてブッダに問いかける。
「助けてくれ!」
「この苦しみから救ってくれ!」
「おっかさん死んだ!」
「熱い!助けて!」
ブッダはじっと座し、静かにひたすら考え続ける。
そして悟る―受け入れよう、すべてを―
物語はそこで終わる。
さて、お目当ての今井さんは、第1幕でコーサラ国王として最期に登場する。
威厳たっぷりにあのお腹にひびくバリトンで堂々と悪役を演じていた。
第2幕では、なんとヤタラで登場した。
巨人の役なので着ぐるみを着て、顔も今井さんとはわからないほどのメイクが施されている。
このヤタラの存在が、重々しいテーマの物語でほっとできるいいアクセントになっている。
気は優しくて力持ち、重厚なバリトン、優しさと温かさ。
いかにも今井さんらしい。
最近の今井さんは、語り部的な役やパパ役、悪役が多くなってきたが、私は、こんなヤタラのような今井さんの優しさがあふれる役が好きだ。(もちろん悪役もカッコいいけれど。要するに全部好きということか。)
わらび座のミュージカルの実力は、まあまあかな・・・と思った。
全員同レベルで安心して観ていられる。
主役の戎本みろさんは、外見も演技もブッダそのものという感じだった。
他の配役の人たちも皆上手く、帝劇や四季で時々見かける「何でおたくがここにいるの???」というほど飛びぬけて下手な人はいなかった。
終演後、短いトークショーがあり、戎本さん、遠野あすかさん、今井さん、司会の方(名前失念。長翔さんか岡村さんだったかな。)が出てきた。
ブッダと3人の弟子たちみたいに見えて面白かった。
今井さんはヤタラの扮装のままだったので、椅子に浅くしか腰掛けられず、ペットボトルのふたも開けにくそうで、その姿一つ一つが本当に可愛らしかった。
この公演の後は、7月末の『二都物語』まで今井さんとは会えないのが残念だが、また素晴らしい歌と演技をしてくださることを期待している。