天野アキが、僕に残してくれたもの（第1回）

　僕は今まで、朝やお昼にテレビでやっている連続ドラマを観たことがない。どうせ複雑な人間模様や愛憎ばかり描いているのだろう、という（間違った）先入観もあった。だいいちその時間は仕事中なので、リアルタイムでは観られない。録画してまで観ようとは考えたこともない。
　昨年、巷では、ＮＨＫのあまちゃんがどうのこうのって、なんか騒がしかったみたいだけど、僕は別に気にも留めなかった。

　僕の務めている病院には、患者さんの待合室に大きなテレビが置いてある。（僕はお医者さんではありません。）朝、僕が仕事の準備をしていると、待合室からあまちゃんのテーマがよく聞こえてきたが、何の興味も湧かなかった。たまにテレビの前を通ると、若い女の子がぴょん、と跳び上がっているのが見えたこともあったが、立ち止まって見入ることなど、ただの一度もなかった。

　気づいたら放送は終わっていて、その時間帯には、別の番組が流れるようになっていた。

　そのまま僕の生活は、この番組とは一生何の接点もないまま過ぎていくはずだった。昨年12月30日の新聞で、あまちゃんの総集編が放送されることを知るまでは。