シドニーの風

シドニー駐在サラリーマンの生活日記です。
心に映るよしなしごとをそこはかとなく書き綴ります…祖国への思いを風に載せて。

顔を消された子供たち

2009-03-23 08:34:09 | あれこれ
 週末に一週間分のニュースを気が向くまま検索していると、時々、珍妙なニュースに出会います。
 スペースシャトル「ディスカバリー」で宇宙に飛び立った若田さんは、その後、ドッキングした国際宇宙ステーションに乗り移り、約3ヶ月半に及ぶ宇宙での長期滞在をスタートさせました。早速、カエルの細胞に対する重力の影響を調べる生命科学実験に取り掛かったり、ロボットアームを操作する作業を開始するなど、順調な立ち上がりは喜ばしい限りです。
 出発前、若田さんから、出身地・さいたま市の記念品を持って行きたいという意向が伝えられ、市青少年宇宙科学館が「夢や希望を与えるため、子供らの写真を」と発案し、市の小・中学校の全159校に学級ごとの写真を撮って貰って1枚のDVDにおさめて手渡されたというので、これもなかなかよい話だと喜んでいたら、実は「万一の流出に備える必要がある」と判断して、職員6人が1ヶ月もかけて、子供の顔が判別できないように画像の解像度を下げる処理をしていたという裏話が毎日新聞で報道されていました。DVDに収められた集合写真は、「ゆめをのせてうちゅうへ」など紙に大きく書かれたメッセージは辛うじて判読できますが、子供たち10万人の顔は拡大しても判別できないほどの、サムネイル並みのサイズだったようです。
 個人情報保護の重要性は分りますが、ここまでいくと過剰反応と言われても仕方ありませんね。写真撮影のとき、宇宙に限りない夢をふくらませ、生き生きとした表情(顔)を見せたであろう掛け替えのない一人ひとりが重要なはずでしたが、まるで伏字のように顔を消されて氏名リストを渡されただけのような味気なさで、折角の粋な計らいがフイになってしまいました。もはやその表情や熱意は若田さんに届きませんし、その目が写真(映像)を通して宇宙を(宇宙から見た地球を)捉えることもありません。こうしたエポックに、若田さんに手渡すDVD一枚を作成するくらい何とかなっただろうと思いますし、貰った若田さんも、さぞ驚いたことでしょう。
 ところが同じ記事に、校内誌にも子供の顔を載せたくない親がいるご時世で、今回も適切な判断だったのではという、ある母親の声が載せられていて、更に驚かされました。勿論、程度によるでしょう、個別に判断すべき局面もあるとは思いますが、行き過ぎた管理社会の息苦しさを覚えずにはいられませんでした。情報社会の進展が、またそれを推し進める大人が、子供たちの夢を奪ってはならないと思います。


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