日曜日に日帰りで名古屋へと行ってまいりました
西へ行く新幹線に乗るのは久しぶり。
2010年1月に姫路へ行って以来だから、2年ぶりだね
オット殿は2002年10月に鈴鹿へ行って以来だから10年ぶりだね。
お義母さんも10年ぶりくらいかな。
もともと認知症を患っている叔父さんが肺炎を起こし入院したとの連絡がありお見舞いへ。
お嫁さんが車で送迎してくれて助かった
連絡を貰った頃は熱発が治まらずって話だったんだけど、行った時には熱は下がり意識もはっきりしてた。
認知症の人の大半は自分からの出力が困難になるので、コミュニケーションがうまくとれない。
でも、にこにこと笑顔で力強く握り返す手からは「久しぶりだね。よく来たね」って気持ちが伝わってくる。
思ったよか元気そうでホッと一安心
嚥下がうまくできないので胃瘻をと病院からは勧められているらしい。
胃瘻とは主に経口摂取困難な患者に対し、人為的に皮膚と胃に瘻孔を作成、チューブ留置し、水分栄養を流入させるための処置。
なかなか入らない点滴、うまく入ってもすぐに漏れてしまったりするようで、きっと血管が弱っているんだろうね。
本人も点滴の時は痛がるらしいので、家族としては看ていて辛い。
本人の負担が少ない方法を選びたいけど、どうしたら良いか迷うと話してた。
胃瘻をしても調子の良い時は胃瘻の穴に蓋をして、口からの摂食も可能だそうだ。
昔私が病院で働いていた時より医学は進歩しているのね。
ただ、在宅介護が厳しくなるのと今まで通っていたデイサービスは胃瘻の人の受け入れが無い。
メリット、デメリットを考え決めていくしかないんだよね。
私は胃瘻と聞いて真っ先に思い出す人がいる。
それは病院で働き始めた時に初めて何人か受け持った中のHさん。
重度の認知症でコミュニケーションは不可。
でもよく笑顔を見せてくれた。
にっと笑う顔には歯が2本しかなく、とても愛くるしい笑顔でついついこちらも笑顔になるそんな素敵な
人だった。
身体的にはつかまり立ちがかろうじて出来るくらいで、全般的に介護が必要な状態。
でも、リクレーションでやった風船バレーでは誰にも負けない勢いで風船に手を伸ばし、車いすから転げ
落ちるのではないかとヒヤヒヤするほどの元気さを見せる一面もあり、コミュニケーションは取れないながらも
リハ室では人気者だった。
Hさんは食事がうまくできず、在宅に戻るには食事が課題だった。
身体的な機能低下による嚥下障害なのか、認知症から嚥下が困難になっているのかの判別がとても
難しかった。
点滴は細くなった手足には痛々しく、点滴をしようとすると本人も激しく嫌がったので、胃瘻の造設が行われた。
退院に向け自宅訪問を行い、在宅療養に向け自宅の環境を整えたり、ご家族への退院時指導が行われ
順調にスケジュールは進んだ。
私は初めて受け持った患者さんが退院することが嬉しい反面、もうあの愛くるしい笑顔が見られないのかと
思うと少し寂しくもあった。
そしてそろそろ退院の日取りを決めようかと話し合いが行われてる頃に、衝撃的な現場に出くわした。
いつものよにリハビリだよ~と病室にHさんを迎えに行った私の目に飛び込んで来たのはまさに衝撃映像。
ギャッチアップされ上半身を起こしたHさんがブラブラした何かを両手に挟み、その両手を前後にうごかし
ブツブツと何かを拝んでる姿だった。
声を掛けると相変わらずの天使の笑顔でこちらを見てにっと笑ったその手に挟まれたものは・・・
本来腹部の上にある筈の胃瘻のチューブだった。
チューブを誤抜去してしまうと瘻孔は自然に閉じてしまうので慌ててナースコールを押し応援を要請した。
胃瘻の造設は手術の一種になるので、慌ててご家族が呼ばれ処置が行われた。
誤抜去からあまり時間が経過してなかったとみえ、あまり大ごとにならずに済んだけど、ご家族が楽しみに
していた退院が一週間延期になってしまった。
私達がアタフタとする中でもHさんはいっぱい人がいるのが楽しいらしく終始笑顔だった。
一通りの処置を終え、病室に残ったのはニコニコのHさんとベッドサイドで退院の延期に大きなため息をつく
ご家族、がっかりな家族になんと声を掛けようかと思案顔のスタッフ。
するとHさんは今までに聞いたことのない明瞭な声で
「いっぱいの人が来て、今日はなんの宴会かのぉ~」
と呑気に言い放ったのだ。
病室は大爆笑包まれ、ご家族は涙を流すほど笑ってた。
私が家族だったらダメでしょう~と怒ってしまったかもしれない。
本人には全く悪気はないのに・・・。
でもHさんのご家族は本人には全く怒らず、痒かったのかなとか、痛かったのかなとか自分の意思を出力
できないHさんの気持ちを色々と考えてあげてた。
コミュニケーションが取れないことや、住宅改修が想像以上に大変で初めてのケースにはとてもハードな
患者さんだったけど、Hさんもご家族の暖かくて担当させてもらえて良かったと思った。
その後スタッフはHさんの誤抜去を防ぐ為に違和感が少ないように工夫したり、巡回を増やしたりして
無事に退院の日を迎えた。
そんなこんなで胃瘻って言葉を聞くたびにHさんの愛くるしくも素っ頓狂な笑顔の衝撃映像が思い出されるの。
どれが欠けても
人は生きていけないけど
技術ではなく
やっぱり人が 気持ちが 解決できるのだよね…と思えるステキなお話だ☆
叔父さまのより良い生活がありますように
周りの人の暖かい気持ちが無ければ
きっとあの笑顔は出ないよな~と思う
叔父さんもいつまでも笑顔でいて欲しい