「お前さ、人前でそう言うか? 優斗が恥ずかしがってるぞ」
優斗を指しながら、翼乃は海斗に言った。
「関係ないだろ」
「お前、バカだよな」
「なんだと、おいっ!」
「駄目だよー!」
暴れだす海斗を、余が止めている。
それを作った張本人は、敦司の方を向いて指差しながら告げた。
「敦司。クリスを抱えろ。仕事場に戻るぞ」
「了解っス、隊長!」
クリスを抱えると、「じゃな」と言って翼乃と敦司は人ごみの中へと入って行った。
「あ、行っちゃった」
姿が消えると、チッと舌打ちをし海斗は止まったが。
「おい。もう放せ」
だが放れる気配がなく、海斗は拳を高く上げて余の頭にぶつけた。
「放せ」
「あっ。ごめん」
海斗から放れると、余は周りを見渡して首を傾げていた。
「ジュンさんがいないよ?」
「どうせ翼乃の後を追いかけて行ったんだろっ」
壱鬼が僻みっぽく言うと、あっと余が声を上げた。
「アスカ君もいない」
「アスカぁ――っ!!」
叫び声を上げ、壱鬼は人ごみの中を駆け抜けて行った。
「……動物好きってのは、大変なんだな」
「半分は、人間だよ~」
と、肌に生温かい空気が触れるのを感じ取った。
「なっ、何ですか……この嫌な空気は!?」
「彼が出しているんだよ、天風さん」
薫に笑いかけて、沓馬は原因の元を指した。
「…あの人がここにいる……。先輩の所にあの人が………」
「ゆっ優斗くん、どうしたの?」
「気にするな、いつもの事だっ」
黒いオーラを出している優斗を真希は心配したが、佑希に止められてしまう。
「優斗にとって、あいつは天敵だからなぁ」
「てんてき?」
「お前には、一生縁のない言葉だ」
海斗はそう言って、余の頭を撫でた。
「海兄ちゃん…」
「ん、なんだ?」
「先輩の所に行く……」
「ああ、そうか。だったらオレも行くぞ」
「いってらっしゃ~い」
向かう場所が決まった二人に、千一は手を振っていた。
「えっ。二之宮さんは行かないのですか?」
「おれはトラポンと一緒に、トキちゃんと玲花ちゃんのところに行くよ~~」
「オレもか!?」
「姉さんによろしく」
「おい!!」
怒鳴りだす男に、「どうしたものか…」と他のメンバーは考えていた。
佑希と千一と別れた一行は、社(やしろ)より少し離れた階段へと来ていた。
「あ、階段」
「どこに続いているの?」
「神主の家」
なぜか涼しげな顔で告げる海斗に、追求しないでおこうと年長組は思った。
階段の前に行くと、テーブルの後ろに立っているお化けの格好をした少年たちがいた。
「お、海斗にゃ!」
猫耳のカチューシャをつけた少年が、海斗を見て手を振っていた。
「菊丸じゃねえか」
「おおいしー! 海斗たちが来たにゃあ!!」
菊丸という少年が海斗たちを指しながら、隣にいる三つ目小僧の肩を叩いていた。
「うわっ。大石なのか?」
「や、やぁ……」
「あっ、優斗もいるにゃ!」
「こんにちは。菊丸さん、大石さん」
優斗が礼儀よく挨拶をすると、沓馬はじっと二人の格好を観察していた。
「菊丸君、その格好似合ってるね」
「よっちゃんが選んでもらったんだ~」
「大石君は……」
沓馬が大石の方を向くと、クスッと笑いをこぼし口元を手で覆わせていた。
「とても似合ってるよ。とても……プッ」
「笑うなっ」
「お知り合いなのですか、スミレさん」
オドオドとしているスミレに、薫は話しかけた。
「えっ、ええ。翼乃ちゃんのお友達です」
「菊丸英二! 青春学園中等部3年にゃ~」
「大石秀一郎です。同じく3年です」
「青春学園ていりゃ、テニスで有名な所じゃねえか?」
零が言うと、スミレと優斗はコクリと頷いた。
「テニス部のレギュラーですよ、二人は」
「すごーい!」
「おい。ここにあいつが来ただろ?」
「よっちゃんのことにゃ? 来たぞ!」
やっぱりな、と海斗は額に手を当てていた。
「何がだよ」
「あ、言ってなかったけど……。ここ、お化け屋敷だから」
終の問いに、沓馬が笑顔満開で告げた。
「おっ、お化け屋敷!?」
「ここが!!?」
「そうだよ。だってここ、神社だし」
「誰が言い出したんだ。あいつか? それとも……」
「汐子ちゃんだにゃ!」
「あの魔女かっ」
魔女は酷いと思うが、と、始は顔を引き付けていた。
「それで、あいつは」
「よっちゃんが、ココに来たら……」
(回想シーン)
『おい、二人とも。俺の後ろに、壱鬼兄さん達がいるから通してやれよ』
「って」
「さすがは『心読み』を使う者ですね」
「それに」
『あ。もしかするとジュンが一直線に走っていくと思うから、お金置いとくから』
「でよっちゃんが行った後に、ジュンとアスカが走って行ったにゃ」
「その後に、壱鬼さんが来て」
『ほら、オレとアスカの分の金だ!』
(回想終了)
「ちゃんと払って行ったんだ。壱鬼君」
真希は思わず、苦笑いをしてしまった。
「やっぱり、三番目でも格が違うんだね」
「どういう意味だよ?」
「真面目か、真面目じゃないか♪」
終をからかっている沓馬を見て、何かあったのか?と海斗は聞きたくなった。
~ 5へ ~
おまけ(本編に関係あり)
翼乃「よう、精市。なんで景吾が、苦しそうに倒れてるんだ?」←通りすがり
幸村(ゆきむら)「丑の刻まいりだからさ、誰かを呪わなくちゃいけないでしょ?」←わら人形を木に打ち付けている
跡部(あとべ)「なんでオレになるんだ!?」←呪われている
幸村「うざいから」
忍足(おしたり)「犬猿の仲やな~」
翼乃「そだね(その場合、誰がサルになるんだろうか……)」
跡部「くそっ!」←わら人形を持つ
真田(さなだ)「跡部! お前まさか、幸村を!?」
翼乃「やるのかよっ」
跡部「死にやがれ! ――忍足!!」
忍足「え、オレ!!?」
跡部「はあ!」←木に打ち付ける
忍足「ヴっ!」←呪われた
翼乃「侑士。あわれだね(さんざん、やらかしたんだな)」
忍足「こ、こないな事して、意味があるんか……」
翼乃「他の人にも、自分の呪いを味合わせることが出来る」
真田「『呪いうつし』というものか」
翼乃「まぁ、そんなところだな」
忍足「っ……こないな事は、したくないんやが!」←わら人形を持つ
翼乃「侑士も誰かを呪うのか?」
忍足「怨みはないが、許してくれや!」←木に打つ
真田「グッ!」←呪われた
幸村「真田!?」
翼乃「弦一郎を呪うか。後でどうなっても知らないぞ」
忍足「そやかて、これはキツイんやで!」
翼乃「……弦一郎。お前、精市でも呪うか?」
真田「おれは、そんなことはせん! やるとしても、幸村を呪うことはできん!!」
幸村「真田……」
跡部「ケッ。くだらねぇぜ」
翼乃「一応、精市のわら人形を置いておくよ。俺、もう行くから」
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